[PB82] 子ども同士で感謝と称賛を伝え合うポジティブカードの有効性の検討
対人的感謝と学校適応感に及ぼす影響
Keywords:感謝, 称賛, 学級経営
問題と目的
子どもの問題行動を未然に予防する取り組みとして,応用行動分析学に基づく行動支援が取り組まれている。例えば,ポジティブな行動を教師が称賛することを目的として取り組まれるPraise Student Frequently(Conroy, Sutherland, Snyder, & Al-Hendawi, 2009)や,ポジティブな行動に対して報酬を与えることを目的として取り組まれるSimple Reward Systems, & Incentives(Fantuzzo, Rohrbeck, Hightower, & Work, 1991)などがある。
近年の学校現場でも,子ども同士で行動を称賛し合ったり,教師が子どもに対して称賛したりする取り組みは多く行われており,教師から子どもへの称賛に着目し,研究も行われている(北口,2015)。このように,教師から子どもへの称賛や,子ども同士での称賛や感謝の伝え合いは有効であると推測されるが,これまでの研究で具体的に検証された研究は少ない。
そこで本研究では,他者に対してポジティブな感情である感謝と,他者を尊重し,ポジティブな存在であることを示す称賛を,子ども同士で伝え合うことを目的とした“ポジティブカード”の実践に取り組み,対人的感謝と学校適応感に及ぼす影響を検討する。
方 法
1.対象者
関西の都市部近郊の公立小学校5年生1学級30名を実施群とした。同じ学校の5年生1学級30名を統制群とし,質問紙調査への回答を求めた。
2.実施スケジュール
本研究はTable 1の通り行った。
質問紙調査は実施群,統制群に対して,実践前の9月上旬(pre),実践後の11月下旬(post),フォローアップが実践開始5カ月後のX+1年2月下旬(follow-up)に行った。また本研究においての感謝・称賛はTable 2の意味を用いた。
3.質問紙
感謝感情を生起したかを調べるために対人的感謝尺度(藤原・村上・西村・濱口・櫻井,2014)と,感謝の促進が学校適応に及ぼす影響を検討するために,学校適応感尺度(山田・米沢,2011)を用いた。実施群に対し取り組みを受けた感想について,記述を求めた。
結 果
実施群と統制群の比較の結果,実施群は統制群と比較して,対人的感謝が有意に向上していたことが示された(Table 3)。10%水準ではあったが,follow-upにおいても一定の効果が見出されたことから,ポジティブカードの感謝に対する維持効果が得られたといえる。非侵害的関係においても,実施群は統制群と比較して有意に向上していたことが示された。また,post時点において,実施群は統制群と比較して有意な差が示された。
考 察
本研究は,ポジティブカードを用いて,感謝や称賛を日常的に伝え合うことにより,向社会的行動が促進し,それにより学校適応感における非侵害的関係,友人サポートの向上することが示された。このような開発的な取り組みを行うことは,今後の学校教育において重要な視点である。またその取り組みが,児童生徒の問題行動に着目し,問題に対応するというようなネガティブなものではなく,教師がポジティブな視点を持ちつつ,問題の背景や環境に着目し,その児童生徒本人の内面的変化を図るだけでなく,学校における子どもを取り巻く環境の変化を主体的にはかる取り組みを主体的に導入していくことが,今後も望まれる。
子どもの問題行動を未然に予防する取り組みとして,応用行動分析学に基づく行動支援が取り組まれている。例えば,ポジティブな行動を教師が称賛することを目的として取り組まれるPraise Student Frequently(Conroy, Sutherland, Snyder, & Al-Hendawi, 2009)や,ポジティブな行動に対して報酬を与えることを目的として取り組まれるSimple Reward Systems, & Incentives(Fantuzzo, Rohrbeck, Hightower, & Work, 1991)などがある。
近年の学校現場でも,子ども同士で行動を称賛し合ったり,教師が子どもに対して称賛したりする取り組みは多く行われており,教師から子どもへの称賛に着目し,研究も行われている(北口,2015)。このように,教師から子どもへの称賛や,子ども同士での称賛や感謝の伝え合いは有効であると推測されるが,これまでの研究で具体的に検証された研究は少ない。
そこで本研究では,他者に対してポジティブな感情である感謝と,他者を尊重し,ポジティブな存在であることを示す称賛を,子ども同士で伝え合うことを目的とした“ポジティブカード”の実践に取り組み,対人的感謝と学校適応感に及ぼす影響を検討する。
方 法
1.対象者
関西の都市部近郊の公立小学校5年生1学級30名を実施群とした。同じ学校の5年生1学級30名を統制群とし,質問紙調査への回答を求めた。
2.実施スケジュール
本研究はTable 1の通り行った。
質問紙調査は実施群,統制群に対して,実践前の9月上旬(pre),実践後の11月下旬(post),フォローアップが実践開始5カ月後のX+1年2月下旬(follow-up)に行った。また本研究においての感謝・称賛はTable 2の意味を用いた。
3.質問紙
感謝感情を生起したかを調べるために対人的感謝尺度(藤原・村上・西村・濱口・櫻井,2014)と,感謝の促進が学校適応に及ぼす影響を検討するために,学校適応感尺度(山田・米沢,2011)を用いた。実施群に対し取り組みを受けた感想について,記述を求めた。
結 果
実施群と統制群の比較の結果,実施群は統制群と比較して,対人的感謝が有意に向上していたことが示された(Table 3)。10%水準ではあったが,follow-upにおいても一定の効果が見出されたことから,ポジティブカードの感謝に対する維持効果が得られたといえる。非侵害的関係においても,実施群は統制群と比較して有意に向上していたことが示された。また,post時点において,実施群は統制群と比較して有意な差が示された。
考 察
本研究は,ポジティブカードを用いて,感謝や称賛を日常的に伝え合うことにより,向社会的行動が促進し,それにより学校適応感における非侵害的関係,友人サポートの向上することが示された。このような開発的な取り組みを行うことは,今後の学校教育において重要な視点である。またその取り組みが,児童生徒の問題行動に着目し,問題に対応するというようなネガティブなものではなく,教師がポジティブな視点を持ちつつ,問題の背景や環境に着目し,その児童生徒本人の内面的変化を図るだけでなく,学校における子どもを取り巻く環境の変化を主体的にはかる取り組みを主体的に導入していくことが,今後も望まれる。