The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB81] 持続可能性を意識したチーム学校の構築

学校システム論的組織マネジメント

枝廣和憲 (岡山大学)

Keywords:学校システム論, チーム学校, マネジメント

問題・目的
 文部科学省が1995年にスクールカウンセラー活用調査研究委託事業を実施して,約20年が経過している。そこでは,週4~8時間程度のスクールカウンセリング活動(以下,SC活動と略記)が行われている。ゆえに,スクールカウンセラー(以下,SCと略記)には,教育相談において,短時間かつ有効的なSC活動を求められている。
 また,社会や経済の変化は,子どもや家庭,地域社会にも影響を与えている。学校が抱える課題は,生徒指導上の課題や特別支援教育の充実など,より複雑化・困難化し,心理や福祉など教育以外の高い専門性が求められるような事案も増えてきており,教員だけで対応することが,質的な面でも量的な面でも難しくなってきている(文部科学省中央教育審議会,2015)。そこで,「チーム学校」として,専門性に基づくチーム体制の構築や学校のマネジメント機能の強化が謳われている(チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会,2015)。多職種連携について,同様に多職種で構成される医療現場においては,近年,臨床心理士を中心としたチーム支援が重要であると指摘されている(H. Beinart, P. Kennedy & S. Llewelyn,2009)。学校においても同様に,SCらを中心としたチーム支援体制を構築することが重要である。
 以上をふまえて,本研究は,持続可能性を意識した,「チーム学校」の構築を目指したSCらのSC活動をについて,省察し,「チーム学校」としてのSC活動のモデルの一つとして検討することを目的とした。
方   法
 本研究において,学校組織への介入,ある1学級への介入,当該学級担任および関係者への介入をわけて,全体のチーム学校の構築について言及する。
経   過
【第一期:管理職を含めたチーム支援組織の構築】
 月に一度管理職,養護教諭,SCの三者によるチーム会議を設定し,持続可能性を考慮した校内におけるチーム支援組織の運営について,検討することとなった。チーム会議では,SCおよび養護教諭からの情報共有に基づき,校内全体の課題を把握し,必要な支援チームの構築,全校で共有する会議の設定などについて話し合われた。
【第二期:校内チーム支援組織の構築】
 当該小学校では,全校で課題のある児童についての情報共有を持てる会議体がなかった。そこで,全校で課題のある児童に関して,情報共有等を図るための会議体の設定を試みた。名称は,教育相談委員会とし,月に一度開催した。教育相談委員は各学年から1名および特別支援学級から1名,管理職,養護教諭,SCから編成された。
【第三期:学級におけるチーム支援体制の構築】
 学級は[行動化⇒担任教諭が個別注意する⇒他の児がざわつく⇒影響されて,別の行動化⇒担任教諭の個別注意⇒授業が遅れ,予定が変更される⇒Asp.児などが反応⇒行動化]のような悪循環がみられていた。担任教諭に対して,定期的なコンサルテーションを行い,学級運営(1次的援助サービス)と個別対応(3次的援助サービス)について説明し,担任として,第一に1次的援助サービスである全児童への支援を中心に考えて進めていき,課題のある児童への対応(3次的援助サービス)については,チームの一員であるTTに任せていくようにコンサルテーションをおこなった。結果,担任教諭は,学級運営に専念することができ,学級の状態についても落ち着きを取り戻していった。
【第四期:「チーム学校」の定着】
 当初,SCがリエゾン的な役割を果たし,チーム学校の構築を行ってきたが,徐々に,リエゾン的役割をコーディネーターや教育相談主任に移譲し,編成に関しては管理職が中心に行うようになった。
考   察
 本研究で行った「チーム学校」の構築の背景には,吉川(1999)の学校システム論がある。学校システム論は,家族システム論と比較して,大きな組織=システムを動かすことになる。大きなシステムである学校を動かすには,管理職との協働もしくは管理職をチーム内に引き込むことが最も重要な鍵であった。栗原(2006)でも指摘されているように,学校内でのチーム支援には,教員の特性を生かした「チーム学校」の構築が重要である。