The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC02] 中学生の社会的行動についての研究(107)

親の年収と夫婦関係の評価から不適応行動との関連を探る

五十嵐敦1, 氏家達夫2, 二宮克美3, 井上裕光4, 山本ちか5 (1.福島大学, 2.名古屋大学, 3.愛知学院大学, 4.千葉県立保健医療大学, 5.名古屋文理大学短期大学部)

Keywords:中学生, 親の年収, 夫婦関係

目   的
 中学時代の3年間のさまざまな変化は,身近で重要な存在とされる親との関係が注目される。子どもの側の中学生が,親との関係の認知は自身の将来展望と関連する(五十嵐ら,2012)。また,母親による子どもの「問題行動の予兆」認知が学年進行に伴って増加すること(五十嵐ら2015)などが確認されている。しかし,学年進行に伴ってその認知が困難になることも示唆され,親の側の心理的要因や経済的要因なども影響していることが予想される。
 そこで,中学生の親の側の特徴について夫婦間の相互関係の認知や自己価値,経済状況などに着目して,中学生の適応状態などの要因との関連について探索的な分析を加える。
方   法
(1)協力者;愛知県と福島県の中学1年生を3年生になるまで7回の調査を実施した(2,287人が最終調査協力者)。その中で継続して回答が得られ,親のデータ,1回目(W1)・4回目(W2)・7回目(W3)がそろった中学生519人(男225人,女294人)を分析対象とした。なお回答の状況や要因によって人数に違いがある。
(2)分析内容;<親の年収>,<夫婦関係>:配偶者(夫や妻)や一緒に生活しているパートナーとの関係について,満足度と葛藤の程度をそれぞれ3項目で質問した。後者については子どもの進路やしつけについての夫婦間葛藤も質問している。子どもである生徒の要因としては<ストレス>,<問題行動の予兆>,<レジリエンス>や<生活リズム><自己評価>などについては五十嵐ら(2014,15)と同様である。
結   果
 回答のあった年収の状況は父親のデータでは「500万~700万」が33.2%と最も多かった。年収は父母の自己評価や夫婦間満足度と単相関で部分的に正の有意な相関がみられた。また子どもの自己評価(W1)やレジリエンス(相談)と父親の自己評価(W1)の間に弱い正の相関傾向が確認され,母親の自己評価(W1/2)は子どもの各回自己評価と.05水準で有意な正の相関を示した。
 次に,収入500万未満をL群,500万~700万をM群,700万以上をH群に分け,夫婦関係の満足度と葛藤の結果からクラスタ分析によって次の3群を設定した。C1は各回父母ともに満足度の得点が高く葛藤得点が低い「円満群」,C2は満足度と葛藤が拮抗し,母親の葛藤が満足より高い「不満群」,C3は満足度はC1ほど高くなく,葛藤度も低い「中庸群」とした。収入の各群とのクロス集計の結果,各群ともC3が多かったが,C1群ではH群の割合が高かった(χ2=14.665,p<.01)。
 クラスタと子どもの性別との2要因による父母の関係状態について分散分析(反復測定)を行った。子どもの性の有意な主効果が「W1 父親の葛藤」で確認された(F=4.601,p<.05)。年収の有意な主効果は,「母親満足」すべてで確認され(F=7.524~10.766,p<.001),多重比較の結果,W1とW3でL群が他の2群より有意に低く,W2ではL群がH群より有意に低かった。また「W1 父親の葛藤」でも確認され(F=3.592,p<.05),その後の多重比較の結果M群がH群より有意に高かった(p<.05)。
 経済状況や夫婦関係の状態と,子どもの諸要因との関係については一部で示唆された。

科研費・基盤研究(B)(1)14310055(代表 氏家達夫)の補助をうけた