The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PG066] 親子相互作用場面が親の視線および解釈バイアスに及ぼす影響の予備的検討

宇田川詩帆1, 蓑崎浩史2, 嶋田洋徳3 (1.早稲田大学大学院, 2.駿河台大学, 3.早稲田大学)

Keywords:親子相互作用, 視線, 解釈バイアス

【問題と目的】
親子関係のあり方に関する研究においては,親と子のどちらか一方だけを対象として検討するのではなく,親子の相互作用の中で生じる要因を検討することが重要であることが示唆されている(たとえば,齋藤・内田,2013)。そして,親子双方の行動が生起する際の前提として,たとえば子どもの変化に気づきやすい親とそうでない親では刺激の入力段階に差異があることが示されている(菊野,2010)ことから,そもそも刺激が入力されているかどうかの段階がまずもって重要であることが考えられる。さらに,刺激の入力段階のみに限らず,刺激の入力がなされても「解釈段階」において特異的な傾向を示す親が存在することが示されている(Butterfield,1993)ことから,刺激をどのように「解釈するか」も合わせて検討することが重要であると考えられる。
そこで本研究では,実際の親子相互作用場面において,親が子どもに働きかける場面の種類と親が子どもに関わっている際の視線の割合,および子どもの表情に対する認知的処理(解釈)の関連について予備的に検討することを目的とする。
【方 法】
実験参加者:関東圏の私立幼稚園に在籍する幼児5名(平均年齢5.00±0.63歳)と,その母親5名(平均年齢34.40±2.24歳)を対象とした。
測度:(a)子どもに対する親の視線の割合:視線追跡装置を用いて測定した。(b)解釈バイアス:本研究にて尺度を作成。
手続き:子どもとの相互作用が生起しやすいと考えられる「賞賛場面」および「指示場面」を設定した。「賞賛場面」では,子どもに簡単な課題を行ってもらい,課題が達成されたところで,実験者が親に対して,子どもを極力ほめるよう教示を行った。課題が達成された時点から子どもに対する親の働きかけが終了した時点までを,視線の計測時間とした。「指示場面」では,親子に10分間おもちゃで自由に遊んでもらい,ベルが鳴ったら親が子どもに片づけをさせるように教示を行った。親が子どもに片付けるよう働きかけた時点から片付けが終了した時点までを視線の計測時間とした。各場面終了後の子どもの表情に対する解釈を求め,他者評定のよる解釈との差異を得点化算出し解釈の偏り得点とした。なお,本研究は,早稲田大学「人と対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て行われた。また本研究は,日本認知・行動療法学会第40回大会において発表した同一データセットの一部を解釈バイアスの観点から再分析した報告である。
【結果と考察】
子どもに対する視線の割合と,解釈バイアス得点との相関係数を予備的に算出した。その結果,サンプル数は非常に少ないものの,賞賛場面において中程度の負の相関が見られた(r=-.58)ことから,親が子どもをほめる場面においては,子どもに視線が向いている割合が低いほど,子どもの表情の解釈が歪んでいる傾向があることが示された。一方で,指示場面においては相関係数が小さく,(r=.07)子どもに対する視線の割合と解釈バイアス得点の関連性はみられなかった。
本研究の結果から,親が子どもをほめる賞賛場面においては,子どもの視線の割合と解釈バイアスに中程度の関連性がみられた。賞賛場面において,親が子どもに視線を向けている割合が高いほど,子どもの表情の解釈バイアスは少ないことから,「ほめる」などのポジティブな関わりをする際には親自身に余裕があるため,子どもに視線を向けていれば子どもがどのような反応を示しているかをある程度客観的にモニタリングできることが示唆された。一方で,視線を向けていない親は子どもの表情の解釈に対して,現実の随伴性ではなく具体的にこれまでの経験に従った「思い込み」の解釈をしていることが示唆された。したがって,親子の相互作用は時間経過と共に変化していることが想定されるため,子どもの当該場面におけるその時点の現在の表情を確認した上で,親自身の働きかけが機能しているかのモニタリングを行わせることが必要であると考えられる。