The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA14] 4~6歳児のストーリーナラティブの評価指標の検討 

ナラティブ発達評価指標作成に向けての基礎研究

瀬戸淳子1, 秦野悦子2 (1.帝京平成大学, 2.白百合女子大学)

Keywords:ストーリーナラティブ, 評価指標, 幼児期

問   題
 本報告は,ナラティブ発達評価指標作成に向けての一連の基礎研究の一つである。報告者らは幼児期後半になって発達してくる会話やナラティブといった談話能力の発達機序やプロセス,評価の方法論について検討するために,ナラティブに関連する7種の課題を作成し,4歳から6歳児を対象に調査を実施した。その一つがストーリーナラティブ課題であるが,これまでにストーリーナラティブの能力が,5歳から6歳前半にかけて高まる様相が明らかにされた(瀬戸・秦野 2014a, b, 2016a)。本報告では,ストーリーナラティブの発達指標の検討を行うことを目的とする。
方   法
調査参加児:保護者の調査協力の承諾が得られた幼稚園年中児年長児83名(4歳前半4名,4歳後半17名,5歳前半23名,5歳後半14名,6歳前半15名,6歳後半10名)。本報告では課題に集中して取り組めなかった3名を除く80名を対象とした。調査期間:2013年2,3月7月。材料:出版社と著者の許可を得て作成した字のない紙芝居「クレヨンのはしご」(板橋敦子著 ひさかたチャイルド発行)と読み手の質的刺激提示を一定にするために作成した調査用紙芝居CD。手続き:紙芝居のCDを聞かせながら調査者が絵をめくり紙芝居を見せた後,視覚的手がかりが無い状態で紙芝居の内容を話してもらった。すべての発話はICレコーダーに録音した。分析資料:ストーリーナラティブ課題については,すべての発話のトランスクリプトを作成し分析の対象とした。語られた表現内容の構造分析を行うために,物語の筋立てに必要な21の基本述語文(動詞述語文20,形容詞述語文1)を抽出し,子どもが語った基本述語文の出現数をストーリーナラティブ得点(SN得点)とした。また,物語の発端,展開,結末部の3場面中語った場面数,物語に出てくる登場人物6名中の出現数を分析の対象とした。
結果と考察
 SN得点と歴年齢の関係は同じ年齢であってもバラツキが大きいが,四分位を用いて各年齢の中央値とデータの散らばりを見てみると5歳後半(中央値5.5)から6歳前半(中央値13)にSN得点が急に高くなる傾向が示された(図1)。また,語られた登場人物数もSN得点と同様の傾向が見られ,バラツキはあるが5歳後半(中央値1.5)から6歳前半(中央値4)にSN得点が高くなる傾向がみられた(図2)。次に歴年齢とSN得点,登場人物数の対応関係をみると(図3),登場人物を多く語っている子どもほどSN得点が高い傾向が示された。物語を発端,展開,結末部の3場面に分けて語った場面数をみる(図4)と,6歳ではほとんどの子どもがそれぞれの場面について少なくとも1述語文以上の語りがあることが示された。次に歴年齢とSN得点,語られた場面数との対応関係を見ると、SN得点が4~7点と低くても3場面の語りがみられた子どももおり(図5)、年齢の幅も広い。その様な子どものナラティブの質を他の課題とも対応させながら検討をしていきたい。

本研究は平成27~29年度基盤研究C(課題番号15K04572)の助成を受けている。