[PC03] 中学生の社会的行動についての研究(108)
自殺念慮の変化と全体的自己価値及び学校適応の関連の検討
Keywords:中学生, 自殺念慮, 全体的自己価値
目 的
本報告では,中学生が自殺について考えたことがあるかどうかの自殺念慮をとりあげ,中学2年生から3年生の間にどのように変化したのかを検討する。また,自殺念慮に関連する要因として,全体的自己価値,学校適応をとりあげ,自殺念慮の変化との関連について検討する。
方 法
1.調査項目 (1)自殺念慮:自殺について考えたことがあるかどうかを4段階評定(何度もあった,数回あった,一度だけあった,一度もなかった)でたずねた。今回は,「あった(一度だけあった~何度もあった)」と「なかった」の2件法に変換して分析を行った。
(2)全体的自己価値:全体的自己価値(5項目):自分に満足しているか,自分が好きであるかなど自分自身全体をどのように評価しているのかを6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。順に6点から1点までの得点を与えた。肯定的に評価しているほど高得点になるよう合計得点を算出した。
(3)学校適応:「学校への前向きな態度(4項目)」,「学習への前向きな態度(7項目)」,「先生との良好な関係(4項目)」,「部活への前向きな態度(3項目)」の4側面について6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。順に6点から1点までの得点を与えた。
2.調査実施時期と調査協力者 自殺の項目についての調査は,中学2年2学期(2003年9月下旬)から,中学3年2学期(2004年9月下旬)までの間に,4回実施した。今回の分析には,中学2年2学期と中学3年2学期のデータを使用した。分析は自殺念慮の項目に2時点とも回答のあった愛知県と福島県の中学生399名(男子172名,女子227名)について行った。
結果及び考察
1.自殺念慮の変化 男子は,中2時点で自殺念慮が「あった」のは16名(9.3%),「なかった」のは156名(90.7%)であった。中2時点で「あった」16名のうち,中3時点でも「あった」のは8名(4.7%),「なかった」のは8名(4.7%)であった。中2時点で「なかった」156名のうち,中3時点でも「なかった」のは144名(83.7%),「あった」のは12名(7.0%)であった。
女子は,中2時点で自殺への考えが「あった」のは49名(21.6%),「なかった」のは178名(78.4%)であった。中2時点で「あった」49名のうち,中3時点でも「あった」のは27名(11.9%),「なかった」のは22名(9.7%)であった。中2時点で「なかった」178名のうち,中3時点でも「なかった」のは153名(67.4%),「あった」のは25名(11.0%)であった。
2.自殺念慮に関連する要因の検討 時点×自殺念慮の変化4群(中2時点「あった・なかった」と中3時点「あった・なかった」の組み合わせ)の分散分析を行った。男子は自殺念慮があった中学生が少数であっため,女子のみ分析を行った。
(1)全体的自己価値との関連:時点間差はみられ,得点は低下していた(F=6.360,p=.012)。自殺念慮の変化については,「中2:あった,中3:あった」群は,中2時点で「なかった」2つの群と比較して得点が低かった(F=14.114,p<.001)。交互作用もみられ(F=7.496,p<.001),「中2:あった,中3:なかった」群は,得点が上昇していた。
(2)学校適応との関連: 「学習への前向きな態度」については,時点間差はみられず,「中2:あった,中3:あった」群は,中2時点で「なかった」2つの群と比較して得点が低かった(F=6.262,p<.001)。交互作用はみられなかった。
「学校への前向きな態度」については,時点間差はみられず,「中2:なかった,中3:なかった」群は,「中2:あった,中3:あった」群と比較して得点が高かった(F=16.428,p<.001)。交互作用はみられなかった。
「部活への前向きな態度」と「先生との良好な関係」については,4群間に差はみられなかった。
3.まとめ 男女とも多くの中学生は,自殺念慮がみられなかった。また中3時点で自殺念慮がなくなった群は,全体的自己価値の得点が上昇するという変化がみられ,「学習への前向きな態度」と「学校生活全般へ前向きな態度」は自殺念慮の有無と関連することが示唆された。
本報告では,中学生が自殺について考えたことがあるかどうかの自殺念慮をとりあげ,中学2年生から3年生の間にどのように変化したのかを検討する。また,自殺念慮に関連する要因として,全体的自己価値,学校適応をとりあげ,自殺念慮の変化との関連について検討する。
方 法
1.調査項目 (1)自殺念慮:自殺について考えたことがあるかどうかを4段階評定(何度もあった,数回あった,一度だけあった,一度もなかった)でたずねた。今回は,「あった(一度だけあった~何度もあった)」と「なかった」の2件法に変換して分析を行った。
(2)全体的自己価値:全体的自己価値(5項目):自分に満足しているか,自分が好きであるかなど自分自身全体をどのように評価しているのかを6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。順に6点から1点までの得点を与えた。肯定的に評価しているほど高得点になるよう合計得点を算出した。
(3)学校適応:「学校への前向きな態度(4項目)」,「学習への前向きな態度(7項目)」,「先生との良好な関係(4項目)」,「部活への前向きな態度(3項目)」の4側面について6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。順に6点から1点までの得点を与えた。
2.調査実施時期と調査協力者 自殺の項目についての調査は,中学2年2学期(2003年9月下旬)から,中学3年2学期(2004年9月下旬)までの間に,4回実施した。今回の分析には,中学2年2学期と中学3年2学期のデータを使用した。分析は自殺念慮の項目に2時点とも回答のあった愛知県と福島県の中学生399名(男子172名,女子227名)について行った。
結果及び考察
1.自殺念慮の変化 男子は,中2時点で自殺念慮が「あった」のは16名(9.3%),「なかった」のは156名(90.7%)であった。中2時点で「あった」16名のうち,中3時点でも「あった」のは8名(4.7%),「なかった」のは8名(4.7%)であった。中2時点で「なかった」156名のうち,中3時点でも「なかった」のは144名(83.7%),「あった」のは12名(7.0%)であった。
女子は,中2時点で自殺への考えが「あった」のは49名(21.6%),「なかった」のは178名(78.4%)であった。中2時点で「あった」49名のうち,中3時点でも「あった」のは27名(11.9%),「なかった」のは22名(9.7%)であった。中2時点で「なかった」178名のうち,中3時点でも「なかった」のは153名(67.4%),「あった」のは25名(11.0%)であった。
2.自殺念慮に関連する要因の検討 時点×自殺念慮の変化4群(中2時点「あった・なかった」と中3時点「あった・なかった」の組み合わせ)の分散分析を行った。男子は自殺念慮があった中学生が少数であっため,女子のみ分析を行った。
(1)全体的自己価値との関連:時点間差はみられ,得点は低下していた(F=6.360,p=.012)。自殺念慮の変化については,「中2:あった,中3:あった」群は,中2時点で「なかった」2つの群と比較して得点が低かった(F=14.114,p<.001)。交互作用もみられ(F=7.496,p<.001),「中2:あった,中3:なかった」群は,得点が上昇していた。
(2)学校適応との関連: 「学習への前向きな態度」については,時点間差はみられず,「中2:あった,中3:あった」群は,中2時点で「なかった」2つの群と比較して得点が低かった(F=6.262,p<.001)。交互作用はみられなかった。
「学校への前向きな態度」については,時点間差はみられず,「中2:なかった,中3:なかった」群は,「中2:あった,中3:あった」群と比較して得点が高かった(F=16.428,p<.001)。交互作用はみられなかった。
「部活への前向きな態度」と「先生との良好な関係」については,4群間に差はみられなかった。
3.まとめ 男女とも多くの中学生は,自殺念慮がみられなかった。また中3時点で自殺念慮がなくなった群は,全体的自己価値の得点が上昇するという変化がみられ,「学習への前向きな態度」と「学校生活全般へ前向きな態度」は自殺念慮の有無と関連することが示唆された。