[PH034] 大学生の友人関係志向性と自己開示におけるオープナーの特性の関連
擬態語性格尺度を用いて
Keywords:自己開示, 擬態語, パーソナリティ
問題と目的
自己開示を引き出す,いわゆる「オープナー」の特性に関する研究(例 小口, 1990; 若松・堀家, 2004)の多くは,いわば一般的にオープナーに求められる特徴を示してきた。しかし,個別の関係では,友人関係の質や自己開示に求めるものに応じ,オープナーとして好まれる人物に一定の差異が想定される。この点については,越・塚脇・平山(2009)が,自己開示動機の個人差とオープナーの特性との関連を検討したが,より多面的な観点からこの関連を捉えることも求められる。
そこで,本研究は友人関係の志向性を岡田(1999, 2012)の項目,オープナーの特性を擬態語性格尺度(小松・酒井・西岡・向山, 2012)で調査し,この「相性」を検討する。擬態語は,感覚的な内容を言語化できる機能にすぐれると考えられ,他者の認知を明確に検出しうる。これらにより,友人から傷つけられることを怖れる傾向が強いと「ほんわか」「おっとり」等で表現される「緩やかさ」の高い人が,円滑でノリのよい関係を求める傾向が高いと「おどおど」「もじもじ」等で表現される「臆病さ」の低い人がそれぞれオープナーになる等の関連が予想できる。
方 法
研究協力者 大学生205名(男性114名,女性91名)。友人関係がある程度固定していると思われる3年生以上を中心に調査を実施した。
調査内容 ①友人関係の志向性(以下友人関係尺度) 岡田(2007)による「現代青年に特有な友人関係の取り方に関する尺度」と,岡田(2012)の「傷つけ合い回避尺度」の項目をもとに,「ふだん同性の友だちとどのような付き合い方をしているか」を31項目で評定した(5件法)。
②自己開示量 「自分自身のことをよく話す,または話しやすい同性の友人」を1名想起し,イニシャルを記入したうえで,その友人に対してどの程度の情報を伝えるかを,ダーレガ他(豊田訳)(1999)の10項目を一部変更の上で使用し測定した(5件法)。
③オープナーの特性 ②で選択した友人の性格について,擬態語性格尺度短縮版(小松・向山・酒井・西岡, 2012)で評定を求めた(30項目,5件法)。尺度は先述の「臆病さ」「緩やかさ」に加え「几帳面さ(きっちり,しっかり等)」「不機嫌さ(いらいら,むすっとした等)」「淡白さ(さっぱり,あっさり等)」「軽薄さ(でれでれ,べたべた等)」の6下位尺度から構成されている。
結果と考察
友人関係尺度の下位尺度 主因子法,プロマックス回転による因子分析を試み,5因子解が単純構造に近く解釈可能であったため,a.内面的志向(落ち込んだ時話を聞いてもらう他全9項目)b.傷つけ回避志向(友だちの言うことを否定しないようにする他全6項目)c.快活的志向(楽しい雰囲気になるようふるまう他全4項目)d.気遣い志向(友だちの話をきちんと聞くようにする他全7項目)e.自己防衛志向(友だちの前で恥をかかないよう気をつける他全4項目)の下位尺度を構成した。
自己開示量・擬態語性格尺度 α係数を確認の上,それぞれ想定した項目を合算して使用した。
尺度間の相関関係 以上の尺度間の相関関係をTableに示す(5%水準で有意な結果に下線)。r=.20以上の結果(太字)では,内面的志向・気遣い志向が自己開示量と正の相関を示し,オープナーの性格との関連は,傷つけ回避志向,気遣い志向と几帳面さの相関がみられた。
性別ごとの分析では,男性は自己防衛志向と臆病さ・緩やかさ(どちらもr=.22),気遣い志向と緩やかさ,几帳面さ(それぞれr=.22,r=.31)の相関が有意であり,女性では傷つけ回避志向,快活的志向,気遣い志向と几帳面さ(それぞれr=.28,r=.22,r=22)のほか,内面的志向と軽薄さ(r=.24),気遣い志向と淡白さ(r=.24)の相関がみられた。
以上の相関はいずれも弱いが,他者への配慮を意識する者のオープナーが,「しっかり」「きっちり」しているという傾向に加え,男性,女性それぞれでの一定の「相性」の存在を示唆している。
付記:本発表の内容は,2014年度に発表者が指導した大阪教育大学卒業論文の資料を,著者(ご本人の希望により匿名)の同意のもとでまとめ発表するものです。
自己開示を引き出す,いわゆる「オープナー」の特性に関する研究(例 小口, 1990; 若松・堀家, 2004)の多くは,いわば一般的にオープナーに求められる特徴を示してきた。しかし,個別の関係では,友人関係の質や自己開示に求めるものに応じ,オープナーとして好まれる人物に一定の差異が想定される。この点については,越・塚脇・平山(2009)が,自己開示動機の個人差とオープナーの特性との関連を検討したが,より多面的な観点からこの関連を捉えることも求められる。
そこで,本研究は友人関係の志向性を岡田(1999, 2012)の項目,オープナーの特性を擬態語性格尺度(小松・酒井・西岡・向山, 2012)で調査し,この「相性」を検討する。擬態語は,感覚的な内容を言語化できる機能にすぐれると考えられ,他者の認知を明確に検出しうる。これらにより,友人から傷つけられることを怖れる傾向が強いと「ほんわか」「おっとり」等で表現される「緩やかさ」の高い人が,円滑でノリのよい関係を求める傾向が高いと「おどおど」「もじもじ」等で表現される「臆病さ」の低い人がそれぞれオープナーになる等の関連が予想できる。
方 法
研究協力者 大学生205名(男性114名,女性91名)。友人関係がある程度固定していると思われる3年生以上を中心に調査を実施した。
調査内容 ①友人関係の志向性(以下友人関係尺度) 岡田(2007)による「現代青年に特有な友人関係の取り方に関する尺度」と,岡田(2012)の「傷つけ合い回避尺度」の項目をもとに,「ふだん同性の友だちとどのような付き合い方をしているか」を31項目で評定した(5件法)。
②自己開示量 「自分自身のことをよく話す,または話しやすい同性の友人」を1名想起し,イニシャルを記入したうえで,その友人に対してどの程度の情報を伝えるかを,ダーレガ他(豊田訳)(1999)の10項目を一部変更の上で使用し測定した(5件法)。
③オープナーの特性 ②で選択した友人の性格について,擬態語性格尺度短縮版(小松・向山・酒井・西岡, 2012)で評定を求めた(30項目,5件法)。尺度は先述の「臆病さ」「緩やかさ」に加え「几帳面さ(きっちり,しっかり等)」「不機嫌さ(いらいら,むすっとした等)」「淡白さ(さっぱり,あっさり等)」「軽薄さ(でれでれ,べたべた等)」の6下位尺度から構成されている。
結果と考察
友人関係尺度の下位尺度 主因子法,プロマックス回転による因子分析を試み,5因子解が単純構造に近く解釈可能であったため,a.内面的志向(落ち込んだ時話を聞いてもらう他全9項目)b.傷つけ回避志向(友だちの言うことを否定しないようにする他全6項目)c.快活的志向(楽しい雰囲気になるようふるまう他全4項目)d.気遣い志向(友だちの話をきちんと聞くようにする他全7項目)e.自己防衛志向(友だちの前で恥をかかないよう気をつける他全4項目)の下位尺度を構成した。
自己開示量・擬態語性格尺度 α係数を確認の上,それぞれ想定した項目を合算して使用した。
尺度間の相関関係 以上の尺度間の相関関係をTableに示す(5%水準で有意な結果に下線)。r=.20以上の結果(太字)では,内面的志向・気遣い志向が自己開示量と正の相関を示し,オープナーの性格との関連は,傷つけ回避志向,気遣い志向と几帳面さの相関がみられた。
性別ごとの分析では,男性は自己防衛志向と臆病さ・緩やかさ(どちらもr=.22),気遣い志向と緩やかさ,几帳面さ(それぞれr=.22,r=.31)の相関が有意であり,女性では傷つけ回避志向,快活的志向,気遣い志向と几帳面さ(それぞれr=.28,r=.22,r=22)のほか,内面的志向と軽薄さ(r=.24),気遣い志向と淡白さ(r=.24)の相関がみられた。
以上の相関はいずれも弱いが,他者への配慮を意識する者のオープナーが,「しっかり」「きっちり」しているという傾向に加え,男性,女性それぞれでの一定の「相性」の存在を示唆している。
付記:本発表の内容は,2014年度に発表者が指導した大阪教育大学卒業論文の資料を,著者(ご本人の希望により匿名)の同意のもとでまとめ発表するものです。