The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF066] 18歳人口減少期のセンター試験の出願行動の背景

マイクロ・ベビー・ブームから探る中核受験者層の仮想的供給源

内田照久1, 橋本貴充2 (1.大学入試センター, 2.大学入試センター)

Keywords:大学入試センター試験, 18歳人口, 進学意思決定

問題と目的
高校生の大学進学に関わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。大学入試が選抜的意味を持つ状況では,志願者数と入学定員の間で合否ラインが定まる。現在,少子化で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外の人口動態によっても,出願動向が左右されることになる。
またセンター試験では,私大の参加が増加している。一回の受験で多数の大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。
このような社会状況・入試制度の変化は,高校生の進路選択にどんな影響を与えているだろうか。
内田・橋本・鈴木(2014)は,高校新卒でセ試を利用する国公立大学への出願者が四半世紀余の間,20万人水準で安定していることを見出した。この受験者層は,人口の収縮に際しても減ることなく,私大参入に伴うセ試志願者の増加とも一線を画す,特異的に安定した中核者層である。
一方,私大参加に伴って,新参入層と呼ばれる志願者が増えてきた。それは,私大専願者(短大含)と,セ試成績では大学に出願しない成績未利用者に大別される。
Fig.1 に出願類型を示す。右が国公立大学に出願した中核層,左が新参入層である。これをさらにセ試での私大出願の有無で分割する。上側が私大出願をしなかった者,下側が出願した者である。この4層は,近年は10万人前後で推移してきた。
ここで18歳人口の推移と予測をFig.2 に示す。平成25年度に一時的な人口増が見られる。これは,平成5年の皇太子の結婚の儀の,翌年に生まれたコーホートである。このマイクロ・ベビー・ブームが,セ試の出願動向に与えた影響を検討する。
方 法
内田・橋本・鈴木(2014)は,18歳人口減少時にも仮想的な定員を確保できる全国高校の進学校・進学クラスの総体が,中核層の供給源だとする作業仮説を提案した。H25年のマイクロ・ベビー・ブームの際にも,その仮説が成立するか検証する。
結果と考察
セ試の出願類型別の推移を示す(Fig. 3)。H25のマイクロ・ベビー・ブームに際して,新参入層でのみ志願者数の増加が見られ,中核層はほとんど変化が見られなかった。これは,仮想的な定員を仮定する中核層の供給源の仮説を支持する結果であった。進学意思決定に関わるキャリア研究では,教育制度としての定員の影響といった,社会的な制約も十分に考慮に入れて検討する必要がある。
引用文献
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫(2014).18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), 47-68.