The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA(01-64)

ポスター発表 PA(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PA64] ASD幼児の保育参加における行動アセスメント

インクルーシブな保育実践に向けて(1)

秦野悦子1, 瀬戸淳子2 (1.白百合女子大学, 2.帝京平成大学)

Keywords:ASD幼児, 保育参加, 行動アセスメント

問題と目的
 筆者らは,インクルーシブ保育における活動参加への支援をテーマに,保育現場における臨床発達支援に関するアクションリサーチを継続的に行ってきた。そこでは,明らかな知的遅れはないが保育生活において行動面や対人関係など社会面での適応が難しい3~5歳児クラスの要支援児(調査対象児14,693名中1,691名)の保育の中で見いだされる特性についての実態調査 (秦野ら2009, 2010) を行い, 得られた結果をAmosによる確定的因子分析を行い,「保育活動参加における行動アセスメントシート」(秦野・瀬戸2013) を作成した。
 一方で,保育巡回相談における主訴分析を行った結果,保育者が直面する保育における特別な配慮を必要とする状況は,第1に,要支援児の気持ちが崩れた時に感情のコントロールが難しい,第2に,要支援児とクラスの他の子どもとの関係性に起因して生じるトラブルへの対応が難しい,第3に,要支援児の理解の仕方,興味・関心が,他児と異なるので,保育活動への対応が難しい等がみいだされた(新沼ら2014, 秦野2014)。
 そこで,このアセスメントシートを実際の保育巡回相談に必要に応じて活用した結果,日常の保育における要支援児の特徴を分析的に捉えることができ,保育支援に有効であるという事例検討を重ねてきた(秦野・瀬戸2015, 2016;瀬戸・秦野2015, 2016)。本報告では,「保育活動参加における行動アセスメントシート」により,ASD児の保育活動参加における特徴を捉えることを目的とした。
方   法
対象児:A市において保育巡回相談を実施した要支援児のうち,保育活動の参加や対応が課題とされ,担任がアセスメントシートの記入を行った中で,DQ50以上のASD児(ASD傾向を含む)を分析の対象とした。
手続き:保育巡回相談時に,要支援児の担任により,「保育活動参加における行動アセスメントシート」(6領域31項目)にチェックを依頼した。
倫理的配慮:施設長,担任,保護者の承諾を得た。得られた資料はID番号にて連結可能な匿名化にして個人が特定されないよう倫理的配慮をした。ICRWeb, CITIJapanの倫理規準に準拠した。
結果と考察
1)ASD児の年齢別「保育活動参加」の特徴
 好きな活動のみ関わったり,集団活動からの逸脱等「社会的関係の困難」は,3歳児>4歳児>5歳児と年齢により違いがみられた。「語用論の困難」,「場面適応の困難」は,どの年齢でも高かった。「衝動性」「情動調整の困難」「日常不適応」も時々見られた。
2)ASD児のDQ別「保育活動参加」の特徴
「情動調整の困難」「語用論の困難」「場面適応の困難」はDQが高いほど減少した。「日常不適応」は,年齢やDQによらず,不器用や過敏,視覚優位という要支援児の特性によるものと指摘された。
・本調査については,当該市の発達相談員である大島真理子氏・伊藤美咲氏,元発達相談員である渡邊菜々子氏・新沼優理氏の協力を得た。
・本研究はH26~28年度,文部科学省科学研究費補助金挑戦的萌芽研究 課題番号26590262の助成を受けた。