[PF045] 中学生の社会的行動についての研究(102)
子どもの普段の行動に対する親の認知とその変化
Keywords:中学生, 親, 問題行動
【目 的】
中学生のストレスと問題行動に関する3年間の変化について,身近で重要な存在である親はどのようにとらえているのだろうか。
これまで親との関係を子ども自身がどのように認知しているかレジリエンスとの関連を検討した(五十嵐ら,2012)。また,中学3年時の問題行動には,2年時と3年時のストレスが相反する関連を示した(同2014)。中学生のストレスを軸に規則違反など問題行動やその予兆などについて親の認知はどのようになっているのか縦断データから変化の特徴をみることにした。
【方 法】
①協力者;愛知県と福島県の中学1年生を3年生になるまで7回の調査を実施し,2287人が最終調査協力者となった。そのうち継続して回答が得られ,第1・4・7回目の関連データがそろった519人(男225人,女294人)を分析対象とした。また,子どもの普段の行動について回答のあった父親226人,母親336を対象とした。なお回答状況から要因によって人数に違いがある。
②分析内容;生徒の〈ストレス〉:学校や家でどのくらい嫌なことがあったか6項目4件法。普段の行動から,先に因子分析によって確認されている〈問題行動の予兆〉は「学校に禁じられているもの(携帯電話,マンガなど)を持っていく」など7項目,4件法。これについて〈親の予兆への気づき〉普段の子どもの行動についての親の認知について,6件法で尋ねた。そのほか生徒の〈レジリエンス〉や〈生活リズム〉などについて取り上げ,親による認知の変化との関連性について探索的な分析を行った。
【結 果】
まず,親による子どもの変化を認知している程度の変化を見た。分散分析(反復測定)によって子どもの普段の行動の各側面について分析した結果,学年進行とともに有意な増加を示したのは母親による子どもの「問題行動の予兆」の認知であった(F=14.998,p<.001)。他は学年とともに得点が低下していることが確認された。
ストレスは,学年進行に従って増加していた。分散分析の結果では1年時より2・3年時が,男子より女子が有意に高い値であった。クラスタ分析を行い3クラスタ;C1は3年間を通じて他より低く安定していた303人,C2が中程度で推移した197人,C3が高いまま推移した19人を得た。このクラスタと性別による分散分析を行った結果,生活リズムや問題行動の予兆,実際の規則違反などにクラスタの有意な主効果が確認され,いずれもストレスの高い群の問題が示唆された。次に,親による子どもの行動認知の変化について分散分析を行った。その結果,1年時の子どものイライラについての母親の認知で有意な交互作用が確認された(F=4.529,p<.05)。女児については男児の場合より有意に高い親の認知度であった。またクラスタの有意な主効果が,2年時の「父親;子どもの問題行動の予兆」認知で確認された(F=4.407,p<05)。親が子どもの普段の行動について認知する程度には,限られた側面と時期の問題,父母間での違いがあり,学年進行に伴ってその認知の困難さが増していることが示唆された。
科研費・基盤研究(B)(1)14310055(代表 氏家達夫)の補助をうけた
中学生のストレスと問題行動に関する3年間の変化について,身近で重要な存在である親はどのようにとらえているのだろうか。
これまで親との関係を子ども自身がどのように認知しているかレジリエンスとの関連を検討した(五十嵐ら,2012)。また,中学3年時の問題行動には,2年時と3年時のストレスが相反する関連を示した(同2014)。中学生のストレスを軸に規則違反など問題行動やその予兆などについて親の認知はどのようになっているのか縦断データから変化の特徴をみることにした。
【方 法】
①協力者;愛知県と福島県の中学1年生を3年生になるまで7回の調査を実施し,2287人が最終調査協力者となった。そのうち継続して回答が得られ,第1・4・7回目の関連データがそろった519人(男225人,女294人)を分析対象とした。また,子どもの普段の行動について回答のあった父親226人,母親336を対象とした。なお回答状況から要因によって人数に違いがある。
②分析内容;生徒の〈ストレス〉:学校や家でどのくらい嫌なことがあったか6項目4件法。普段の行動から,先に因子分析によって確認されている〈問題行動の予兆〉は「学校に禁じられているもの(携帯電話,マンガなど)を持っていく」など7項目,4件法。これについて〈親の予兆への気づき〉普段の子どもの行動についての親の認知について,6件法で尋ねた。そのほか生徒の〈レジリエンス〉や〈生活リズム〉などについて取り上げ,親による認知の変化との関連性について探索的な分析を行った。
【結 果】
まず,親による子どもの変化を認知している程度の変化を見た。分散分析(反復測定)によって子どもの普段の行動の各側面について分析した結果,学年進行とともに有意な増加を示したのは母親による子どもの「問題行動の予兆」の認知であった(F=14.998,p<.001)。他は学年とともに得点が低下していることが確認された。
ストレスは,学年進行に従って増加していた。分散分析の結果では1年時より2・3年時が,男子より女子が有意に高い値であった。クラスタ分析を行い3クラスタ;C1は3年間を通じて他より低く安定していた303人,C2が中程度で推移した197人,C3が高いまま推移した19人を得た。このクラスタと性別による分散分析を行った結果,生活リズムや問題行動の予兆,実際の規則違反などにクラスタの有意な主効果が確認され,いずれもストレスの高い群の問題が示唆された。次に,親による子どもの行動認知の変化について分散分析を行った。その結果,1年時の子どものイライラについての母親の認知で有意な交互作用が確認された(F=4.529,p<.05)。女児については男児の場合より有意に高い親の認知度であった。またクラスタの有意な主効果が,2年時の「父親;子どもの問題行動の予兆」認知で確認された(F=4.407,p<05)。親が子どもの普段の行動について認知する程度には,限られた側面と時期の問題,父母間での違いがあり,学年進行に伴ってその認知の困難さが増していることが示唆された。
科研費・基盤研究(B)(1)14310055(代表 氏家達夫)の補助をうけた