The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH068] 児童養護施設における心理教育プログラムの効果

職員による子どもの行動観察の分析

三後美紀1, 坪井裕子2, 柴田一匡#3, 米澤由実子#4 (1.人間環境大学, 2.人間環境大学, 3.プティ ヴィラージュ, 4.名古屋大学大学院)

Keywords:児童養護施設, 心理教育プログラム, 性・暴力・生い立ち

問題と目的
近年,児童福祉施設における子どもの性や暴力を介した問題行動への対応として,施設内での心理教育プログラムが実施されてきている。本研究では,ある児童養護施設における「性・暴力・生い立ち」に関する児童向けの心理教育プログラムの効果について,職員による子どもの行動観察の結果から検討することを目的とする。
方法
調査協力者:X児童養護施設の直接処遇職員21人 調査方法:質問紙調査 調査時期:2013年5月~2013年12月に施設内において実施した心理教育プログラムの前後に調査を行った。調査内容:(1)個人背景変数(子どもの性別,子どもの年齢と学年,観察者である職員の属性)(2)子どもの状態:プライベートゾーンの理解(1項目),呼吸法の行動意図(1項目),優しい言葉かけ(1項目),ソーシャルスキル(4項目),対人的信頼感(2項目),ソーシャルサポート(1項目),自己効力感(2項目),自尊感情(3項目)の計15項目(4件法)プログラムの内容:対象は幼児から高校生43人であり,年齢段階別の5グループにそれぞれ月1回の頻度で,各グループ7~9回実施した。内容は,産道体験,プライベートゾーンの理解,10秒呼吸法の習得などを通して自分を大切にすることや他者との関係を良好にすることを目指すものが含まれていた。倫理的配慮:研究目的・方法等を説明し,承諾を得た。記入者は匿名とした。
結果
プログラムの効果を検討するため,プログラム実施前後における子どもの状態(プライベートゾーンの理解,呼吸法の行動意図,優しい言葉かけ,ソーシャルスキル,対人的信頼感,ソーシャルサポート,自己効力感,自尊感情)の各得点についてt検定を行った。その結果,ソーシャルサポート以外において有意差が見られ,いずれも実施後の得点のほうが実施前よりも高かった(表1)。
次に,子どもの年代による効果の違いを項目ごとに検討するために,年代とプログラム実施前後を独立変数とし各項目の得点を従属変数とする二要因分散分析(混合計画)を行った。子どもの年代はプログラム実施グループの区分により「低学年(幼児から小4)」「高学年(小5から高校生)」とした。
その結果,「1.プライベートゾーンを大切にすることができる」と「14.自分を大切な存在であると思うことができる」という2項目に,年代(「低学年」・「高学年」)とプログラム実施前後(前・後)の交互作用が見られた(いずれもp<.05)。結果を図1と図2に示す。単純主効果の検定を行ったところ,図1では「低学年」における実施後の得点が,実施前より有意に高かった(p<.01)。図2においても「低学年」における実施後の得点が,実施前より有意に高かった(p<.01)。また,プログラム実施後における「低学年」の得点が,「高学年」より有意に高かった(p<.01)。
考察
本研究では施設における心理教育プログラムの効果がおおむね示された。また,子どもの年代によりプログラムの効果のあらわれ方が異なることが明らかとなり,特に,低学年の段階でプログラムを実施することの有用性が示された。一方,高学年の児童へのよりよいプログラムの開発が課題として示されたといえる。