[PG051] 大学生の就職活動維持過程の進行に要する条件の検討(1)
他者要因に着目して
キーワード:大学生の就職活動, レジリエンス, 他者
【研究の目的】
近年の大学生の就職活動において,その過程での企業からの不採用経験は不可避である。不採用経験によって個人は,ストレス,挫折感,不安,抑うつ,「本気で死にたいと考える」など様々な影響を受けることが報告されている(北見・茂木・森,2009;嶋,2000;船津,2004;NPO法人自殺対策支援センターライフリンク,2013など)が,日本の大学生の就職活動は概ね新卒者一括採用のスケジュールに基づいて行われるため,就職達成を果たすためには活動を一斉に開始し限られた期間内で内定を獲得する必要がある。したがって,たとえその過程で企業からの不採用を度々経験し上記のような不適応的影響を受けようとも,就職活動を継続しなければならないという側面がある。輕部・佐藤・杉江は一連の研究(2013, 2014a, 2014b)で,企業からの内定を獲得し就職達成を果たした大学生を対象として「就職活動者が企業からの不採用を経験しながらもいかにして活動を維持していくのか」という就職活動維持過程を検討・尺度化している。その結果,①活動当初より経験され個々の不採用経験を受けての具体的な対処行動が行われる現在志向的な「一次的過程」,一定の活動後に追加的に経験され今後の社会人生活など現実的将来を見据えた思考的作業が行われる未来志向的な「二次的過程」によって活動が維持されていくこと,②「二次的過程」を経ることで,活動者が,就職活動に対する主体性や自信,就職観の発見や目標の明確化,精神的健康の維持や肯定的見通しを獲得しながら以降心理的に安定した状態で活動に従事しうること,③「一次的過程」によってまずは活動を一定段階維持し個人が様々な体験の機会を通じて視点を豊かにしていくことが,以降追加的に出現する「二次的過程」での自己洞察の素地となる可能性があることを示唆した。しかし,いかなる要因によって当該過程が進行するのかについては未検討である。本研究では,就職活動維持過程に影響を与える他者との関わり方に関する要因について検討することを目的とする。
【方 法】
対象:2014年新卒採用スケジュールの就職活動を経験した大学4年生・大学院生206名。時期:2013年11月。内容:1.就職活動維持過程尺度:輕部ら(2013)。6因子32項目(①模索的行動,②不採用経験の振り返り,③認知的切り替え,④他者への自己開示:以上一次的過程,⑤自分らしい就職活動態度の確立,⑥目標の明確化:以上二次的過程)から構成。就職活動の初期(エントリーシート提出開始後1~2ヵ月間)と終期(活動終了直前1~2ヵ月間)の2時点からの回顧を求めた。2.就職活動中のサポート資源活用尺度:水野・佐藤(2014)。3.援助要請スタイル尺度:永井(2013)。4.友人関係測定尺度:吉岡(2001)。5.小集団閉鎖性尺度:吉村(2004)。手続き:無記名の個別記入形式によるweb質問調査。
【結 果】
各下位尺度得点について,繰り返しによる重回帰分析を行った(Figure1)。
【考 察】
終期の「目標の明確化」には,初期の「不採用経験の振り返り」(以下,振り返り)と深い関与・関心をもった友人関係(以下,関与)が,終期の「自分らしい就職活動態度の確立」には初期の「振り返り」と「認知的切り替え」(以下,切り替え)が直接の正の影響を与えていた。父親からのサポートは初期の「振り返り」を促進するのに対し,母親からの道具的サポートは初期の「切り替え」を抑制していた。また「関与」は「振り返り」と「切り替え」を,自立的援助要請スタイルは「切り替え」を促進していた。以上により,父親が職業人モデルとしての機能を果たしうることが示唆され,また友人関係での良好な相互作用を経験したり適度な援助要請を行ったりしていくことが,初期の「振り返り」や「切り替え」ひいては終期の「二次的過程」を促進し,就職活動者の就職活動維持過程の進行を促すと考えられる。
近年の大学生の就職活動において,その過程での企業からの不採用経験は不可避である。不採用経験によって個人は,ストレス,挫折感,不安,抑うつ,「本気で死にたいと考える」など様々な影響を受けることが報告されている(北見・茂木・森,2009;嶋,2000;船津,2004;NPO法人自殺対策支援センターライフリンク,2013など)が,日本の大学生の就職活動は概ね新卒者一括採用のスケジュールに基づいて行われるため,就職達成を果たすためには活動を一斉に開始し限られた期間内で内定を獲得する必要がある。したがって,たとえその過程で企業からの不採用を度々経験し上記のような不適応的影響を受けようとも,就職活動を継続しなければならないという側面がある。輕部・佐藤・杉江は一連の研究(2013, 2014a, 2014b)で,企業からの内定を獲得し就職達成を果たした大学生を対象として「就職活動者が企業からの不採用を経験しながらもいかにして活動を維持していくのか」という就職活動維持過程を検討・尺度化している。その結果,①活動当初より経験され個々の不採用経験を受けての具体的な対処行動が行われる現在志向的な「一次的過程」,一定の活動後に追加的に経験され今後の社会人生活など現実的将来を見据えた思考的作業が行われる未来志向的な「二次的過程」によって活動が維持されていくこと,②「二次的過程」を経ることで,活動者が,就職活動に対する主体性や自信,就職観の発見や目標の明確化,精神的健康の維持や肯定的見通しを獲得しながら以降心理的に安定した状態で活動に従事しうること,③「一次的過程」によってまずは活動を一定段階維持し個人が様々な体験の機会を通じて視点を豊かにしていくことが,以降追加的に出現する「二次的過程」での自己洞察の素地となる可能性があることを示唆した。しかし,いかなる要因によって当該過程が進行するのかについては未検討である。本研究では,就職活動維持過程に影響を与える他者との関わり方に関する要因について検討することを目的とする。
【方 法】
対象:2014年新卒採用スケジュールの就職活動を経験した大学4年生・大学院生206名。時期:2013年11月。内容:1.就職活動維持過程尺度:輕部ら(2013)。6因子32項目(①模索的行動,②不採用経験の振り返り,③認知的切り替え,④他者への自己開示:以上一次的過程,⑤自分らしい就職活動態度の確立,⑥目標の明確化:以上二次的過程)から構成。就職活動の初期(エントリーシート提出開始後1~2ヵ月間)と終期(活動終了直前1~2ヵ月間)の2時点からの回顧を求めた。2.就職活動中のサポート資源活用尺度:水野・佐藤(2014)。3.援助要請スタイル尺度:永井(2013)。4.友人関係測定尺度:吉岡(2001)。5.小集団閉鎖性尺度:吉村(2004)。手続き:無記名の個別記入形式によるweb質問調査。
【結 果】
各下位尺度得点について,繰り返しによる重回帰分析を行った(Figure1)。
【考 察】
終期の「目標の明確化」には,初期の「不採用経験の振り返り」(以下,振り返り)と深い関与・関心をもった友人関係(以下,関与)が,終期の「自分らしい就職活動態度の確立」には初期の「振り返り」と「認知的切り替え」(以下,切り替え)が直接の正の影響を与えていた。父親からのサポートは初期の「振り返り」を促進するのに対し,母親からの道具的サポートは初期の「切り替え」を抑制していた。また「関与」は「振り返り」と「切り替え」を,自立的援助要請スタイルは「切り替え」を促進していた。以上により,父親が職業人モデルとしての機能を果たしうることが示唆され,また友人関係での良好な相互作用を経験したり適度な援助要請を行ったりしていくことが,初期の「振り返り」や「切り替え」ひいては終期の「二次的過程」を促進し,就職活動者の就職活動維持過程の進行を促すと考えられる。