The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PH

Fri. Aug 28, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PH073] 解離的対処行動尺度の作成

信頼性と妥当性の検討

廣澤愛子1, 大西将史2, 岸俊行3 (1.福井大学, 2.福井大学, 3.福井大学)

Keywords:非病理的な解離, ストレスへの対処行動, 病的解離との弁別

目 的
解離とは,苦痛をもたらすものを自己から切り離す心的作用であり(Putnum,1997),解離性同一性障害に代表されるような病的解離もあれば,単に苦痛な事柄をなかったことにしようとする非病理的な解離もある。Putnum(1997)によると,病的解離は正常な人が稀にしか体験しないものであり,病的解離と非病理的解離は異なる認知構造を有すると言う。そして両者の大きな違いは,非病理的解離が苦痛な状況を切り離したことを覚えている点である。近年,非病理的解離の増加が指摘されているが(岩宮, 2009),その研究は,病的解離と比べて極めて少ない。そこで本研究では,病的解離とは異なる認知構造を有する非病理的解離の尺度を作成する。なお,非病理的解離は自分にとって苦痛なものを意識的に切り離す行為であるため,ストレスへの対処行動と考えることができる。そこでこの尺度を解離的対処行動尺度と呼ぶ。
方 法
調査協力者 大学生154名(男80名,女74名,平均年齢20.51,標準偏差1.35)を対象に質問紙調査を実施した。
調査内容
(1) 解離的対処行動尺度 いじめ体験に関する記述回答(廣澤,2008),及び回避的なストレス対処行動に関する既存の尺度を参照し,苦痛な体験を「切り捨てる」14項目,苦痛な体験と「距離を置く」12項目,辛い気持ちを「割り切る」10項目,計36項目の尺度を作成した。評定は全く当てはまらない~非常に当てはまるまでの6段階である。
(2) 解離性体験尺度 病的解離との弁別的妥当性を確認するために,Bernstein&Putnam(1986)による解離性体験尺度の日本語版28項目(田辺・小川,1992)を用いた。「0%:そういうことはない」から「100%:いつもそうだ」の11件法で回答を求めた。
(3) 対人ストレスコーピング尺度 加藤(2001)による本尺度は,ポジティブ関係コーピング16項目,ネガティブ関係コーピング10項目,解決先送りコーピング8項目から成る。評定は,当てはまらない~よくあてはまるまでの4段階である。
結果と考察
解離的対処行動尺度の因子分析 尺度の候補項目について3因子を指定し,因子分析(主因子法,Promax回転)を行った。そして因子負荷量が.35未満の項目,当該因子以外への負荷量が.20以上の項目,計21項目を削除し,再度因子分析(主因子法,Promax回転)を行ったところ,想定した3因子構造(切り捨て6項目,距離を置く5項目,割り切り4項目)が得られた。3因子の累積寄与率は47.7%であった。因子負荷及び因子間相関をTable1に示す。
解離的対処行動尺度の信頼性の検討 3因子ごとのα係数は,切り捨て(α=.77),距離を置く(α=.75),割り切り(α=.68)であった。「割り切り」のα係数がやや低いが,項目数が4項目であることを考えると,許容範囲と考えられる。
解離的対処行動尺度の妥当性の検討 解離性体験尺度との相関では,「切り捨て」「距離を置く」「割り切り」のいずれも相関が見られず,病的解離との弁別的妥当性が確認された。次に対人ストレスコーピング尺度との相関では,「切り捨て」及び「距離を置く」はネガティブコーピングと(r= .31,r= .26),「割り切り」は先送りコーピングと(r= .36),弱い正の相関が見られた。対人ストレスコーピングとの関連が見られたことから,本尺度の構成概念妥当性が示された。また,抑鬱や友人関係における否定的影響との関連が指摘されているネガティブコーピングと相関が見られた「切り捨て」及び「距離を置く」は,望ましくない結果をもたらす対処行動と言える。一方,「割り切り」と相関が見られた先送りコーピングは,ストレス緩和や友人関係における満足感の向上との関連が指摘されており(今田, 2000など),肯定的結果をもたらす対処攻略と言える。このように,解離的対処行動は肯定的・否定的両面の結果をもたらす心性であることが示唆された。