The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC01] 中学生の社会的行動についての研究(106)

「いじめをしたこと」「いじめをうけたこと」の縦断的変化

二宮克美1, 氏家達夫2, 五十嵐敦3, 井上裕光4, 山本ちか5 (1.愛知学院大学, 2.名古屋大学, 3.福島大学, 4.千葉県立保健医療大学, 5.名古屋文理大学短期大学部)

Keywords:中学生, いじめ, 親子

問題と目的
 「児童・生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省発表,平成17~25年度)によれば,「いじめ」は中学1年生で発生認知件数がピークとなっている。また男女別では,男子に多くみられている。
 本研究では,中学1年生,2年生,3年生の3時点で,「いじめをしたこと」(加害経験)と「いじめをうけたこと」(被害経験)をたずねた。これらの経験に関する中学生の縦断的な変化について,主たる結果を報告する。
 同時期に,父親と母親それぞれ別々に,自分の子どもの「いじめ」「いじめられ」の認知もたずねた。父母子3者の縦断データがそろっている結果についても報告する。
方   法
 <調査協力者> 1.中学生の縦断データ:愛知県内と福島県内の中学生で,次の3時点の縦断的調査にすべて回答した生徒。時点1は中学1年2学期(2002年9月),時点2は中学2年2学期(2003年9月),時点3は中学3年2学期(2004年9月)。男子222名,女子299名の合計521名。
 2.父母子(中学生)3者そろった縦断データ:上記の者のうち,同時期に父親と母親がそろって調査に協力してくれた203組(子どもが男子97組,女子106組)。
 <調査項目> 1.中学生への質問項目:「ふだんの行動についてお聞きします。この3ヶ月間に,次のような行動をどのくらいしましたか。あてはまる数字に1つ○をつけてください。」と教示し,全60項目をたずねた。その中に,次の2つの質問項目がある。1.「いじめをしたこと」,2.「いじめをうけたこと」。選択肢は「何度もあった」「数回あった」「一度だけあった」「一度もなかった」の4件法。今回の分析では,「あった」と「なかった」の2件法に回答を変換し用いた。
 2.父親・母親への質問項目:「あなたは,お子さんが次のような行動をこの3ヶ月間に,どの程度していると思いますか。あてはまる数字に1つ○をつけてください。わからない場合,判断できない場合は*に○をつけてください」と教示し,全43項目をたずねた。その中に,次の2つの質問項目がある。1.「いじめに加わったこと」,2.「いじめをうけたこと」。選択肢は「何度もある(と思う)」「数回ある(と思う)」「一度くらいはある」「そんなことはしていない」,「わからない」の5件法。今回の分析では,「あった」と「なかった」「わからない」の3件法に回答を変換し用いた。
結果と考察
1.中学生の縦断データ:
(1)いじめをしたこと(加害経験)3時点ともに「なし」と回答した者が381名(73.1%)で最も多く,男子は146名(65.8%),女子は235名(78.6%)で,女子の方がいじめ加害経験の割合が少ないと言える。逆に3時点で一貫して「あり」と回答した者は9名(男子8名,女子1名)(1.7%)いた。3時点の変化パターンで一番多くみられたのは,中1(あり)⇒中2(なし)⇒中3(なし)で,43名(8.3%)であった。その内訳は男子17名(7.7%),女子26名(8.7%)であった。
(2)いじめをうけたこと(被害経験)3時点ともに「なし」と回答した者が387名(74.3%)で最も多く,男子は157名(70.7%),女子は230名(76.9%)であった。逆に3時点で一貫して「あり」と回答した者は12名(男子8名,女子4名)(2.3%)いた。3時点の変化パターンで一番多くみられたのは,中1(あり)⇒中2(なし)⇒中3(なし)で,52名(10.0%)であった。内訳は男子18名(8.1%),女子34名(11.4%)であった。
 上記の「いじめ」の縦断データに関する結果から,中学1年生で「いじめ」の加害・被害経験が多いことが裏付けられたと言える。
2.父母子(中学生)3者そろった縦断データ:
(1)いじめをしたこと(加害経験)3者が3時点でともに「なし」と回答している組が多く,時点1で145組(71.4%),時点2で110組(54.2%),時点3で126組(62.1%)であった。続いて,子「なし」父「わからない」母「なし」のパターンが多く,時点1で15組(7.4%),時点2で28組(13.8%),時点3で27組(13.3%)であった。父親は,子どものいじめ経験に「わからない」と回答するケースが多かった。
(2)いじめをうけたこと(被害経験)3者が3時点でともに「なし」と回答している組が多く,時点1で82組(40.4%),時点2で87組(42.9%),時点3で94組(46.3%)であった。加害経験と同様,父親の「わからない」と回答するケースが次に続いている。3者ともに「あり」と回答している組は,時点1で11組(5.4%),時点2で7組(3.4%),時点3で5組(2.5%)であった。子どもの「いじめ」(被害経験)を両親がともに認知しているのも,中学1年生の時期であると言える。