[PC72] スクールカウンセラーに関する事前学習と演習での相互作用効果の検討
キーワード:スクールカウンセラー, 模擬ケース会議, 協働
問題と目的
前回の教員集団・スクールカウンセラー(以下SC)・スクールソーシャルワーカー(以下SSW)による模擬ケース会議の教材(荊木・森田・鈴木,2015)開発では,学生の異職種への素朴概念を解消するのは困難であった。
従って本研究では,解消手法を探索するために,SCの業務領域の事前学習が後の養護教諭養成課程学生の異職種理解にどのように影響するのかを検討した。
方 法
対象:SC事前学習有群14名・無群18名
時期:有群;2015年7月,無群;2016年1月
実施講義:教職関連科目での全15回の内,最後3回を協働単元とした。前段階で調査について説明し,SC事前学習有群では,SCの校内連携の役割として,クライエントの置かれている状況を判断する業務や,ケース会議において管理職が医療機関や教育センターへ連絡を入れる状況が学習された。SC事前学習無群では,SCを校内支援者として紹介した。
実施方法:A)1回目は,情報カード実習(柳原,1976)により,中学2年女子のリストカット事例による模擬ケース会議を行った。5人班を作り,中学校の養護教諭,担任,校長,SC,SSWに役割を振った。B)ケース会議の説明を記した指示書,各役割に対し6枚の情報カード,各自の専門性を書いた役割カードを渡し,口頭のやり取りを指示した。C)まとめた情報をカンファレンスシート(大阪府教育委員会,2006)に記入し,支援計画を立てた。D)2・3回目は,各班が「アセスメントの結果明らかになったこと」「確認すべきこと」「長期的な支援計画」「短期的な支援計画」「課題にあった役割分担」を発表した。E)①ケース会議前,②1回目終了後,③発表終了後に養護教諭,担任,管理職,SC,SSWの専門知識や支援を質問し,自由記述で回答を求めた(以下丸数字で回数を記述)。
分析方法:a)3回の専門性理解についてテキスト化し,教材作成時に各専門領域として想定した部分と,受講生が考えた部分を分けて,キーワードを書き出した。b)各回でのキーワードの頻出度数を累積で換算した。無回答は,回毎の換算とした。c)回毎に頻出度数を合計し,SC事前学習有群とSC事前学習無群とに分けて回毎にχ2検定,度数の少ないものは,直接確率検定にて検討した。
結果と考察
SC事前学習有群での専門知識や支援は,生徒の感想からSCの専門知識や支援を概ね理解した感想が記述された。有意な差が見られたものは,管理職での,②③の「警察との連携や提案」,SCでの③の「A子の置かれている状況を判断」,SSWでの②③の「会議運営」が多かった。SC事前学習無群の記述が多かった専門領域は,養護教諭での③の「治療」,「居場所づくり」,担任での②の「校内連携」,SCでの③の「面接」であった(いずれもp<.05)。模擬ケース会議前である①の時点では,両群に差は見られなかった。
これらの結果から,SC事前学習有群の模擬ケース会議前のSC理解は,模擬ケース会議を体験する中で,協働を行う上での各役割が意識化され,これらの記述が増えたと考えられた。一方SC事前学習無群は,多職種での連携について意識化が難しく,模擬ケース会議の学習過程のなかで,個々の専門職に対する素朴概念としての専門領域が意識されたと考えられた。
本差異は学習量の差とも考えられるが,多職種連携理解には,知識理解と演習の両方が必要であり,より充実した各専門職の役割や専門性等の学習も含めたカリキュラムが必要であると考えられた。
引用文献
荊木まき子・森田英嗣・鈴木 薫(2015).多職種連携教育における「模擬ケース会議」の可能性―教員養成課程における可能性― 大阪教育大学紀要Ⅳ教育科学,64,231-252.
前回の教員集団・スクールカウンセラー(以下SC)・スクールソーシャルワーカー(以下SSW)による模擬ケース会議の教材(荊木・森田・鈴木,2015)開発では,学生の異職種への素朴概念を解消するのは困難であった。
従って本研究では,解消手法を探索するために,SCの業務領域の事前学習が後の養護教諭養成課程学生の異職種理解にどのように影響するのかを検討した。
方 法
対象:SC事前学習有群14名・無群18名
時期:有群;2015年7月,無群;2016年1月
実施講義:教職関連科目での全15回の内,最後3回を協働単元とした。前段階で調査について説明し,SC事前学習有群では,SCの校内連携の役割として,クライエントの置かれている状況を判断する業務や,ケース会議において管理職が医療機関や教育センターへ連絡を入れる状況が学習された。SC事前学習無群では,SCを校内支援者として紹介した。
実施方法:A)1回目は,情報カード実習(柳原,1976)により,中学2年女子のリストカット事例による模擬ケース会議を行った。5人班を作り,中学校の養護教諭,担任,校長,SC,SSWに役割を振った。B)ケース会議の説明を記した指示書,各役割に対し6枚の情報カード,各自の専門性を書いた役割カードを渡し,口頭のやり取りを指示した。C)まとめた情報をカンファレンスシート(大阪府教育委員会,2006)に記入し,支援計画を立てた。D)2・3回目は,各班が「アセスメントの結果明らかになったこと」「確認すべきこと」「長期的な支援計画」「短期的な支援計画」「課題にあった役割分担」を発表した。E)①ケース会議前,②1回目終了後,③発表終了後に養護教諭,担任,管理職,SC,SSWの専門知識や支援を質問し,自由記述で回答を求めた(以下丸数字で回数を記述)。
分析方法:a)3回の専門性理解についてテキスト化し,教材作成時に各専門領域として想定した部分と,受講生が考えた部分を分けて,キーワードを書き出した。b)各回でのキーワードの頻出度数を累積で換算した。無回答は,回毎の換算とした。c)回毎に頻出度数を合計し,SC事前学習有群とSC事前学習無群とに分けて回毎にχ2検定,度数の少ないものは,直接確率検定にて検討した。
結果と考察
SC事前学習有群での専門知識や支援は,生徒の感想からSCの専門知識や支援を概ね理解した感想が記述された。有意な差が見られたものは,管理職での,②③の「警察との連携や提案」,SCでの③の「A子の置かれている状況を判断」,SSWでの②③の「会議運営」が多かった。SC事前学習無群の記述が多かった専門領域は,養護教諭での③の「治療」,「居場所づくり」,担任での②の「校内連携」,SCでの③の「面接」であった(いずれもp<.05)。模擬ケース会議前である①の時点では,両群に差は見られなかった。
これらの結果から,SC事前学習有群の模擬ケース会議前のSC理解は,模擬ケース会議を体験する中で,協働を行う上での各役割が意識化され,これらの記述が増えたと考えられた。一方SC事前学習無群は,多職種での連携について意識化が難しく,模擬ケース会議の学習過程のなかで,個々の専門職に対する素朴概念としての専門領域が意識されたと考えられた。
本差異は学習量の差とも考えられるが,多職種連携理解には,知識理解と演習の両方が必要であり,より充実した各専門職の役割や専門性等の学習も含めたカリキュラムが必要であると考えられた。
引用文献
荊木まき子・森田英嗣・鈴木 薫(2015).多職種連携教育における「模擬ケース会議」の可能性―教員養成課程における可能性― 大阪教育大学紀要Ⅳ教育科学,64,231-252.