[PA63] 大学入学者の大学生活への適応プロセスに関する研究(5)
大学の規模による比較
Keywords:新入生, 適応, 大学
目 的
大学新入生の適応プロセスについて,筆者はこれまで,1年次4月期の適応感がそれ以降よりも高すぎ,2年次後期には落ち着くことや,登校拒絶感が入学以前の要因による可能性があることなどを明らかにしてきた。一方,葛城(2012)などは,大学の偏差値によって適応の事情が異なることを論じ,適応プロセスの問題は大学の環境などの要因も吟味しつつ検討する必要があると考えられる。そこで本研究は,大学の規模に注目し,それと大学適応の問題を検討することを目的とした。
方 法
被調査者 近畿圏の2大学(A・B)で心理学関連の科目を受講した大学新入生1218名。なお,A大学は中規模大学の1学科(M:216,F:331),B大学は大規模大学の複数(計15)学部(M:363,F:308)。
心理尺度 学校生活に対する意識の調査項目(二宮, 1990):「学校適応(大学への満足感・信頼感)」と「仲間志向(大学での友人関係の良好さ)」の尺度からなる。回答方式は1~5の5段階評定。
実施時期および手続き 調査は201X~201X+4年にかけて,授業時間の一部を利用して実施。回答を承諾した者には回答を求めた。実施時期は概ね4月中旬および7月下旬。
結 果
各尺度の因子分析 学校適応・仲間志向の各尺度について,両月のデータを込みに因子分析(主因子法,プ回転,Kaiser-Guttman基準)を行った。学校適応は4因子,仲間志向は2因子が得られた。前者は「大学への満足感」「登校拒絶感」「授業への不満」「先生への信頼感」と解釈した。一方,仲間志向は因子間相関などから1因子と判断した。
各適応指標得点の分散分析 各適応指標得点について,大学および時期ごとの平均値・SDを算出し(表参照),各得点を従属変数とした2(大学)×2(時期)の分散分析を行った。仲間志向は時期の主効果(F(1, 815)=7.84, p < .01, η2=.010),授業への不満は大学および時期の主効果(各,F(1, 815)=55.21, p < .001, η2=.063; F(1, 815)=170.17, p < .001, η2=.173),大学への満足感と登校拒絶感は時期の主効果と大学×時期の交互作用(満足感:F(1, 815)=14.63, p < .001, η2=.018; F(1, 815)=7.54, p < .01, η2=.006,拒絶感:F(1, 813)=187.45, p < .001, η2=.187; F(1, 813)=6.54, p < .05, η2=.008,),先生への信頼感は大学,時期の主効果および大学×時期の交互作用(各,F(1, 816)=35.56, p < .001, η2=.042; F(1, 816)=40.52, p < .001, η2=.047; F(1, 816)=4.17, p < .05, η2=.005)が有意であった。交互作用が有意なものは単純主効果の検定を行ったが,両大学で7月の方が登校拒絶感が高く,かつ先生への信頼感が低く,A大学は7月の方が満足度が低かった。また,4・7月でB大学の方が先生への信頼感が低く,7月でA大学の方が大学への満足感が低いが,先生への信頼感は高かった。
考 察
全体的に4月から7月にかけて適応指標が低下傾向にあるが,これは水野(2015)でも示されたとおりである。その他の特徴として大学への満足感はA大学が低くなる一方で,先生への信頼感はB大学の方が低かったことが挙げられる。大学の物理的・心理的環境が狭いことは,大学生活における選択肢を制限するため,大学への満足感は低下していくかもしれない。しかしその一方で,そういう大学の方が教員-学生間の信頼関係を築きやすいと考えられることから,中・小規模大学はそれを強みとした学生対応のあり方が求められよう。
大学新入生の適応プロセスについて,筆者はこれまで,1年次4月期の適応感がそれ以降よりも高すぎ,2年次後期には落ち着くことや,登校拒絶感が入学以前の要因による可能性があることなどを明らかにしてきた。一方,葛城(2012)などは,大学の偏差値によって適応の事情が異なることを論じ,適応プロセスの問題は大学の環境などの要因も吟味しつつ検討する必要があると考えられる。そこで本研究は,大学の規模に注目し,それと大学適応の問題を検討することを目的とした。
方 法
被調査者 近畿圏の2大学(A・B)で心理学関連の科目を受講した大学新入生1218名。なお,A大学は中規模大学の1学科(M:216,F:331),B大学は大規模大学の複数(計15)学部(M:363,F:308)。
心理尺度 学校生活に対する意識の調査項目(二宮, 1990):「学校適応(大学への満足感・信頼感)」と「仲間志向(大学での友人関係の良好さ)」の尺度からなる。回答方式は1~5の5段階評定。
実施時期および手続き 調査は201X~201X+4年にかけて,授業時間の一部を利用して実施。回答を承諾した者には回答を求めた。実施時期は概ね4月中旬および7月下旬。
結 果
各尺度の因子分析 学校適応・仲間志向の各尺度について,両月のデータを込みに因子分析(主因子法,プ回転,Kaiser-Guttman基準)を行った。学校適応は4因子,仲間志向は2因子が得られた。前者は「大学への満足感」「登校拒絶感」「授業への不満」「先生への信頼感」と解釈した。一方,仲間志向は因子間相関などから1因子と判断した。
各適応指標得点の分散分析 各適応指標得点について,大学および時期ごとの平均値・SDを算出し(表参照),各得点を従属変数とした2(大学)×2(時期)の分散分析を行った。仲間志向は時期の主効果(F(1, 815)=7.84, p < .01, η2=.010),授業への不満は大学および時期の主効果(各,F(1, 815)=55.21, p < .001, η2=.063; F(1, 815)=170.17, p < .001, η2=.173),大学への満足感と登校拒絶感は時期の主効果と大学×時期の交互作用(満足感:F(1, 815)=14.63, p < .001, η2=.018; F(1, 815)=7.54, p < .01, η2=.006,拒絶感:F(1, 813)=187.45, p < .001, η2=.187; F(1, 813)=6.54, p < .05, η2=.008,),先生への信頼感は大学,時期の主効果および大学×時期の交互作用(各,F(1, 816)=35.56, p < .001, η2=.042; F(1, 816)=40.52, p < .001, η2=.047; F(1, 816)=4.17, p < .05, η2=.005)が有意であった。交互作用が有意なものは単純主効果の検定を行ったが,両大学で7月の方が登校拒絶感が高く,かつ先生への信頼感が低く,A大学は7月の方が満足度が低かった。また,4・7月でB大学の方が先生への信頼感が低く,7月でA大学の方が大学への満足感が低いが,先生への信頼感は高かった。
考 察
全体的に4月から7月にかけて適応指標が低下傾向にあるが,これは水野(2015)でも示されたとおりである。その他の特徴として大学への満足感はA大学が低くなる一方で,先生への信頼感はB大学の方が低かったことが挙げられる。大学の物理的・心理的環境が狭いことは,大学生活における選択肢を制限するため,大学への満足感は低下していくかもしれない。しかしその一方で,そういう大学の方が教員-学生間の信頼関係を築きやすいと考えられることから,中・小規模大学はそれを強みとした学生対応のあり方が求められよう。