[PF050] きょうだい関係が「きょうだいとしての役割」の認知に与える影響
Keywords:きょうだい, 家族
問題と目的
子どもはきょうだいとの関係から他者とのやり取り,社会的ふるまい,感情表出などを学び,心理社会的に発達していくと指摘されている(西村,2004)。
障害者のきょうだいを対象にした研究では,「きょうだいとしての役割」を認知することは,きょうだいにとって否定的な感情と肯定的な感情の両方を喚起することが提唱されてきた(McHale& Gamble,1989)。本研究は,健常者を対象として,児童期の「きょうだい関係」と青年期の「きょうだい関係」の構造の差を検討し,それぞれが「『きょうだいとしての役割』の認知」と「きょうだい関係の捉え方」にどのように関連するかについて検討することを目的とする。
方法
調査対象者 愛知県内の2大学の学生327名を対象に調査を行った。
手続き 大学の心理学系の講義科目の授業終了時に口頭にて質問紙調査の協力を依頼し,任意で回収を行った。質問紙の構成は以下の通りである。
児童期および青年期の「きょうだい関係」について 飯野(1994)の「きょうだい関係スケール」20項目を使用した。児童期及び青年期について4件法で回答を求めた。
「『きょうだいとしての役割』の認知」について 田倉(2006),橘・島田(1998),浮須・熊沢(1981)を参考に項目を作成した。計20項目について4件法で回答を求めた。
「きょうだい関係の捉え方」について 「きょうだいとの関係は今の状態が適切だと思う」,「きょうだいとの関係に満足している」の計2項目について4件法で回答を求めた。
結果
分析対象者 275名(うち男性119名,女性147名,性別未回答9名)から回答を得られた。平均年齢は19.25歳であり(SD=1.48歳),有効回答数は259名であった。
因子分析結果 「児童期のきょうだい関係」,「青年期のきょうだい関係」についてそれぞれ探索的因子分析(重み付き最小二乗法・プロマックス回転)を行ったところ,「児童期のきょうだい関係」では「保護・依存関係」因子(8項目,α= .82),「対立関係」因子(7項目,α= .79),「共存関係」因子(5項目,α= .77)が,「青年期のきょうだい関係」では「調和関係」因子(8項目,α= .84),「対立関係」因子(5項目,α= .84),分離関係」因子(4項目,α= .84)が抽出された。
「『きょうだいとしての役割』の認知」項目について1因子構造を採択して探索的因子分析(重み付き最小二乗法,プロマックス回転)を行い,因子負荷量が.40以上を示した項目群を「『きょうだいとしての役割』の認知」因子とした(α= .93)。
きょうだい関係の捉え方に関する項目の得点の平均値を「きょうだい関係の捉え方」得点(α= .86)とした。
各因子間の相関の検討 Pearsonの積率相関係数を算出し,各因子間の関連を検討した(Table 1)。
分散分析結果 児童期および青年期の「きょうだい関係」の各因子得点を従属変数,「『きょうだいとしての役割』の認知」と「きょうだい関係の捉え方」を要因とした,2要因4水準参加者間計画の分散分析を行った(Table 2)。
考察
探索的因子分析の結果より,児童期と青年期ではきょうだい関係の構造に差があり,きょうだい関係は発達段階に伴い役割や質を変化させる(斉藤,1999)ことを裏付ける結果となった。また,分散分析の結果より,きょうだい関係が児童期から青年期にかけて調和的であることが,「きょうだいとしての役割」を認知し,かつきょうだい関係を肯定的に捉えることを可能にする条件として挙げられることが示唆された。
子どもはきょうだいとの関係から他者とのやり取り,社会的ふるまい,感情表出などを学び,心理社会的に発達していくと指摘されている(西村,2004)。
障害者のきょうだいを対象にした研究では,「きょうだいとしての役割」を認知することは,きょうだいにとって否定的な感情と肯定的な感情の両方を喚起することが提唱されてきた(McHale& Gamble,1989)。本研究は,健常者を対象として,児童期の「きょうだい関係」と青年期の「きょうだい関係」の構造の差を検討し,それぞれが「『きょうだいとしての役割』の認知」と「きょうだい関係の捉え方」にどのように関連するかについて検討することを目的とする。
方法
調査対象者 愛知県内の2大学の学生327名を対象に調査を行った。
手続き 大学の心理学系の講義科目の授業終了時に口頭にて質問紙調査の協力を依頼し,任意で回収を行った。質問紙の構成は以下の通りである。
児童期および青年期の「きょうだい関係」について 飯野(1994)の「きょうだい関係スケール」20項目を使用した。児童期及び青年期について4件法で回答を求めた。
「『きょうだいとしての役割』の認知」について 田倉(2006),橘・島田(1998),浮須・熊沢(1981)を参考に項目を作成した。計20項目について4件法で回答を求めた。
「きょうだい関係の捉え方」について 「きょうだいとの関係は今の状態が適切だと思う」,「きょうだいとの関係に満足している」の計2項目について4件法で回答を求めた。
結果
分析対象者 275名(うち男性119名,女性147名,性別未回答9名)から回答を得られた。平均年齢は19.25歳であり(SD=1.48歳),有効回答数は259名であった。
因子分析結果 「児童期のきょうだい関係」,「青年期のきょうだい関係」についてそれぞれ探索的因子分析(重み付き最小二乗法・プロマックス回転)を行ったところ,「児童期のきょうだい関係」では「保護・依存関係」因子(8項目,α= .82),「対立関係」因子(7項目,α= .79),「共存関係」因子(5項目,α= .77)が,「青年期のきょうだい関係」では「調和関係」因子(8項目,α= .84),「対立関係」因子(5項目,α= .84),分離関係」因子(4項目,α= .84)が抽出された。
「『きょうだいとしての役割』の認知」項目について1因子構造を採択して探索的因子分析(重み付き最小二乗法,プロマックス回転)を行い,因子負荷量が.40以上を示した項目群を「『きょうだいとしての役割』の認知」因子とした(α= .93)。
きょうだい関係の捉え方に関する項目の得点の平均値を「きょうだい関係の捉え方」得点(α= .86)とした。
各因子間の相関の検討 Pearsonの積率相関係数を算出し,各因子間の関連を検討した(Table 1)。
分散分析結果 児童期および青年期の「きょうだい関係」の各因子得点を従属変数,「『きょうだいとしての役割』の認知」と「きょうだい関係の捉え方」を要因とした,2要因4水準参加者間計画の分散分析を行った(Table 2)。
考察
探索的因子分析の結果より,児童期と青年期ではきょうだい関係の構造に差があり,きょうだい関係は発達段階に伴い役割や質を変化させる(斉藤,1999)ことを裏付ける結果となった。また,分散分析の結果より,きょうだい関係が児童期から青年期にかけて調和的であることが,「きょうだいとしての役割」を認知し,かつきょうだい関係を肯定的に捉えることを可能にする条件として挙げられることが示唆された。