日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB73] 教員・保育者をめざす大学生の自己理解

エゴグラムを自ら読み解くことによる気づきを通して

小嶋玲子1, 河内晴美2 (1.桜花学園大学, 2.元 桜花学園大学)

キーワード:エゴグラム, 自己理解, 大学生

目   的
 筆者らは教員・保育者をめざす大学生の自己理解(1)(2)について,ジョハリの窓を活用して解放の窓(自分)を広げる体験を設定し,自己理解を深める過程を検証した(小嶋・河内2012)1) 2)。本研究は,教員・保育者をめざす大学生にエゴグラムを実施し,結果を自ら読み解くことによって,自分の心や行動の特徴に気づき自己理解を促進する過程と結果を検証する。
方   法
 201X年3年生前期「教育相談」4クラス135人,2クラスずつのRepeat授業,Team Teaching方式による講義。授業の第8回に「交流分析の講義とエゴグラム調査」を実施する。結果について、研究のために発表する旨の了解を学生に得ている。
内   容
 エリック・バーン(Eric Berne)によって創始された 交流分析(Transactional Analysis TA)について講義した。その後,ジャック・デュセイ(Jack Dussey)が考案したエゴグラムの質問紙調査(杉田1987)を行い,各自で得点を整理しプロフィールを作成した。自分のプロフィールを次の3つの視点,①最も高位の自我状態から理解する視点,②最も低位の自我状態から理解する視点,③プロフィールパターンによる特徴から理解する視点を示し,自己理解に資するよう説明した。即ち,「高い自我状態を示している場合の行動の留意点への認識」,「低い自我状態を上げるための意識的な行動」,「プロフィールパターンによる行動の表れ方についての理解」等を資料から読み解くよう促した。これら過程を経て,ワークシートに「自分の心の特徴を把握し理解したうえで,これから心がけたいこと」について自由記述した。
結果・考察
 CP・NP・A・FC・ACの自我状態の内,各学生の高い得点を調べ,その人数を表1に示した。132名中109名(82.6%)が5つの内1つの自我状態が単独で高位得点を示し,他の23名は複数の高位得点を示した。複数の高位得点を含め,5つの自我状態の内,NPが高い学生が85人(64.4%)で,CPあるいはAが高い学生はそれぞれ1名(0.8%)であった。さらに,全員の学生のそれぞれの得点を集計し,平均値のプロフィールを示すと図1になる。次に,全員のプロフィールパターンの特徴を調べ,筆者ら2名で8つのタイプに分類した。結果は,N型(59人44.7%),M型(50人37.9%),へ型(10人7.6%),V型(4人3.0%),逆N型(2人1.5%),W型および右下がり型は0人で,分類不可が(7人5.3%)であった。得点で集計すると本学の学生は,M型を呈するが,タイプ別に集計するとN型がM型を9人上回っている。上記のように分類されたプロフィールパターン別に,自由記述(「気づき」)を分析し,集約した(表2)。
 「気づき」の総数としては表2のa~hである。
 さらに,プロフィールパターン別の「気づき」の内容を分析すると,高い順(5人以上)は,N型ではa・c・e・b,M型はb・a・d・c・f・eで,共通の内容は,a「自分の意見をはっきり言うようにしたい(35人)」,c「ニュースや新聞を読んで社会の出来事に対して自分はどうするか考えたい(17人)」,b「自分の行動を見直していきたい(15人)」,e「計画的に行動したい(15人)」である。今西3)が,「NPは適切な人間関係を築くために非常に重要な役割を果たす」と記すように,エゴグラムの結果を自ら読み解く過程を経て,高いNPの自我状態の表れ方を自覚し,日常生活における留意点や,CPとAを上げるために心がけたいこと等への自己理解が促進されるという示唆を得た。
今後の課題
 エゴグラムを自ら読み解くことでの気づきを今後の行動変容にどのようにつなげていくかが課題である。
参考:1)2)小嶋・河内(2012).日本発達心理学会第25回大会発表論文集p491.p492 3)今西一仁(2010).紙上ゼミナールで学ぶやさしい交流分析 ほんの森p57