[PG058] 幼児の積み木を用いた構成遊びに見られる空間的手がかりへの依拠
積み木作品の配置方向からの検討
Keywords:観察, 構成遊び, 空間認知
目 的
こどもは,周囲の物理的環境を構成している様々な対象物と関わりながら育つ。このような対象物との関わりからは,こどもが何を手がかりに物を位置づけているのかを推察することができる。
Presson& Somerville (1985)やNewcombe (1997)などからは,実験場面において,幼児が特定の対象物を,自分や対象物を含む比較的大きな空間に関連付けて位置づける傾向が示されている。このような幼児の姿は,日常場面においてはどのように現れてくるのだろうか。
そこで,本研究では観察を通して,幼児が,自分や物を内包する空間が備えた手がかりにどのように依拠しうるかを検討することとした。観察に当たり,こどもが対象物に関わる場面として,構成遊び用のコーナーでの自由遊び場面に注目した。
方 法
参加者:幼稚園の年中児(男17名,女19名,平均月齢64ヶ月),年長児(男20名,女21名,平均月齢75ヶ月)。期間と頻度:平成24年11月から平成25年1月。毎週1回の頻度で火曜日の7:30-10:30に行った。場所:構成遊びのための場所として,各保育室に設置された「つみきコーナー」。ジョイント式のプレイマットが正方形に敷かれ,側の棚には構成遊びのための素材・玩具が備えてあった。記録:研究協力園に目的・内容を説明し許可を得た上で,筆記記録とカメラ,ビデオカメラでの写真による記録を行った。
結果と考察
観察された事例の数と作品の数について つみきコーナーで観察された活動の中で,構成遊びは,年中で8事例,年長で15事例が認められ,これらの事例の全てにおいて積み木が用いられていた。製作された積み木による作品数を見てみたところ,年中では19作品,年長では28作品であり,全体としては47作品が製作されていた。
積み木作品の配置について こどもが各作品の配置を,自分や作品を内包する空間とどのように関連付けているのか分析するにあたって,つみきコーナーの床に敷かれたプレイマットの形状に対する依拠の程度に注目した。年中と年長をまとめた47作品に関して,正方形のマットが示す方向に沿うように置かれているかという視点と,マット内に収まっているかという視点から,47作品を分類したところTable 1のようにまとめられた。
次に,Table 1より,作品の配置が,マットの形状が示す方向に沿っているかどうかという視点のみでまとめ直したところ,形状の示す方向に沿っているものは47作品中27作品(57%),沿わないものは20作品(43%)であった。直接確率計算によれば作品数の差は有意ではなかった(p=.38,両側検定)。続いて,作品がマット内に収まっているかどうかという視点のみでまとめ直したところ,マット内に置かれている作品は47作品中で42作品(89%),逸脱が見られる作品は5作品(11%)であった。直接確率計算による検定の結果,作品数の差は有意であった(p=.00,両側検定)。
積み木作品の例はFigure 1に示した通りである。
以上のように積み木作品の配置状況から,幼児は必ずしもマットの形状が示す方向をふまえて作品を作っているわけではなかった。しかし,彼らの作品は,多くの場合で,マット内に収まるように製作される傾向があり,このことから,幼児が対象物を,自分やその物を含む空間に関連付けて位置づける際には,空間が有する幾何学的特徴の理解に応じた段階があることが推察された。
※本研究は平成24-25年度科学研究費助成(若手研究(B),課題番号24700794)を受けた。
こどもは,周囲の物理的環境を構成している様々な対象物と関わりながら育つ。このような対象物との関わりからは,こどもが何を手がかりに物を位置づけているのかを推察することができる。
Presson& Somerville (1985)やNewcombe (1997)などからは,実験場面において,幼児が特定の対象物を,自分や対象物を含む比較的大きな空間に関連付けて位置づける傾向が示されている。このような幼児の姿は,日常場面においてはどのように現れてくるのだろうか。
そこで,本研究では観察を通して,幼児が,自分や物を内包する空間が備えた手がかりにどのように依拠しうるかを検討することとした。観察に当たり,こどもが対象物に関わる場面として,構成遊び用のコーナーでの自由遊び場面に注目した。
方 法
参加者:幼稚園の年中児(男17名,女19名,平均月齢64ヶ月),年長児(男20名,女21名,平均月齢75ヶ月)。期間と頻度:平成24年11月から平成25年1月。毎週1回の頻度で火曜日の7:30-10:30に行った。場所:構成遊びのための場所として,各保育室に設置された「つみきコーナー」。ジョイント式のプレイマットが正方形に敷かれ,側の棚には構成遊びのための素材・玩具が備えてあった。記録:研究協力園に目的・内容を説明し許可を得た上で,筆記記録とカメラ,ビデオカメラでの写真による記録を行った。
結果と考察
観察された事例の数と作品の数について つみきコーナーで観察された活動の中で,構成遊びは,年中で8事例,年長で15事例が認められ,これらの事例の全てにおいて積み木が用いられていた。製作された積み木による作品数を見てみたところ,年中では19作品,年長では28作品であり,全体としては47作品が製作されていた。
積み木作品の配置について こどもが各作品の配置を,自分や作品を内包する空間とどのように関連付けているのか分析するにあたって,つみきコーナーの床に敷かれたプレイマットの形状に対する依拠の程度に注目した。年中と年長をまとめた47作品に関して,正方形のマットが示す方向に沿うように置かれているかという視点と,マット内に収まっているかという視点から,47作品を分類したところTable 1のようにまとめられた。
次に,Table 1より,作品の配置が,マットの形状が示す方向に沿っているかどうかという視点のみでまとめ直したところ,形状の示す方向に沿っているものは47作品中27作品(57%),沿わないものは20作品(43%)であった。直接確率計算によれば作品数の差は有意ではなかった(p=.38,両側検定)。続いて,作品がマット内に収まっているかどうかという視点のみでまとめ直したところ,マット内に置かれている作品は47作品中で42作品(89%),逸脱が見られる作品は5作品(11%)であった。直接確率計算による検定の結果,作品数の差は有意であった(p=.00,両側検定)。
積み木作品の例はFigure 1に示した通りである。
以上のように積み木作品の配置状況から,幼児は必ずしもマットの形状が示す方向をふまえて作品を作っているわけではなかった。しかし,彼らの作品は,多くの場合で,マット内に収まるように製作される傾向があり,このことから,幼児が対象物を,自分やその物を含む空間に関連付けて位置づける際には,空間が有する幾何学的特徴の理解に応じた段階があることが推察された。
※本研究は平成24-25年度科学研究費助成(若手研究(B),課題番号24700794)を受けた。