日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PG

2015年8月28日(金) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PG028] 割合に関する問題解決の困難さ

数直線の把握の観点から

進藤聡彦1, 守屋誠司#2 (1.山梨大学, 2.玉川大学)

キーワード:算数, 数直線, 大学生

問題と目的
小学校5年生の学習内容である割合は,児童にとって難しいことがしばしば指摘される。しかし,予備的調査では大学生にとってもその理解が不十分であることを示す結果が得られた。本研究では,大学生の割合の問題解決の実態を明らかにするとともに,小学校で割合の指導する際に用いられる数直線が割合の問題解決に有効に機能するか否かを明らかにすることを目的とする。
調査Ⅰ
方法 入試に際して数学を課していない私立文系の大学生69名に2種の異なる問題用紙をランダムに配布し,2群(有群38名・無群31名)を構成した。問題は2群に共通の以下の3問であった。解答に際しては,式と答を記すように教示した。なお,問題1~問題3はそれぞれ第一用法~第三用法の問題である。
1.30cmの竹がある。そのうちの18cm切り取った。切り取った長さは最初の竹の長さの何倍か。
2.あるクラス全体の人数は40人で,男子は全体の0.6倍だ。男子は何人か。
3.友人にキャンディを15個あげた。あげたキャンディの数ははじめに持っていたキャンディの0.6倍だ。はじめに持っていた数はいくつか。
両群の違いは有群では問題に当該の問題事態を表す数直線が記載されていたが,無群では問題文のみが記載されていた。
結果と考察 解答の正誤の判断は,本研究の趣旨に照らして式の正誤とした。両群の正答率をTable1に示す。
いずれの問題においても有群と無群の間の正答率に大きな差はなかった。また,第二用法の問題が最も正答率が高く,第三用法の問題が最も低いという従来報告されている小学生の結果が大学生においても該当することが確認されるとともに,問題3(第三用法)においては,適切な立式ができた者が半数に留まったことは小学校の学習内容であることを考慮すると注目に値する。
数直線は実際の量と割合の関係を視覚的に明示できることが理解を促進すると考えられているため,小学校で多用されていると思われるが,少なくとも調査の結果は,それを裏づけるものとはならなかった。調査Ⅰの結果からは,数直線自体を理解していない可能性も考えられる。
調査Ⅱ
目的 調査Ⅱでは数直線自体の理解を調べること,また数直線の理解と割合の問題解決の関係を明らかにすることを目的とする。
方法 調査Ⅰと重複しない同一大学・学部の学生35名に先の3問を課した。その際,まずFigure1に示すような数直線の括弧内に適切な数値を記入した後,式と答を記すよう指示した。
結果と考察 数直線の成否と立式の正誤(3つの括弧内に正しい数値を記入できたか否か)の関係をTable2に示す。
いずれの問題でも数直線上に適切な数値を記入できた者は,6割程度に留まった。また,問題1と問題2では数直線上に適切な数値を記入できた者の方が,正しく立式できる割合は高かったが,数直線上に正しい数値を入れることができなかった者でも正しく立式できている者が少なくなく,問題事態を数直線のような形で把握できることが,正しく立式できることの必要条件ではないことが分かる。
先に述べたように一般的に小学校では数直線を用いての割合の指導が行われているが,本結果は児童の中には数直線自体の理解が不十分な者も少なくないことを示唆する。また,正しい立式を行うことができるにも拘わらず,問題事態を数直線に表せないような者の問題解決に至るまでの認知過程を明らかにすることが今後の課題となる。