The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG001] 中学校・高校の部活動経験が大学生の社会人基礎力に与える影響

稲田達也1, 鈴木由美2 (1.京都大学医学部附属病院, 2.聖徳大学)

Keywords:部活動, 社会人基礎力, 大学生

問題と目的
社会人基礎力は,「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年から提唱しており,「前に踏み出す力」,「考え抜く力」,「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。青少年を取り巻く今日の社会環境の変化によって,社会に出る前に社会人基礎力を身につける機会が減少しているといわれている(株式会社進研アド,2007年)。そのような状況の中で,全国の大学等を中心に社会人基礎力を向上させる取り組みも数多くなされている。また,大学においてはゼミやクラブ活動,アルバイト等の学外活動等が社会人基礎力の向上に寄与していることも明らかになっている(清水・三保,2013)。一方,意識的にトレーニングを行わなくても,周囲と調和を図りながら目覚ましい活躍をする者もおり,そのような力は大学だけではなく,もっと早い時期からの様々な経験を通して身につくものであると考えられる。
中学校・高校における課外活動の中で大きな割合を占めるのが部活動である。中学校では92.1%,高等学校では78.9%の生徒が部活動に所属している(ベネッセ教育研究センター,2006)。Shaw et al.(1995)は,運動系の活動は,身体的・精神的な挑戦をもたらすだけでなく,コンピテンスの向上やその集団への同一視によりアイデンティティ形成が促進されることから,発達によい影響があるとした。また,音楽や趣味活動などの非運動系の活動であっても,それが挑戦をもたらし,努力が必要な活動であれば,ポジティブな影響を与えうることを指摘している。岡田(2009)は,部活動のネガティブな影響に言及しながらも,部活動に積極的な生徒は学校生活の様々な領域で良好な状態にあるだけでなく,心理的適応も高いとした。
上記のように,中学校・高校における部活動と生徒の心理的発達の関連に焦点を当てた論文は数多く見られ,部活動が中高生の心理的発達や学校適応に寄与すると言ってよいと考えられる。
そのことより,中学校・高校の部活動を通して,生徒は社会人基礎力を身につけることができると考えられる。しかし,一口に部活動といってもさまざまな活動内容があり,それにより身につく能力が異なることが予想される。部活動で社会人基礎力の向上に必要なすべての経験を積むことは難しいと考えられ,部活動の中で十分身につかなかった力は他の活動により身につけることが望ましい。しかし中学校・高校の部活動経験ではどのような力が身につき,どのような力が身につきにくいかということに関する知見は未だ得られていない。そこで本研究では,中学校・高校の部活動経験と大学生の社会人基礎力との関連を明らかにすることを目的とする。
方法
A大学1回生67名に対し自由記述の質問紙調査を実施し,中学校・高校で所属していた部活動とその活動の中で身についた力を調査した。
結果と考察
質問紙調査の結果をKJ法により分類したところ,身についた力は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」「忍耐力」の4つに分類された。部活動を活動内容により分類すると,個人活動と団体活動,運動部と文化部という2種類の軸から見ることができる。例として卓球部は個人・運動,吹奏楽部は団体・文化に分類される。部活動の分類ごとに,それぞれの力が身についたと答えた人数を計測し,その特徴を捉えるためにカイ二乗検定を行ったところ,「前に踏み出す力」「考え抜く力」では各分類間に有意な差が見られなかった。「チームで働く力」は個人活動よりも団体活動で身についていた傾向が見られ(Table1),文化部よりも運動部で有意に身についていた(Table2,x2=16.19,p<0.01)。「忍耐力」は個人活動よりも団体活動で,文化部よりも運動部で有意に身についていたことが明らかになった(個人・団体:Table3,x2=6.40,p<.05,運動・文化:Table4,x2=6.43,p<.05)。