[PH031] 学級満足度に対する性格因子の影響度推定
Q-UとBig Fiveを活用して
Keywords:Q-U, Big Five, 影響度
1.問題と目的
学級集団中の満足度を調査する方法として,学級満足度尺度(以下,Q-U)が広く活用されている。一方,このQ-Uによって分類された「学級不満足群」に属する者が,教師の学級運営努力にもかかわらず,満足度が改善しないケースもある。そこで本研究は,“性格因子が学級満足度に影響する”と仮定し,この仮説を検証するとともに影響度を推定する。
2.方 法
調査対象者は,M専門学校に平成X年度~平成X+3年度に入学した学生532名(男:153名,女:379名)である。調査時期と内容は,各入学年度の5月にQ-Uと主要5因子性格検査(以下,Big Five)を実施した。Big Fiveは,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性の5因子からなる性格検査である。
3.結 果
調査対象者532名の内,全データに欠損がない被験者433名について,性別・所属群間について,性格因子平均値に差があるのか2×4の分散分析を実施した。各性格因子は,被験者433名の母集団において,正規化T得点に変換してから分析した。その結果をTable 1に示す。それによると,“外向性”に有意な性差がみられ(F[1, 432]=7.9, p<0.05),女性の方が有意に得点が高かった。また,全ての性格因子において,所属群差の主効果がみられた。そのため,Tukey法による多重比較を行った結果,いずれの性格因子においても“1満足群”と“4不満足群”について平均値の得点差が有意であり,“1満足群”の方が“4不満足群”よりも得点が高いことが判明した。
そこで,“1満足群”と“4不満足群”のみに着目して,いずれの性格因子が両群を分けることに寄与しているのか,その影響度を推定するため判別分析を実施した。
その結果,判別関数は有意(Wilksラムダ:0.74, p<0.001)となり,その標準化判別係数から判断すると“外向性”(係数:0.62 ,p<0.001),“協調性” (係数:0.39 ,p<0.001),“情緒安定性”(係数:0.36 ,p<0.001)の性格因子が両群の判別に寄与していることが分かった。さらに判別関数の説明率は,0.26(F[6, 327]=19.4, p<0.001)となり,両群を分ける性格因子の具体的な影響度を推定できた。
この結果は,“性格因子が学級満足度に影響する”という仮説を支持するものであり,また,その影響度は説明率0.26と決して少なくない。しかし、一方で満足度に対する影響度が,残り75%程度あることから,学級運営の方法論など他要因も重要である。その他要因の影響度をどう分離・分析・検討していくのか,さらに専門学校という学校種以外でも同様の結果が得られるのか,今後の研究課題である。
学級集団中の満足度を調査する方法として,学級満足度尺度(以下,Q-U)が広く活用されている。一方,このQ-Uによって分類された「学級不満足群」に属する者が,教師の学級運営努力にもかかわらず,満足度が改善しないケースもある。そこで本研究は,“性格因子が学級満足度に影響する”と仮定し,この仮説を検証するとともに影響度を推定する。
2.方 法
調査対象者は,M専門学校に平成X年度~平成X+3年度に入学した学生532名(男:153名,女:379名)である。調査時期と内容は,各入学年度の5月にQ-Uと主要5因子性格検査(以下,Big Five)を実施した。Big Fiveは,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性の5因子からなる性格検査である。
3.結 果
調査対象者532名の内,全データに欠損がない被験者433名について,性別・所属群間について,性格因子平均値に差があるのか2×4の分散分析を実施した。各性格因子は,被験者433名の母集団において,正規化T得点に変換してから分析した。その結果をTable 1に示す。それによると,“外向性”に有意な性差がみられ(F[1, 432]=7.9, p<0.05),女性の方が有意に得点が高かった。また,全ての性格因子において,所属群差の主効果がみられた。そのため,Tukey法による多重比較を行った結果,いずれの性格因子においても“1満足群”と“4不満足群”について平均値の得点差が有意であり,“1満足群”の方が“4不満足群”よりも得点が高いことが判明した。
そこで,“1満足群”と“4不満足群”のみに着目して,いずれの性格因子が両群を分けることに寄与しているのか,その影響度を推定するため判別分析を実施した。
その結果,判別関数は有意(Wilksラムダ:0.74, p<0.001)となり,その標準化判別係数から判断すると“外向性”(係数:0.62 ,p<0.001),“協調性” (係数:0.39 ,p<0.001),“情緒安定性”(係数:0.36 ,p<0.001)の性格因子が両群の判別に寄与していることが分かった。さらに判別関数の説明率は,0.26(F[6, 327]=19.4, p<0.001)となり,両群を分ける性格因子の具体的な影響度を推定できた。
この結果は,“性格因子が学級満足度に影響する”という仮説を支持するものであり,また,その影響度は説明率0.26と決して少なくない。しかし、一方で満足度に対する影響度が,残り75%程度あることから,学級運営の方法論など他要因も重要である。その他要因の影響度をどう分離・分析・検討していくのか,さらに専門学校という学校種以外でも同様の結果が得られるのか,今後の研究課題である。