[PH070] 発達凸凹(いわゆる発達障害)支援におけるカウンセラーの役割
家族支援に目を向けて
Keywords:発達, 臨床, 家族支援
【問 題】
筆者らの所属する株式会社青山学芸心理は,日本初のカウンセリングサービスの株式会社である。1996年設立以来,カウンセリングの和語として「安談」という言葉を用い,日本人の文化や風土に合わせた心理相談を提供している。
近年の相談では発達障害にまつわる案件が増えてきた。筆者らは,いわゆる軽度な発達障害を「発達の凸凹」と呼んでいる。発達障害を持つ者に対しての支援を考える際に,これを病理として捉える観点が必ずしも具体的な支援にはつながらないと認識しているからである。「発達の凸凹」は,当事者の生まれつきの特性によって,本人のみならず,周囲の人間にも様々な困難が生じる現象である。発達凸凹を持つ相談者(以下:凸凹さん)は,生まれつきの特性が千差万別であるため,それぞれの特性に合わせた支援が必要となる。また,支援の前提になるのは,それぞれの特性に対する理解と,凸凹さんを取り巻く,周囲の支援者の存在である。
近年の発達障害研究では,凸凹さんへの支援の方略として,学習方法の考案や支援ツールの作成などの蓄積は多くされているものの,支援の中核を担う「家族」に対する,具体的な支援方法の研究は少ない。特性を持つ凸凹さんと,その家族 (または,家族も凸凹を有していることもあり得る)との相互関係は,解離が起きやすい現状もある。
【目 的】
本研究では,凸凹さんと,その支援者たる周囲の家族の間に立つ仲介役としての,カウンセラーの役割ついて論じる。その際,弊社が経験した凸凹さんの事例から,カウンセラーの介入がどのように,凸凹さん支援に効果を上げているかを説明する。パネル発表においては,知能検査の結果の解釈が,凸凹さんの具体的な支援方法に役に立っていることを提示する。
【事例紹介】
ケース①「部屋の片付けができない(36歳男)」
視覚情報の関連性を見つける事に困難を感じやすい特性が明らかになった。妻・実父とのカウンセリングの中で,その特性についての理解が共有され,具体的な支援体制が築かれた。物品の整理やファイリングにおいて,ラベル化を用い,不得意な処理は家族に手伝ってもらうなどをして,困難な状況を回避できるようになり,家族関係も安定した。
ケース②「職場にいるのが不安(27歳男)」
言語的・非言語的な推理能力が非常に高いことで,先行きを過度に具体的に考えてしまう傾向が明らかになった。業務上で混乱を起こすことで不安が生じていたが,特性を理解した家族が本人の気持ちに寄り添ってくれるようになり,安定して職場に行けるようになった。
ケース③「言葉の表現が乏しい(小6男)」
注意集中に困難があり,聴覚的短期記憶が苦手であることがわかった。父親からの主訴は,「国語が苦手。語彙乏しい」というものであったが,検査結果の解釈をカウンセラーが説明することで,本人の努力不足による問題ではないということが理解された。図形,文字,イラストなどの視覚情報を多く用いた教材が提案され,本人の特性に見合った学習方法が用いられるようになった。
【考 察】
以上の事例から,凸凹さん支援の最前線に立つ家族に対して,カウンセラーが介入することで,凸凹さん支援そのものが促進するだけでなく,家族関係も改善に向かうことが示された。凸凹さんには,ある部分では,高い能力があるため,実際の生活場面で,できないことがあると,かえって「どうしてできないのか」と叱責の対象になることも多い。家族だけでは,本人の特性によっておこる反応を十分にとらえることは難しく,その間を取り持つカウンセラーの重要性は明白である。
筆者らの所属する株式会社青山学芸心理は,日本初のカウンセリングサービスの株式会社である。1996年設立以来,カウンセリングの和語として「安談」という言葉を用い,日本人の文化や風土に合わせた心理相談を提供している。
近年の相談では発達障害にまつわる案件が増えてきた。筆者らは,いわゆる軽度な発達障害を「発達の凸凹」と呼んでいる。発達障害を持つ者に対しての支援を考える際に,これを病理として捉える観点が必ずしも具体的な支援にはつながらないと認識しているからである。「発達の凸凹」は,当事者の生まれつきの特性によって,本人のみならず,周囲の人間にも様々な困難が生じる現象である。発達凸凹を持つ相談者(以下:凸凹さん)は,生まれつきの特性が千差万別であるため,それぞれの特性に合わせた支援が必要となる。また,支援の前提になるのは,それぞれの特性に対する理解と,凸凹さんを取り巻く,周囲の支援者の存在である。
近年の発達障害研究では,凸凹さんへの支援の方略として,学習方法の考案や支援ツールの作成などの蓄積は多くされているものの,支援の中核を担う「家族」に対する,具体的な支援方法の研究は少ない。特性を持つ凸凹さんと,その家族 (または,家族も凸凹を有していることもあり得る)との相互関係は,解離が起きやすい現状もある。
【目 的】
本研究では,凸凹さんと,その支援者たる周囲の家族の間に立つ仲介役としての,カウンセラーの役割ついて論じる。その際,弊社が経験した凸凹さんの事例から,カウンセラーの介入がどのように,凸凹さん支援に効果を上げているかを説明する。パネル発表においては,知能検査の結果の解釈が,凸凹さんの具体的な支援方法に役に立っていることを提示する。
【事例紹介】
ケース①「部屋の片付けができない(36歳男)」
視覚情報の関連性を見つける事に困難を感じやすい特性が明らかになった。妻・実父とのカウンセリングの中で,その特性についての理解が共有され,具体的な支援体制が築かれた。物品の整理やファイリングにおいて,ラベル化を用い,不得意な処理は家族に手伝ってもらうなどをして,困難な状況を回避できるようになり,家族関係も安定した。
ケース②「職場にいるのが不安(27歳男)」
言語的・非言語的な推理能力が非常に高いことで,先行きを過度に具体的に考えてしまう傾向が明らかになった。業務上で混乱を起こすことで不安が生じていたが,特性を理解した家族が本人の気持ちに寄り添ってくれるようになり,安定して職場に行けるようになった。
ケース③「言葉の表現が乏しい(小6男)」
注意集中に困難があり,聴覚的短期記憶が苦手であることがわかった。父親からの主訴は,「国語が苦手。語彙乏しい」というものであったが,検査結果の解釈をカウンセラーが説明することで,本人の努力不足による問題ではないということが理解された。図形,文字,イラストなどの視覚情報を多く用いた教材が提案され,本人の特性に見合った学習方法が用いられるようになった。
【考 察】
以上の事例から,凸凹さん支援の最前線に立つ家族に対して,カウンセラーが介入することで,凸凹さん支援そのものが促進するだけでなく,家族関係も改善に向かうことが示された。凸凹さんには,ある部分では,高い能力があるため,実際の生活場面で,できないことがあると,かえって「どうしてできないのか」と叱責の対象になることも多い。家族だけでは,本人の特性によっておこる反応を十分にとらえることは難しく,その間を取り持つカウンセラーの重要性は明白である。