[PC71] 精神的回復力が登校行動持続要因の保有数を媒介して登校率に及ぼす影響
キーワード:登校行動持続要因, 精神的回復力, 学生相談
問題と目的
加藤(2011)は,女子大生・短大生を対象に登校行動を持続させる要因(以下,登校行動持続要因)と登校回避感情および登校率について検討し,登校行動持続要因の保有数が少ないほど,登校回避感情が高まり登校率が低くなるが,登校回避感情が高い場合でも,持続要因を多く保有していれば登校率が高い傾向にあることを明らかにした。つまり,登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすいといえるだろう。学生支援の立場に立てば,登校行動持続要因の保有数を増加させることは,継続的な登校を促し,学生を早めの対応と適切なケアを望める環境に置くことができるため,不適応の予防策になると考えられる。
そこで,本研究では,登校行動持続要因の保有数および実際の登校率に影響を及ぼす要因を検討すべく,精神的回復力に着目する。精神的回復力は,困難な状況にさらされても精神病理的な状態に陥らない,あるいは回復できる個人の心理的弾力性をさし(小塩ら,2002),ストレス反応の抑制や自尊感情の維持などと関連することが示されている(石毛ら,2005)。大学生の登校行動は本人の自主的な行動であり,ストレスや学業不振などの要因が容易に登校しぶりを起こす(吉武,2010)ことを考えると,精神的回復力が登校同持続要因保有数や登校率に影響を及ぼすことが予想される。そこで本研究では,精神的回復力の高さが登校行動持続要因保有数を介して,実際の登校率に影響を及ぼすという仮説を検証する。
方 法
調査時期と手続き:2015年7月に大学の授業時間の一部を利用して集団実施した。
調査対象者:協力が得られた地方にある私立4年制女子大学および中部地方にある私立4年制大学,国立大学に在籍する学生のうち,回答に不備のなかった376名(男性89名,女性287名)。平均年齢は19.38歳(SD= 0.75)であった。
調査内容:①登校行動持続要因チェックリスト(加藤,2011):40項目5件法,②精神的回復力尺度(小塩ら,2002):「新奇追求」8項目,「感情調整」8項目,「肯定的な未来志向」5項目からなる全21項目5件法,③授業への出席率:授業のある日数を100%としたうちの授業に出ている割合,④登校率:授業のある日数を100%としたうちの授業への出席率と授業に出てはいないが大学にいる割合を加算した割合,について回答を求めた。
結果と考察
登校行動持続要因の保有数と登校率および精神的回復力との関連を検討するために,精神的回復尺度の下位尺度をそれぞれ説明変数,登校行動持続要因保有数を媒介変数,登校率を目的変数とした強制投入法による重回帰分析を行った(Figure 1)。なお,保有数の分析にあたっては〈保有している=1点〉(「あてはまる」「ややあてはまる」)と〈保有していない=0点〉(「どちらでもない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」)に得点を補正した上で,各項目の加算得点を登校行動持続要因の保有数とした。
分析の結果,精神的回復尺度のうち,新奇追求と肯定的な未来志向が登校行動持続要因の保有数を介し,出席率と登校率を高めることが明らかとなった(R2=.05, p< .01; R2=.07, p< .001)。すなわち,精神的回復力の中では,興味関心の多様性を示す新奇追求や将来の見通しは明るいと感じるなどの肯定的な未来志向が高い者ほど,登校行動を多く保有しており,登校率,出席率を高めるといえるだろう。なお,肯定的な未来志向は,保有数を介さずに直接出席率を高めることも示された(β=.13, p< .05)。
(Kato,akiko)
加藤(2011)は,女子大生・短大生を対象に登校行動を持続させる要因(以下,登校行動持続要因)と登校回避感情および登校率について検討し,登校行動持続要因の保有数が少ないほど,登校回避感情が高まり登校率が低くなるが,登校回避感情が高い場合でも,持続要因を多く保有していれば登校率が高い傾向にあることを明らかにした。つまり,登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすいといえるだろう。学生支援の立場に立てば,登校行動持続要因の保有数を増加させることは,継続的な登校を促し,学生を早めの対応と適切なケアを望める環境に置くことができるため,不適応の予防策になると考えられる。
そこで,本研究では,登校行動持続要因の保有数および実際の登校率に影響を及ぼす要因を検討すべく,精神的回復力に着目する。精神的回復力は,困難な状況にさらされても精神病理的な状態に陥らない,あるいは回復できる個人の心理的弾力性をさし(小塩ら,2002),ストレス反応の抑制や自尊感情の維持などと関連することが示されている(石毛ら,2005)。大学生の登校行動は本人の自主的な行動であり,ストレスや学業不振などの要因が容易に登校しぶりを起こす(吉武,2010)ことを考えると,精神的回復力が登校同持続要因保有数や登校率に影響を及ぼすことが予想される。そこで本研究では,精神的回復力の高さが登校行動持続要因保有数を介して,実際の登校率に影響を及ぼすという仮説を検証する。
方 法
調査時期と手続き:2015年7月に大学の授業時間の一部を利用して集団実施した。
調査対象者:協力が得られた地方にある私立4年制女子大学および中部地方にある私立4年制大学,国立大学に在籍する学生のうち,回答に不備のなかった376名(男性89名,女性287名)。平均年齢は19.38歳(SD= 0.75)であった。
調査内容:①登校行動持続要因チェックリスト(加藤,2011):40項目5件法,②精神的回復力尺度(小塩ら,2002):「新奇追求」8項目,「感情調整」8項目,「肯定的な未来志向」5項目からなる全21項目5件法,③授業への出席率:授業のある日数を100%としたうちの授業に出ている割合,④登校率:授業のある日数を100%としたうちの授業への出席率と授業に出てはいないが大学にいる割合を加算した割合,について回答を求めた。
結果と考察
登校行動持続要因の保有数と登校率および精神的回復力との関連を検討するために,精神的回復尺度の下位尺度をそれぞれ説明変数,登校行動持続要因保有数を媒介変数,登校率を目的変数とした強制投入法による重回帰分析を行った(Figure 1)。なお,保有数の分析にあたっては〈保有している=1点〉(「あてはまる」「ややあてはまる」)と〈保有していない=0点〉(「どちらでもない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」)に得点を補正した上で,各項目の加算得点を登校行動持続要因の保有数とした。
分析の結果,精神的回復尺度のうち,新奇追求と肯定的な未来志向が登校行動持続要因の保有数を介し,出席率と登校率を高めることが明らかとなった(R2=.05, p< .01; R2=.07, p< .001)。すなわち,精神的回復力の中では,興味関心の多様性を示す新奇追求や将来の見通しは明るいと感じるなどの肯定的な未来志向が高い者ほど,登校行動を多く保有しており,登校率,出席率を高めるといえるだろう。なお,肯定的な未来志向は,保有数を介さずに直接出席率を高めることも示された(β=.13, p< .05)。
(Kato,akiko)