The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG057] 幼児の協同意思決定場面における意思の変容と交渉過程に関する研究

報酬分配課題を用いて

鈴木智子 (仁愛大学)

Keywords:幼児, 協同意思決定場面, 交渉過程

問題と目的
本研究では,幼児の二者間における協同意思決定場面を経ることによる意思の変化を分析することを目的としている。意見を主張する根拠が明確であると考えられる報酬分配課題を用いて,交渉過程を検討する。
方 法
対象児 年長児42名(男児22名, 女児20名)
手続き 対象児は担任保育者により同性のペアに分けられ,報酬分配課題に参加した。越中ら(2005)を参考に以下の内容を紙芝居形式で提示した。「二人の幼児が保育者から折り紙で花の製作を頼まれ,それぞれ8個と2個作成した。保育者がお礼としてお菓子を10個くれたが,このお菓子をどのように分けたらよいか。」登場する幼児の能力と努力を3つの条件に分けた。8個の花を製作した幼児(高貢献者)は常に年長児と設定し,2個の花を作成した幼児(低貢献者)は年長児(高年齢)と年中児(低年齢)の条件に分けた。また年長児の場合は遊んでいた場合のみ(低努力),年中児の場合は努力した場合(高努力)と遊んでいた場合(低努力)の2パターンを設けた。21組の対象児を7組ずつ「高年齢・低努力」「低年齢・高努力」「低年齢・低努力」の3条件に振り分けた。 紙芝居による説明後,個人で分配を行い,その後二人で相談して再度分配するよう促した。
結果と考察
分配パターンを平等分配(5:5),公平・準公平分配(6:4,7:3,8:2),過剰公平(9:1,10:0)の3つに分類した。
まず個人の分配パターンをTable1に示す。「高年齢・低努力」条件においてのみ公平・準公平分配が多く見られ,年長児が年齢に着目して分配の判断を行っていることがわかる。
次に協同意思決定による分配パターンについて,「高年齢・低努力」では,平等5組,公平・準公平2組,「低年齢・高努力」「低年齢・高努力」では各々7組全てが平等分配という結論を出した。このうち,個人の判断が異なっていたペアは「高年齢・低努力」条件で4組,「低年齢・高努力」条件で1組おり,「高年齢・低努力」の1組を除いて4組が平等分配という結論を出した。
交渉過程をFigure1に示す。協同で結論を出す場面だったが,21組中12組が相手の意志を確認することなく分配を始め,そのうちの8組で片方の幼児が相手の様子を見ながら合わせて分配していた。このことから,今回の課題内容の影響もあるが,場面を設定しても必ずしも言葉による話し合いが行われるとは限らず,様子を見ながら相手に合わせて一つの結論が出される場合も多いことがわかる。また,異議による話し合い5組のうち個人での分類パターンが二人の間で異なっていたのは1組のみで,4組は個人の判断が平等と同じであったにもかかわらず一方が異議を唱え,1組が準公平,3組は元の平等という結論を出した。話し合いの過程では,製作した花の数の違い,低貢献者の年齢の低さへの配慮などが主張の根拠として示されていた。このことから,最初の個人の意志が互いに同じであっても,協同意思決定場面を体験することで,場面の状況へと視野が広がり,意思が変化し,異なる意見の主張という相互交渉の機会が生じることを示している。