[PC11] 5歳児の完全主義と気質との関連
唾液中α-アミラーゼ活性を用いたストレス評価からの検討
Keywords:完全主義, 気質, 唾液中αアミラーゼ
目 的
本研究は完全主義と気質との相関関係についてストレス評価の結果も踏まえて検討し,幼児の完全主義について考察するものである。
完全主義に関する研究の多くは小学生あるいは青年期以降を対象としたものであり,幼児を対象としたものはほぼ見当たらない。また,完全主義は心理的不適応との関連を指摘する研究が多いが,精神的健康とポジティブな関係にあることを指摘する研究もあり,その結果は一致しない。そこで,本研究では5歳児を対象として,完全主義と気質との関連について,唾液中α-アミラーゼ活性によるストレス評価を用いた検討を行い,幼児期における完全主義の意味について考察する。
方 法
大阪府下にある私立幼稚園2014年度5歳児クラス108名の養育者に対して幼児用他者評価型完全主義尺度19項目(西元,2015)および気質尺度(CBQ Short Form)94項目(沼田,2006)への評定を依頼した(2015年2月実施)。また,園児に対し酵素分析装置(唾液アミラーゼモニター)を用いて登園後に唾液中α-アミラーゼを測定した(2015年3月に2日連続実施)。
完全主義尺度については3因子構造(「こだわり・心配」「完全願望」「高目標設定」)が確認されているため,因子ごとの合計得点を因子得点として分析に用いた。また,気質尺度については,15の下位尺度(快(低度),微笑みと笑い,抑制のコントロール,知覚的鋭敏性,反応性の低下/なだまりやすさ,注意の焦点化,快(高度),活動性レベル,接近/肯定的な予測,衝動性,不快,怒り/欲求不満,恐れ,かなしさ,内気)で構成され,下位尺度ごとの平均点を下位尺度得点として分析に用いた。唾液中α-アミラーゼ活性については2回の平均値について,30kIU/L未満を低群,61kIU/L以上を高群として分析に用いた。
結果と考察
完全主義因子得点と気質下位尺度得点との相関係数(有意な値のみ)をTable 1に示す。
気質下位尺度の“かなしさ”は,完全主義の3因子それぞれとの相関がみられたが,アミラーゼ高群低群で異なる様相がみられた。また“活動性レベル”においても高群低群で関連の示された完全主義因子が異なっていた。このことは,ストレスの高さによって完全主義の質が異なること,言い換えれば完全主義の意味が異なることを示していると考えられる。また低群のみ,高群のみで特定の気質との関連がみられていたことも含めて,今回の結果は完全主義を考える上で,ストレス耐性を加味した考察が必要であることを示唆するものと考えられる。
※本研究はJSPS科研費(24730552)の助成を受けて実施した研究の一部である。
本研究は完全主義と気質との相関関係についてストレス評価の結果も踏まえて検討し,幼児の完全主義について考察するものである。
完全主義に関する研究の多くは小学生あるいは青年期以降を対象としたものであり,幼児を対象としたものはほぼ見当たらない。また,完全主義は心理的不適応との関連を指摘する研究が多いが,精神的健康とポジティブな関係にあることを指摘する研究もあり,その結果は一致しない。そこで,本研究では5歳児を対象として,完全主義と気質との関連について,唾液中α-アミラーゼ活性によるストレス評価を用いた検討を行い,幼児期における完全主義の意味について考察する。
方 法
大阪府下にある私立幼稚園2014年度5歳児クラス108名の養育者に対して幼児用他者評価型完全主義尺度19項目(西元,2015)および気質尺度(CBQ Short Form)94項目(沼田,2006)への評定を依頼した(2015年2月実施)。また,園児に対し酵素分析装置(唾液アミラーゼモニター)を用いて登園後に唾液中α-アミラーゼを測定した(2015年3月に2日連続実施)。
完全主義尺度については3因子構造(「こだわり・心配」「完全願望」「高目標設定」)が確認されているため,因子ごとの合計得点を因子得点として分析に用いた。また,気質尺度については,15の下位尺度(快(低度),微笑みと笑い,抑制のコントロール,知覚的鋭敏性,反応性の低下/なだまりやすさ,注意の焦点化,快(高度),活動性レベル,接近/肯定的な予測,衝動性,不快,怒り/欲求不満,恐れ,かなしさ,内気)で構成され,下位尺度ごとの平均点を下位尺度得点として分析に用いた。唾液中α-アミラーゼ活性については2回の平均値について,30kIU/L未満を低群,61kIU/L以上を高群として分析に用いた。
結果と考察
完全主義因子得点と気質下位尺度得点との相関係数(有意な値のみ)をTable 1に示す。
気質下位尺度の“かなしさ”は,完全主義の3因子それぞれとの相関がみられたが,アミラーゼ高群低群で異なる様相がみられた。また“活動性レベル”においても高群低群で関連の示された完全主義因子が異なっていた。このことは,ストレスの高さによって完全主義の質が異なること,言い換えれば完全主義の意味が異なることを示していると考えられる。また低群のみ,高群のみで特定の気質との関連がみられていたことも含めて,今回の結果は完全主義を考える上で,ストレス耐性を加味した考察が必要であることを示唆するものと考えられる。
※本研究はJSPS科研費(24730552)の助成を受けて実施した研究の一部である。