[PC83] 乳児期の「聞く力」とは
保育者の考える教育評価から考える
キーワード:乳児, 聞く力, 評価指標
問題と目的
幼児期の教育においては,遊びを通して総合的に学習が行われるため,学習内容が見えにくい状況がある。また,この時期の言葉の教育は,「聞くこと」よりも「話すこと」に力がそそがれており,「話すこと」の研究は多いが,「聞くこと」に関する知見は少ない。しかし,保育の現場では「話すこと」ができない子どもよりも「聞くこと」ができない子どもに注目が集まっている。岡山市保育協議会(2013)の研究報告書では,保育者の振り返りの中から問題として浮かび上がってくるのは,コミュニケーション能力の中でも,“受信する力”であると報告している。言いかえれば,「聞く力」ということであろう。その中では,保育所保育指針の中から言葉を抜き出して,指標づくりを試みている。しかしながら,指針の中の文言は抽象的なものも多く,どのようなコンピテンスから構成されているかも定かではない。保育者が考える「聞く力」とはどのようなものなのだろうか。本研究では,①保育者自身が行う評価であること,②子どもの遊びを評価すること,③子どもの行動項目で指標が作成されていることから鑑み米国のDRDP(Desired Results Developmental Profile)2010の指標を用いて,保育者の考える「聞く力」について一考しようとするものである。なお本報告は乳児版の報告とする。
方 法
被験者 2014年度のO市の保育研究会に参加した保育者16名
材料 DRDP(2010)Infant/Toddlerを用いた。Infant/Toddler版は生後~36か月児を対象とした指標である。内容は,自己と社会性の領域(SSD)が13項目,言葉の領域(LLD)が6項目,認知の領域(COG)11項目,運動と知覚の領域(MPD)が4項目,健康領域(HLTH)が1項目の,5領域35項目から構成されている。発達の水準は5段階から6段階の水準が設けられている。
手続き 調査に先立ち,子どもの「聞けない状況」のエピソード記録を6回提出してもらった。エピソード記録は,乳児期(3歳未満児)と幼児期(3歳以上)のグループに分かれて,子どもの姿や,自分が行った援助についての話し合いを行う材料とし,子どもの「聞く力」に対して共通のイメージを浮き彫りにする作業に約半年かけた。その後,DRDP(2010)の項目を示し,「聞く力」において必要だと思われる項目について①当てはまる,②当てはまらない,③どちらともいえないの3択を行った。まず,個人での投票を行い,9票以上獲得した項目を「聞く力」として抽出した。その後,7票,もしくは8票の項目については,話し合いを経て再投票を行い抽出した。
結果と考察
保育者は「聞く力」について必要な能力は,自己と社会性,言葉,認知の3領域にまたがると判断した(Table 1)。SSDから7項目,LLDから5項目,COGから3項目である。保育者は「聞く力」を発側面からとらえていることが示された。今後は,子どもの「聞く力」の個人差を測定できるかについて検討していく予定である。
本研究はJSPS科研費26381069の助成を受けて行ったものである。
幼児期の教育においては,遊びを通して総合的に学習が行われるため,学習内容が見えにくい状況がある。また,この時期の言葉の教育は,「聞くこと」よりも「話すこと」に力がそそがれており,「話すこと」の研究は多いが,「聞くこと」に関する知見は少ない。しかし,保育の現場では「話すこと」ができない子どもよりも「聞くこと」ができない子どもに注目が集まっている。岡山市保育協議会(2013)の研究報告書では,保育者の振り返りの中から問題として浮かび上がってくるのは,コミュニケーション能力の中でも,“受信する力”であると報告している。言いかえれば,「聞く力」ということであろう。その中では,保育所保育指針の中から言葉を抜き出して,指標づくりを試みている。しかしながら,指針の中の文言は抽象的なものも多く,どのようなコンピテンスから構成されているかも定かではない。保育者が考える「聞く力」とはどのようなものなのだろうか。本研究では,①保育者自身が行う評価であること,②子どもの遊びを評価すること,③子どもの行動項目で指標が作成されていることから鑑み米国のDRDP(Desired Results Developmental Profile)2010の指標を用いて,保育者の考える「聞く力」について一考しようとするものである。なお本報告は乳児版の報告とする。
方 法
被験者 2014年度のO市の保育研究会に参加した保育者16名
材料 DRDP(2010)Infant/Toddlerを用いた。Infant/Toddler版は生後~36か月児を対象とした指標である。内容は,自己と社会性の領域(SSD)が13項目,言葉の領域(LLD)が6項目,認知の領域(COG)11項目,運動と知覚の領域(MPD)が4項目,健康領域(HLTH)が1項目の,5領域35項目から構成されている。発達の水準は5段階から6段階の水準が設けられている。
手続き 調査に先立ち,子どもの「聞けない状況」のエピソード記録を6回提出してもらった。エピソード記録は,乳児期(3歳未満児)と幼児期(3歳以上)のグループに分かれて,子どもの姿や,自分が行った援助についての話し合いを行う材料とし,子どもの「聞く力」に対して共通のイメージを浮き彫りにする作業に約半年かけた。その後,DRDP(2010)の項目を示し,「聞く力」において必要だと思われる項目について①当てはまる,②当てはまらない,③どちらともいえないの3択を行った。まず,個人での投票を行い,9票以上獲得した項目を「聞く力」として抽出した。その後,7票,もしくは8票の項目については,話し合いを経て再投票を行い抽出した。
結果と考察
保育者は「聞く力」について必要な能力は,自己と社会性,言葉,認知の3領域にまたがると判断した(Table 1)。SSDから7項目,LLDから5項目,COGから3項目である。保育者は「聞く力」を発側面からとらえていることが示された。今後は,子どもの「聞く力」の個人差を測定できるかについて検討していく予定である。
本研究はJSPS科研費26381069の助成を受けて行ったものである。