[PH057] 親の育児や子どもについての感情
4~8歳時点での父母の回答
キーワード:父母, 育児についての感情, 縦断研究
【目 的】
本研究では,幼い子どもを持つ両親の育児や子どもについての感情がいかなるものであるのかを,縦断的な資料で検討した。4~8歳の3時点で,①親の感情はいかなるものか,それには,②一貫性があるか,あるいは,変化するか,③父母間には感情の差はあるか,を検討した。なお,子どもの性別による親の感情の差異が予想されるところから,男女児別に検討した。
【方 法】
調査対象 本研究は子どもと両親を対象にした縦断研究の一部であり,子ども35名(女児19名,男児16名)の両親の資料である。子どもが4,6,8歳の3時点で,両親に同じ質問紙調査を繰り返し実施した。4.3歳(SD=1.66),6.2歳(SD=1.67),8歳時は,小学2年生に進級した4~6月に調査を行った。
調査内容 柏木・若松(1994)による尺度を用いた。これは育児や子どもに関する感情を,肯定的・否定的側面から測定でき,「育児への肯定感:6項目」,「育児による制約感:6項目」,「子どもは分身感:2項目」の3因子を含む。全14項目について4段階(1:よくそう思う~4:まったくそう思わない)で父母それぞれに回答を求めた。柏木ら(1994)による各因子に該当する項目についての評定値を逆転させて全て合計し,その値を項目数で割った値を用いて,全ての分析を行った。
【結果と考察】
分析に用いた値は,以下のTable1とTable2に示した。
1.父母の感情 父母のそれぞれの群が持つ感情の内容を知るために,時期ごとに肯定感,制約感,分身感の平均値について反復測定による分散分析を行った。その結果,母親は子どもの性別によらず,全時点で制約感や分身感より肯定感が有意に高い(p<.001~.005)ことが示された。しかし,父親は女児の場合,全時点で制約感より分身感(p<.001~.05),分身感より肯定感(p<.001~.005)が有意に高く,男児の場合,全時点で制約感より肯定感(p<.001)と分身感(p<.001)が有意に高いことが明らかになった。以上から,母親は3つの感情のうち肯定感のみが最も強く,父親は肯定感に加えて分身感も強く持っていることが示された。
2.父母の感情の変化 両親の感情の変化を3時点で比較するため,肯定感,制約感,分身感の感情ごとに3時点の各平均値について反復測定による分散分析を行ったが,子どもの性別を問わず,父母のいかなる感情も時期による有意差はなく,親の感情が一貫していることが示された。
3.父母群間の感情の差 両親の感情を3因子別に比較したが,女児は6歳の制約感のみ母親の方が有意に高く(p<.05),男児は4歳と8歳の制約感は母親(p<.05),分身感は全時点で父親(p<.005~.01)が有意に高かった。制約感は母親が,分身感は父親が高いという結果は,柏木ら(1994)の結果と一致している。
本研究では,父母共に育児や子どもについては肯定的な感情を最も強く持ち,それは4~8歳まで一貫していること,さらに,制約感は母親,分身感は父親が高いという差があることが示された。
本研究では,幼い子どもを持つ両親の育児や子どもについての感情がいかなるものであるのかを,縦断的な資料で検討した。4~8歳の3時点で,①親の感情はいかなるものか,それには,②一貫性があるか,あるいは,変化するか,③父母間には感情の差はあるか,を検討した。なお,子どもの性別による親の感情の差異が予想されるところから,男女児別に検討した。
【方 法】
調査対象 本研究は子どもと両親を対象にした縦断研究の一部であり,子ども35名(女児19名,男児16名)の両親の資料である。子どもが4,6,8歳の3時点で,両親に同じ質問紙調査を繰り返し実施した。4.3歳(SD=1.66),6.2歳(SD=1.67),8歳時は,小学2年生に進級した4~6月に調査を行った。
調査内容 柏木・若松(1994)による尺度を用いた。これは育児や子どもに関する感情を,肯定的・否定的側面から測定でき,「育児への肯定感:6項目」,「育児による制約感:6項目」,「子どもは分身感:2項目」の3因子を含む。全14項目について4段階(1:よくそう思う~4:まったくそう思わない)で父母それぞれに回答を求めた。柏木ら(1994)による各因子に該当する項目についての評定値を逆転させて全て合計し,その値を項目数で割った値を用いて,全ての分析を行った。
【結果と考察】
分析に用いた値は,以下のTable1とTable2に示した。
1.父母の感情 父母のそれぞれの群が持つ感情の内容を知るために,時期ごとに肯定感,制約感,分身感の平均値について反復測定による分散分析を行った。その結果,母親は子どもの性別によらず,全時点で制約感や分身感より肯定感が有意に高い(p<.001~.005)ことが示された。しかし,父親は女児の場合,全時点で制約感より分身感(p<.001~.05),分身感より肯定感(p<.001~.005)が有意に高く,男児の場合,全時点で制約感より肯定感(p<.001)と分身感(p<.001)が有意に高いことが明らかになった。以上から,母親は3つの感情のうち肯定感のみが最も強く,父親は肯定感に加えて分身感も強く持っていることが示された。
2.父母の感情の変化 両親の感情の変化を3時点で比較するため,肯定感,制約感,分身感の感情ごとに3時点の各平均値について反復測定による分散分析を行ったが,子どもの性別を問わず,父母のいかなる感情も時期による有意差はなく,親の感情が一貫していることが示された。
3.父母群間の感情の差 両親の感情を3因子別に比較したが,女児は6歳の制約感のみ母親の方が有意に高く(p<.05),男児は4歳と8歳の制約感は母親(p<.05),分身感は全時点で父親(p<.005~.01)が有意に高かった。制約感は母親が,分身感は父親が高いという結果は,柏木ら(1994)の結果と一致している。
本研究では,父母共に育児や子どもについては肯定的な感情を最も強く持ち,それは4~8歳まで一貫していること,さらに,制約感は母親,分身感は父親が高いという差があることが示された。