日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF077] 中学生版社会性と情動(SEL)尺度Ⅱの開発

妥当性と信頼性の検討

米山祥平1, 小泉令三2 (1.福岡教育大学, 2.福岡教育大学)

キーワード:社会性と情動の学習, 尺度作成, 中学校教育

児童生徒の問題行動に対する取組のひとつにSEL-8Sがある(小泉,2011)。このプログラムは8つの社会的能力(自己への気づき,他者への気づき,自己コントロール,対人関係,責任ある意思決定,生活上の問題防止スキル,人生の重要事態に対処する能力,積極的・貢献的な奉仕活動)の育成を目標としている。プログラムの実践においては,効果の確認のために,社会的能力を測定する尺度が必要となる。山田・小泉(2013)は社会的能力測定のための尺度として,中学生版社会性と情動(SEL)尺度を開発した。しかし,その尺度の下位尺度の信頼性は十分とは考えられず(α=.44―.71),また,尺度全体の確認的因子分析の結果も示されていない。そこで,本研究では中学生版社会性と情動の尺度を再構成し,その妥当性と信頼性を検討した。
方法
調査対象者 F県内の公立中学校1校に在籍する1―3年生の生徒651名を調査対象者とした。また,その内の114名(1―3年生)を対象に,併存的妥当性の検討を目的とした調査を行った。
調査内容および調査時期 ⑴小泉(2011)が示した8つの社会的能力の各概念を的確に測定するために先の中学生版社会性と情動(SEL)尺度(山田・小泉,2013)を元に40項目を作成した。作成した質問紙を用いてアンケート調査を実施し,各項目に対し4件法で回答を求めた。⑵併存的妥当性の検討のために,中学生用コミュニケーション基礎スキル尺度(東海林・安達・高橋・三船,2012)を用いてアンケート調査を実施した。この尺度は全29項目から構成され,3件法で回答を求めた。
2014年6月に調査⑴および⑵を実施した。
結果と考察
調査⑴により得られたデータから欠損値のあるものを取り除いた608名分のデータを用いて,探索的因子分析を試みた。小泉(2011)に従って因子構造を想定し,因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った結果,想定通りの8因子の因子構造(3項目ずつ)を得ることができた(Table)。さらに,探索的因子分析によって得られた因子構造に従って確認的因子分析を行った結果,モデルの適合性が示された(χ2=629.61,df=224,GFI=.92,AGFI=.89,RMSEA=.06)。
各因子の内的整合性を検討したところ,α=.67―.84の範囲で内的整合性が確認された。
最後に併存的妥当性の検討のために,調査⑴と⑵の下位尺度間の相関を検討したところ,事前の予測とある程度一致する結果が示された。
以上の結果から,本尺度の妥当性と信頼性が確認された。
主要引用文献
小泉令三(2011).子どもの人間関係能力を育てるSEL-8S①社会性と情動の学習(SEL-8S)の導入と実践 ミネルヴァ書房
東海林渉・安達知郎・高橋恵子・三船奈緒子(2012).中学生用コミュニケーション基礎スキル尺度の作成 教育心理学研究,60,137-152.
山田洋平・小泉令三(2013).中学生版「社会性と情動(SEL)」尺度の開発――信頼性と妥当性の検討―― 日本学校心理学会第15回大会発表抄録集,69.