[PH032] 大学生の自己意識に関する研究IV
自己意識が文化的自己観に与える影響性
Keywords:自己意識, 文化的自己観, 青年期
1.問題と目的
文化的自己観(Marukus&Kitayama, 1991)において,個人の性質は,「相互独立的自己観」と「相互協調的自己観」に区分される。青年期は,親や周囲への依存を軽減し,自立へと向かう時期である(梶田,1988)。しかし一方,日本文化では,相互独立性が低く,相互協調性が高いという「日本人的特徴」が,青年期に最も顕著に現れる(高田,2004)。すなわち,相互独立性は,青年期に低下し,成人期に上昇するが,相互協調性は,青年期に上昇し,成人期に低下する(高田,2002,2001,1999)。こうした文化的自己観を規定する要因として,「自己意識」が挙げられる(Hattie,1992)。自己意識との関連について,これまで,私的自己意識は,相互独立的自己観と正の相関(高田,2000),公的自己意識は,相互協調的自己観と正の相関(高田,2000,1999)が得られている。研究Ⅰ(金子・河村,日本カウンセリング学会第46回大会)では,多面的な観点から自己意識を測定する尺度を作成し,研究Ⅱ(金子・河村,2014)・研究Ⅲ(金子・金子,2014)では,自己意識とアイデンティティや精神的健康などとの関連性を検討してきた。そこで,本研究では,自己意識と文化的自己観の関連性を検証することを目的とする。相互協調的自己観と相互独立的自己観の各々は,人間存在の基本的様式である『「社会存在」と「個性的存在」(梶田,1988)』に即した概念である(高田・大本・清家,1996)。したがって,本研究結果は,青年期の自己形成のあり方を理解するうえで,有益な知見を与えるものと考えられる。
2.方 法
⑴調査時期:2013年6月~7月。
⑵調査対象:首都圏の私立大学2校の学生487名を対象に調査を行った。質問紙に不備のあった者を除いた460名(男性121名;女性339名)が,最終的な分析対象となった(有効回答率94.4%)。平均年齢は,19.47歳(SD=1.28)であった。
⑶調査内容:1.改訂版自己意識尺度…研究Ⅱ参照。2.相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,2000)…「相互独立性(個の認識・主張,独断性)」と「相互協調性(他者への親和・順応,評価懸念)」の各10項目の計20項目。7段階評定。
3.結果と考察
自己意識と文化的自己観の各要因間の単相関係数および偏相関係数を求めた。偏相関は,自己意識の各下位尺度間の互いの影響性を統制した。次に,偏相関の結果からパスを想定し,自己意識が文化的自己観へ与える因果モデルを,共分散構造分析によって検証した(Figure1)。モデルの適合度は,χ2=5.93,df=5,GFI=.996,AGFI=.982,CFI=.999,RMSEA=.020であり,十分な値であった。公私自己意識は,相互協調性に正の影響(β=.09),私的自己意識は,相互独立性に正の影響(β=.31)を与えていた。私的自己意識は,周囲とは独立した主体的な存在であろうとする傾向を促し,公私自己意識は,他者と一体化した協調的存在であろうとする傾向を促すことが示された。また,評価意識は,相互独立性に負の影響(β=-.29),相互協調性に正の影響(β=.65)を与えていた。青年期は,他者からの評価意識が顕著に高まる時期であり(梶田,1988),こうした評価意識の高まりが,日本人的特徴を表す自己観を形成している可能性が示唆された。
文化的自己観(Marukus&Kitayama, 1991)において,個人の性質は,「相互独立的自己観」と「相互協調的自己観」に区分される。青年期は,親や周囲への依存を軽減し,自立へと向かう時期である(梶田,1988)。しかし一方,日本文化では,相互独立性が低く,相互協調性が高いという「日本人的特徴」が,青年期に最も顕著に現れる(高田,2004)。すなわち,相互独立性は,青年期に低下し,成人期に上昇するが,相互協調性は,青年期に上昇し,成人期に低下する(高田,2002,2001,1999)。こうした文化的自己観を規定する要因として,「自己意識」が挙げられる(Hattie,1992)。自己意識との関連について,これまで,私的自己意識は,相互独立的自己観と正の相関(高田,2000),公的自己意識は,相互協調的自己観と正の相関(高田,2000,1999)が得られている。研究Ⅰ(金子・河村,日本カウンセリング学会第46回大会)では,多面的な観点から自己意識を測定する尺度を作成し,研究Ⅱ(金子・河村,2014)・研究Ⅲ(金子・金子,2014)では,自己意識とアイデンティティや精神的健康などとの関連性を検討してきた。そこで,本研究では,自己意識と文化的自己観の関連性を検証することを目的とする。相互協調的自己観と相互独立的自己観の各々は,人間存在の基本的様式である『「社会存在」と「個性的存在」(梶田,1988)』に即した概念である(高田・大本・清家,1996)。したがって,本研究結果は,青年期の自己形成のあり方を理解するうえで,有益な知見を与えるものと考えられる。
2.方 法
⑴調査時期:2013年6月~7月。
⑵調査対象:首都圏の私立大学2校の学生487名を対象に調査を行った。質問紙に不備のあった者を除いた460名(男性121名;女性339名)が,最終的な分析対象となった(有効回答率94.4%)。平均年齢は,19.47歳(SD=1.28)であった。
⑶調査内容:1.改訂版自己意識尺度…研究Ⅱ参照。2.相互独立的-相互協調的自己観尺度(高田,2000)…「相互独立性(個の認識・主張,独断性)」と「相互協調性(他者への親和・順応,評価懸念)」の各10項目の計20項目。7段階評定。
3.結果と考察
自己意識と文化的自己観の各要因間の単相関係数および偏相関係数を求めた。偏相関は,自己意識の各下位尺度間の互いの影響性を統制した。次に,偏相関の結果からパスを想定し,自己意識が文化的自己観へ与える因果モデルを,共分散構造分析によって検証した(Figure1)。モデルの適合度は,χ2=5.93,df=5,GFI=.996,AGFI=.982,CFI=.999,RMSEA=.020であり,十分な値であった。公私自己意識は,相互協調性に正の影響(β=.09),私的自己意識は,相互独立性に正の影響(β=.31)を与えていた。私的自己意識は,周囲とは独立した主体的な存在であろうとする傾向を促し,公私自己意識は,他者と一体化した協調的存在であろうとする傾向を促すことが示された。また,評価意識は,相互独立性に負の影響(β=-.29),相互協調性に正の影響(β=.65)を与えていた。青年期は,他者からの評価意識が顕著に高まる時期であり(梶田,1988),こうした評価意識の高まりが,日本人的特徴を表す自己観を形成している可能性が示唆された。