[PG037] 割合の文章題解決を促進する図的表現に関する研究
Keywords:割合, 文章題, 図的表現
問題と目的
割合は算数の単元の中では理解が困難であることが数多く指摘されている。その一因として吉田・河野(1999)は,児童にとって算数の授業で導入される「比べる量」,「もとにする量」,「割合」の概念を文章題から正しく同定することが難しいことを示しており,学校教育における指導改善の必要性について述べている。そこで,本研究では「比べる量」,「もとにする量」,「割合」の数量関係を捉えやすくする方略として,図的表現の利用に着目した。
図的表現の利用が,文章題解決を促進することはこれまでにも数多く指摘されてきた。しかし,図的表現と言ってもその種類は様々であり,これまで,どのような図的表現が,より割合の文章題解決に効果的なのかを比較検討した研究は見当たらない。そこで本研究ではFigure 1に示した3種類の図的表現を取り上げ検討した。
例)ジュースが300mLあります。このうち,果汁は60%です。ジュースに入っている果汁は何mLでしょう。
方 法
実験計画 2(文章題解決能力)×3(図的表現の種類)×3(用法)×2(テストの時期)の実験計画を用いた。
実験参加者と手続き 実験参加者は公立小学校の6年生251名であった。実験は事前テスト,介入授業,直後テスト,遅延テストから構成した。
事前テスト(30分) 割合の第1用法,第2用法,第3用法の文章題を各2問ずつ,計6問出題した。式と答えに1点ずつ与え,12点満点とした。(M=6.64,SD=3.86,得点率=55%)。この結果から,7~12点の児童を学力上位群(n=134),0~6点の児童を下位群(n=117)とした。
介入授業(45分授業×2) 介入授業では,児童に数直線図,4マス表,関係図の描き方を指導した。まず1時間目に3種類の図的表現ぞれぞれの描き方を示したワークシートを配布し,描き方を習得させた。2時間目には,割合の文章題が提示された練習プリントを配布した。それぞれの文章題を3種類の図的表現で描かせ,授業者と実験協力者を含めた5名で個別に評価を行った。
直後テスト・遅延テスト(30分) 2回目の介入授業の1日後に直後テスト,2週間後に遅延テストを実施した。それぞれのテストにおいて(1)選択作図課題と(2)指定作図課題を行った。
(1) 選択作図課題(10分) 割合の第1用法から第3用法の3問の文章題を用意し,それぞれの児童にはその中から1問をランダムに配布した。まず,数直線図,4マス表,関係図の中から1つを選んで描かせ,その図的表現をもとに式と答えを考えるよう教示した。さらにその図的表現を選択した理由も記述させた。
(2) 指定作図課題(20分) 割合の第1用法から第3用法の文章題各1問ずつ計3問であった。そして1つの文章題について数直線図を描かせる問題,4マス表を描かせる問題,関係図を描かせる問題の3タイプを用意し,児童にランダムに配布した。児童に指定された図的表現を描かせ,その図的表現をもとに式と答えを考えるよう教示した。
結果と考察
3種類の図的表現の適切性を比較するために,評価基準レベルを設定し,得点率を算出した。ここでは,直後テストの結果について報告する。文章題解決能力ごとの直後テストにおける図的表現の得点率をFigure 2に示した。2(文章題解決能力)×3(図的表現)×3(用法)の分散分析を行った結果,図的表現の主効果が有意であった(F(2,490)=9.49,p<.001)。5%有意水準で多重比較を行った結果,4マス表と関係図,数直線図と関係図の群間に有意差が見られた。(それぞれt(245)=3.80; t(245)=3.83)。この結果から,関係図は数直線図や4マス表に比べて描くことが難しいことが示唆された。
割合は算数の単元の中では理解が困難であることが数多く指摘されている。その一因として吉田・河野(1999)は,児童にとって算数の授業で導入される「比べる量」,「もとにする量」,「割合」の概念を文章題から正しく同定することが難しいことを示しており,学校教育における指導改善の必要性について述べている。そこで,本研究では「比べる量」,「もとにする量」,「割合」の数量関係を捉えやすくする方略として,図的表現の利用に着目した。
図的表現の利用が,文章題解決を促進することはこれまでにも数多く指摘されてきた。しかし,図的表現と言ってもその種類は様々であり,これまで,どのような図的表現が,より割合の文章題解決に効果的なのかを比較検討した研究は見当たらない。そこで本研究ではFigure 1に示した3種類の図的表現を取り上げ検討した。
例)ジュースが300mLあります。このうち,果汁は60%です。ジュースに入っている果汁は何mLでしょう。
方 法
実験計画 2(文章題解決能力)×3(図的表現の種類)×3(用法)×2(テストの時期)の実験計画を用いた。
実験参加者と手続き 実験参加者は公立小学校の6年生251名であった。実験は事前テスト,介入授業,直後テスト,遅延テストから構成した。
事前テスト(30分) 割合の第1用法,第2用法,第3用法の文章題を各2問ずつ,計6問出題した。式と答えに1点ずつ与え,12点満点とした。(M=6.64,SD=3.86,得点率=55%)。この結果から,7~12点の児童を学力上位群(n=134),0~6点の児童を下位群(n=117)とした。
介入授業(45分授業×2) 介入授業では,児童に数直線図,4マス表,関係図の描き方を指導した。まず1時間目に3種類の図的表現ぞれぞれの描き方を示したワークシートを配布し,描き方を習得させた。2時間目には,割合の文章題が提示された練習プリントを配布した。それぞれの文章題を3種類の図的表現で描かせ,授業者と実験協力者を含めた5名で個別に評価を行った。
直後テスト・遅延テスト(30分) 2回目の介入授業の1日後に直後テスト,2週間後に遅延テストを実施した。それぞれのテストにおいて(1)選択作図課題と(2)指定作図課題を行った。
(1) 選択作図課題(10分) 割合の第1用法から第3用法の3問の文章題を用意し,それぞれの児童にはその中から1問をランダムに配布した。まず,数直線図,4マス表,関係図の中から1つを選んで描かせ,その図的表現をもとに式と答えを考えるよう教示した。さらにその図的表現を選択した理由も記述させた。
(2) 指定作図課題(20分) 割合の第1用法から第3用法の文章題各1問ずつ計3問であった。そして1つの文章題について数直線図を描かせる問題,4マス表を描かせる問題,関係図を描かせる問題の3タイプを用意し,児童にランダムに配布した。児童に指定された図的表現を描かせ,その図的表現をもとに式と答えを考えるよう教示した。
結果と考察
3種類の図的表現の適切性を比較するために,評価基準レベルを設定し,得点率を算出した。ここでは,直後テストの結果について報告する。文章題解決能力ごとの直後テストにおける図的表現の得点率をFigure 2に示した。2(文章題解決能力)×3(図的表現)×3(用法)の分散分析を行った結果,図的表現の主効果が有意であった(F(2,490)=9.49,p<.001)。5%有意水準で多重比較を行った結果,4マス表と関係図,数直線図と関係図の群間に有意差が見られた。(それぞれt(245)=3.80; t(245)=3.83)。この結果から,関係図は数直線図や4マス表に比べて描くことが難しいことが示唆された。