The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH018] ソーシャル・ネットワーキング・サービスにおける自己開示効用

開示効用と交流効用の比較

木暮照正 (福島大学)

Keywords:ソーシャル・ネットワーキング・サービス, 自己開示

問題と目的
FacebookやTwitter,LINEに代表されるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は,多くの若者にとって手軽で,かつ,必須のコミュニケーション・ツールとなっている。このようなSNS上で取り交わされるメッセージ内容の多くは自分自身に関することや社会的な出来事に対する自分の感想であると考えられ,つまり,自己開示(本当の自分のことを相手に伝えること)的な内容が多く含まれていると考えられる。ユーザはSNS上での自己開示に対してどのようなメリットを感じているのだろうか。
木暮(2011)は,ブログ等を通じてインターネット上で他者と交流している人を対象に,上述の自己開示に関して,どのようなメリット・効用を感じているか調査を行った。性差に着目したところ,自己開示をすることで自分の気持ちや考えが整理できたなどの効用については性差の効果は認められなかったが,自己開示を契機に他者と交流を図ることができたなどの効用については性差があり,女性優位であった。本研究では改めてSNSにおける自己開示の性差の傾向について再確認を行う。
方 法
調査対象者 オンライン調査会社(マクロミル)のモニター515名(年齢範囲は15歳から29歳まで,平均年齢=24.2,SD=3.66,男性120名,女性395名)。
調査方法 WEBベースのオンライン調査を上述の専門会社に委託し,実施した。どのようなSNSを利用しているか,アカウントは実名か匿名か,SNSで自己開示を行ったときにどのようなメリットあるいはデメリットを感じたか(古川(2008)の分類や木暮(2011)を参考に作成。計10項目で「よくあった」⑸~「まったくなかった」⑴の5件法)などについて回答を求めた。調査は2013年11月に実施した。
結果と考察
SNSでの自己開示のメリット・デメリット評価(10項目)に対して因子分析(主因子法・バリマックス回転)を実施し,3因子を抽出した(累積寄与率=80.7%)。因子名はそれぞれ「開示効用」(「SNSに自分の素直な気持ちを投稿することで,気持ちが落ち着いた」などの3項目,α=.95),「肯定的交流効用」(「自分の投稿をみたユーザからのリプライなどの反応が契機となり,そのユーザと好意的な交流が始まった」などの4項目,α=.87),「否定的交流効用」(「自分の投稿をみたユーザからのリプライなどの反応が契機となり,そのユーザといざこざが起きた」などの3項目,α=.87)と命名した。
性別×年齢群(18歳以下,19-22歳以下,23歳以上)×アカウント(実名・匿名)を独立変数,上述3つの因子得点を従属変数とした分散分析を実施した。開示効用得点を従属変数とした分散分析では,性別(F(1, 441)=5.71, p=.017, ηp2=.013)とアカウント(F(1, 441)=5.34, p=.021, ηp2=.012)の2つの主効果が有意となった。女性(M=2.66)の方が男性(M=2.57)よりも開示効用を相対的に高く評価していた。匿名アカウント利用者(M=2.81)の方が実名アカウント利用者(M=2.43)よりも開示効用を相対的に高く評価していた。
肯定的交流効用得点を従属変数とした分散分析では,性別×年齢群の交互作用のみが有意となった(F(2, 441)=3.82, p=.023, ηp2= .017)。年齢群ごとに単純主効果を求めたところ,18歳以下の群のみで効果が認められ(F(1,441)=8.25, p=.002, ηp2=.018),女性(M=3.38)の方が男性(M=2.39)よりも肯定的な交流効用を相対的に高く評価していた。
否定的交流効用得点を従属変数とした分散分析では,アカウントの主効果(F(1, 441)=6.31, p=.012, ηp2=.014)と性別×年齢群の交互作用 (F(2, 441)=2.50, p=.025, ηp2=.017)が認められた。匿名アカウント利用者(M=1.88)の方が実名アカウント利用者(M=1.59)よりも否定的な交流効用を相対的に強く評価していた。年齢群ごとに単純主効果を求めたところ,22歳以下と23歳以上の群で効果が認められた(19-22:F(1, 441)=3.29, p=.043, ηp2=.0074;23+:F(1, 441)=20.75, p<.001, ηp2=.045)。両年齢群ともに,男性(19-22:M=2.06;23+:M=2.14)の方が女性(19-22:M=1.74;23+:M=1.59)よりも否定的な交流効用を相対的に強く評価していた。
木暮(2011)とは異なり,開示効用においても女性優位の傾向が示された。肯定的及び否定的な交流効用の結果から,男性は女性と比べて交流効用におけるデメリットをうまく回避できていない可能性が考えられる。