[PC54] 女子大学生の教育実習にまつわる不安(1)
ストレッサーおよび不安事項の詳細な検討
キーワード:教育実習, 女子大学生, 不安
問題と目的
教育実習中の不安やストレスについて扱った研究は一定数みられるが,実際のプログラムや心理的介入について扱った研究は殆ど存在しない。
高垣ら(2014)や吉村ら(2014)は,現場における他者とのコミュニケーションが認知や心理の変化に大きな影響を与えていることを見出し,また吉村ら(2015)は面接法からも同様の傾向は支持されるとし,教育実習生への心理的介入の有効性を見出した。本研究では,上記の流れを受け,より効果の高い不安低減プログラムを開発するための知見を得ることを目的とする。そのため,質問紙と面接法を併用し,ストレスと不安の傾向を探ることとする。なお,教育実習にまつわる不安は女性の方が高いといわれていることから,女子大学生を対象とする。
方 法
≪対象者≫
教育実践演習(教職科目)を履修している,教育実習を終えた大学4年生(女子95名)。なお対象者は中学校もしくは高等学校において英語科の教育実習を経験している。
≪質問紙≫
教育実習の前後に,教育実習ストレッサー尺度(坂田ら,1999)を実施した。回答方法は,全33項目について,「全くなかった[0]」から大体いつもあった「[4]」までの5段階で回答を求めるものであった。回答に対して[ ]内の得点が順に与えられた。
≪自由記述≫
教育実習ストレッサー尺度における教育実習前後の得点の理由について,それぞれ考えられることの記述を求めた。
≪半構造化面接≫
より詳細に不安事項の同定と順位付けをするため,半構造化面接を行った。実習後上述の対象者のうち同意を得た4名を対象に,インフォームドコンセントを書面で取り,半構造化面接(約60分×1回)を行った。質問は,「教職に関しての現時点での不安事項」「尺度で拾えていない不安事項等」「教員や生徒とのコミュニケーション」等で構成された。
結 果
教育実習前後における評価得点を対応のあるt検定により比較したところ,教育実習前後に有意に得点が変化した項目はなかった。
自由記述の結果は各項目ごとに類似する内容をまとめ,カテゴリ化していった。全33項目のうち,下位尺度「基本的作業」「実習業務」「対教員」「対児童・生徒」「対実習生」それぞれの領域から1項目ずつ抜粋したものを表1に載せる。
半構造化面接で得られた語りのうち,共通する内容をカテゴリにまとめた。出現したカテゴリは【配属校に関するもの】【生徒との接し方】【従事時間の長さ】【体調面の不安】【教員への気遣い】【教員からの扱われ方】であった。内容はより具体化,明細化しており,個別性が高かった。
考 察
ストレッサー尺度に関していえば,教育実習前後における有意な変化は見られなかった。これは,実習前の教育において既にストレスをある程度緩和できている可能性を想定でき,そのことは自由記述の結果からも示唆されている。
実習後に抱かれる不安はより個別性が高く,このことは,実習後に介入を行う場合には,画一的なものよりも,各人の環境を考慮した個別的な介入がより有効であることを示していると考えられる。今後はこの知見をもとに,教育実習生に対し,よりきめ細やかで効果的な教育プログラムを検討していきたい。
教育実習中の不安やストレスについて扱った研究は一定数みられるが,実際のプログラムや心理的介入について扱った研究は殆ど存在しない。
高垣ら(2014)や吉村ら(2014)は,現場における他者とのコミュニケーションが認知や心理の変化に大きな影響を与えていることを見出し,また吉村ら(2015)は面接法からも同様の傾向は支持されるとし,教育実習生への心理的介入の有効性を見出した。本研究では,上記の流れを受け,より効果の高い不安低減プログラムを開発するための知見を得ることを目的とする。そのため,質問紙と面接法を併用し,ストレスと不安の傾向を探ることとする。なお,教育実習にまつわる不安は女性の方が高いといわれていることから,女子大学生を対象とする。
方 法
≪対象者≫
教育実践演習(教職科目)を履修している,教育実習を終えた大学4年生(女子95名)。なお対象者は中学校もしくは高等学校において英語科の教育実習を経験している。
≪質問紙≫
教育実習の前後に,教育実習ストレッサー尺度(坂田ら,1999)を実施した。回答方法は,全33項目について,「全くなかった[0]」から大体いつもあった「[4]」までの5段階で回答を求めるものであった。回答に対して[ ]内の得点が順に与えられた。
≪自由記述≫
教育実習ストレッサー尺度における教育実習前後の得点の理由について,それぞれ考えられることの記述を求めた。
≪半構造化面接≫
より詳細に不安事項の同定と順位付けをするため,半構造化面接を行った。実習後上述の対象者のうち同意を得た4名を対象に,インフォームドコンセントを書面で取り,半構造化面接(約60分×1回)を行った。質問は,「教職に関しての現時点での不安事項」「尺度で拾えていない不安事項等」「教員や生徒とのコミュニケーション」等で構成された。
結 果
教育実習前後における評価得点を対応のあるt検定により比較したところ,教育実習前後に有意に得点が変化した項目はなかった。
自由記述の結果は各項目ごとに類似する内容をまとめ,カテゴリ化していった。全33項目のうち,下位尺度「基本的作業」「実習業務」「対教員」「対児童・生徒」「対実習生」それぞれの領域から1項目ずつ抜粋したものを表1に載せる。
半構造化面接で得られた語りのうち,共通する内容をカテゴリにまとめた。出現したカテゴリは【配属校に関するもの】【生徒との接し方】【従事時間の長さ】【体調面の不安】【教員への気遣い】【教員からの扱われ方】であった。内容はより具体化,明細化しており,個別性が高かった。
考 察
ストレッサー尺度に関していえば,教育実習前後における有意な変化は見られなかった。これは,実習前の教育において既にストレスをある程度緩和できている可能性を想定でき,そのことは自由記述の結果からも示唆されている。
実習後に抱かれる不安はより個別性が高く,このことは,実習後に介入を行う場合には,画一的なものよりも,各人の環境を考慮した個別的な介入がより有効であることを示していると考えられる。今後はこの知見をもとに,教育実習生に対し,よりきめ細やかで効果的な教育プログラムを検討していきたい。