日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH017] 対人魅力と性格の類似性との関係の性別によるちがいについて

梶原直樹1, 梶原和子#2 (1.日本女子大学, 2.下野市立祇園小学校)

キーワード:対人魅力, 性格, 類似性

目 的
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,友人と自分自身の性格が似ているといえるかどうかについて,自分自身と,自分が好きな人,嫌いな人との性格を比較し,相対的には,自分の性格は,好きな人に近いということを示した。本研究では,その傾向が,性別によって異なるのかどうか,異なるのならどのように異なるのか,を調べた。
方 法
調査対象者 女性154名と男性87名の241名の通信制大学生を対象とした。平均年齢は,女性が46.7歳(SD=9.4歳),男性が46.9歳(SD=10.7歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による主要5因子性格検査における,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切り,評価スコアを,左から右へ1点から5点とした。
手続き はじめに主要5因子の説明をしたあと,その5項目について,対象者に,同性で好きな人と嫌いな人,そして自分自身の性格を5段階で評価させた。回答順序は,好き,嫌い,自分による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
評価対象ごとに,5項目の5段階評価についてのスコアの合計点を求めた。Table 1は,その平均値を性別ごとに示したものである。この値について,2(性別)×3(評価対象)の2要因混合計画の分散分析を行った結果,二つの主効果と交互作用が有意であった(F (2, 478)=4.39, p<.05)。単純主効果の検定の結果,性別については,自分と好きな人で,女性のスコアが男性よりも高くなった。評価対象については,女性も男性も,好き>自分>嫌い,となった(MSe=9.41, 5%水準)。
次に,各評価対象間の差異の大きさを,5項目のそれぞれでスコアの差の絶対値を求め,それらの和で示した。Table 2は,その平均値を性別ごとに示したものである。
この値について,2(性別)×3(評価対象間)の2要因混合計画の分散分析を行った結果,評価対象間の主効果と交互作用が有意であった(F (2, 478)=4.32, p<.05)。単純主効果の検定の結果,性別については,|自分-好き|で,女性の差異が男性よりも小さくなった。評価対象間については,女性では,|自分-好き|<|自分-嫌い|<|好き-嫌い|,となり,男性では,|自分-好き|<|自分-嫌い|=|好き-嫌い|,となった(MSe=7.76, 5%水準)。
考 察
女性も男性も,好きな人のスコアが高く,嫌いな人のスコアが低くなり,その間に自分が,好きな人よりに位置する,という点では,大きなちがいはなかった。ただ,女性で,好きな人と嫌いな人の範囲がやや広がり,男性よりも好きな人により近くなった。
同一人物が,三者の性格を評価したため,この結果が実際の類似とはいいきれない。しかし,類似については教示にまったくなかったにもかかわらず,このようになったということは,自分と自分の好きな人と,嫌いな人との間には,一線を画していて,その傾向は,男性よりも女性の方が強いといえるかもしれない。
引用文献
Byrne, D, & Nelson, D. (1965). Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements. Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子(2012).対人魅力と性格の類似性との関係 日本心理学会第76大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子(1999).性格は5次元だった 培風館