[PB17] 青年期の自己意識の発達的変化(2)
相互協調的自己観・相互独立的自己観の様相の検討
Keywords:自己意識, 青年期, 自己観
問題と目的
青年期は自己意識の高まる時期である(中間,2012)。また,進路選択に代表される,各自が自己と個別に向き合う課題に直面する時期であり,その中でアイデンティティ形成も進むとされる(Nakama et al., 2016)。文化的自己観の違いが指摘されて久しいが,アイデンティティ発達に関しては日本においても欧米と同様,独立的自己観が関連することが明らかにされている(Sugimura, et al., submitting)。
一方で,高田(1999)によると,青年期には相互協調的自己観が優勢になることが報告されている。これは,上記見解との照合において,矛盾する様相にも思われる。だがそれ以降,青年期における自己観の発達的様相の検討はなされていない。
そこで本研究では,青年期の自己意識の変化について,相互協調的自己観・相互独立的自己観の様相の点から検討を行う。あわせて公的・私的自己意識特性の様相についても検討する。
方 法
小学生1,489名,中学生1,224名,高校生2,985名の計5,698名を対象とした質問紙調査。クラス担任教員に実施を依頼した。調査内容は,児童向け自己意識特性尺度(桜井,1992)より予備調査を経て選出された12項目,相互独立性・相互協調性尺度(Uchida & Kitayama, 2004)20項目など。
結果と考察
自己観の様相 [性別×学校種×自己観]の3要因による得点の差異を検討した(Figure 1)。
分散分析の結果,2次の交互作用が有意であったため(F(2,4887)=7.44,p<.01),単純交互作用の検討,単純・単純主効果の検討を行った。その結果,学校種の単純・単純主効果は男子でのみ有意(小<高,p<.001)であったが,協調的自己観においては男子(小<中<高,p<.001),女子(小・中>高,p<.05)いずれでも有意であった。また,どの学校段階においても独立的自己観(男子>女子),協調的自己観(男子<女子)における性の要因,男子小学生を除き,変数の要因(独立<協調)の単純・単純主効果が有意であった。
自己意識特性の様相 自己意識特性についても同様に検討した(Figure 2)。2次の交互作用が有意であり(F(2,4910)=21.73,p<.001),単純交互作用の検討,単純・単純主効果の検討を行った。
その結果,学校種の単純・単純主効果が有意であり,男子では公的・私的ともに小<中,高,女子では公的は小<高<中,私的は小<中<高であった。性の要因(公的・私的問わず男子<女子),変数の要因(男子は公的<私的,女子は公的>私的)の単純・単純主効果も有意であった。
なお学校種・性別を問わず,私的自己意識は両自己観と有意な正の関係(独立:r=.28~.48;協調:r=.23~.43),公的自己意識は協調的自己観と有意な正の関係(r=.66~.73)を示した(p<.001)。
考察 以上より,中学校段階にかけて男女別々の様相で自己意識が高まるが,いずれも協調的自己観を優勢となる方向と関連すると考えられた。中学校段階において,人間関係の維持を最優先させる形で自律性が高められることが示唆された。
青年期は自己意識の高まる時期である(中間,2012)。また,進路選択に代表される,各自が自己と個別に向き合う課題に直面する時期であり,その中でアイデンティティ形成も進むとされる(Nakama et al., 2016)。文化的自己観の違いが指摘されて久しいが,アイデンティティ発達に関しては日本においても欧米と同様,独立的自己観が関連することが明らかにされている(Sugimura, et al., submitting)。
一方で,高田(1999)によると,青年期には相互協調的自己観が優勢になることが報告されている。これは,上記見解との照合において,矛盾する様相にも思われる。だがそれ以降,青年期における自己観の発達的様相の検討はなされていない。
そこで本研究では,青年期の自己意識の変化について,相互協調的自己観・相互独立的自己観の様相の点から検討を行う。あわせて公的・私的自己意識特性の様相についても検討する。
方 法
小学生1,489名,中学生1,224名,高校生2,985名の計5,698名を対象とした質問紙調査。クラス担任教員に実施を依頼した。調査内容は,児童向け自己意識特性尺度(桜井,1992)より予備調査を経て選出された12項目,相互独立性・相互協調性尺度(Uchida & Kitayama, 2004)20項目など。
結果と考察
自己観の様相 [性別×学校種×自己観]の3要因による得点の差異を検討した(Figure 1)。
分散分析の結果,2次の交互作用が有意であったため(F(2,4887)=7.44,p<.01),単純交互作用の検討,単純・単純主効果の検討を行った。その結果,学校種の単純・単純主効果は男子でのみ有意(小<高,p<.001)であったが,協調的自己観においては男子(小<中<高,p<.001),女子(小・中>高,p<.05)いずれでも有意であった。また,どの学校段階においても独立的自己観(男子>女子),協調的自己観(男子<女子)における性の要因,男子小学生を除き,変数の要因(独立<協調)の単純・単純主効果が有意であった。
自己意識特性の様相 自己意識特性についても同様に検討した(Figure 2)。2次の交互作用が有意であり(F(2,4910)=21.73,p<.001),単純交互作用の検討,単純・単純主効果の検討を行った。
その結果,学校種の単純・単純主効果が有意であり,男子では公的・私的ともに小<中,高,女子では公的は小<高<中,私的は小<中<高であった。性の要因(公的・私的問わず男子<女子),変数の要因(男子は公的<私的,女子は公的>私的)の単純・単純主効果も有意であった。
なお学校種・性別を問わず,私的自己意識は両自己観と有意な正の関係(独立:r=.28~.48;協調:r=.23~.43),公的自己意識は協調的自己観と有意な正の関係(r=.66~.73)を示した(p<.001)。
考察 以上より,中学校段階にかけて男女別々の様相で自己意識が高まるが,いずれも協調的自己観を優勢となる方向と関連すると考えられた。中学校段階において,人間関係の維持を最優先させる形で自律性が高められることが示唆された。