[PD02] 青年期用価値とコミットメント尺度の研究(2)
下位尺度得点のパターンから見た各世代の特徴
Keywords:アクセプタンス&コミットメントセラピー, 価値, 世代間比較
目 的
研究(1)で作成された青年期用価値とコミットメント尺度(Value Of Young AGE scale; VOYAGE)の基礎的資料を得るため,各世代の特徴について,下位尺度の得点パターンから検討する。
方 法
調査対象者 研究(1)と同じ中学生559名,高校生176名,大学生153名の計888名
調査内容 研究(1)で作成されたVOYAGE14項目[“価値の明確化とコミットメント”(価値)9項目,“回避の持続”(回避)5項目]
手続き 中学生・高校生は協力の得られた学校にて帰りの会等の時間帯に,大学生は大学の授業終了後,質問紙への回答を求めた。いずれも回答は任意であった。
結果と考察
VOYAGE下位尺度の得点パターンの類似性でグルーピングするため,潜在プロファイル分析を行った。分析にはHAD15.006(清水,2016)とMplus7.4(Muthén & Muthén,1998-2016)を用いた。
情報量基準(BIC),エントロピー,各潜在クラスへの所属確率を総合的に検討した結果,潜在クラス数は4が最も妥当と判断された(fig.参照)。クラス数4でのエントロピーは.79,各潜在クラスへの所属確率は85.4-91.1%であった。
各クラスの特徴を検討するため,各下位尺度得点を従属変数,潜在クラスを独立変数とする1要因分散分析を行ったところ,いずれも主効果が有意であった(価値:F(3,884)=28.70,偏η2=.09,回避:F(3,884)=2226.88,偏η2=.88,ps<.05)。Holm法による多重比較の結果,価値ではクラス1>クラス2,クラス3,クラス4であった(Hedges’s g=.13-.96,ps<.05),回避ではクラス1<クラス2<クラス3<クラス4(ps<.05,g=3.21-10.71)であった。よって,クラス1(n=343,38.6%)は価値高・回避低,クラス2(n=377,42.5%)は価値平均・回避やや低,クラス3(n=142,16.0%)は価値平均・回避やや高,クラス4(n=26,2.93%)は価値平均・回避高のクラスと解釈できる。
“価値の明確化とコミットメント”はクラス2~4で差異が示されず,クラス1との差の効果量も大きくない一方,“回避の持続”は各クラス間の差が有意で効果量も大きかった。よって今回得られた4クラスは,特に回避の持続の違いで特徴づけられているといえる。中学生~大学生は,発達段階としてアイデンティティの形成が中心課題であるため(Erikson, 1959),自身の価値の明確化とコミットメントは概ね強く自覚される一方,それらは形成途上であるために,挫折的体験による回避的行動の取りやすさの違いが,個人間で顕著なのかもしれない。
続いて,各クラスの世代ごとの違いを検討するため,各クラスに所属する可能性が高い各世代の人数について,カイ二乗検定を行った。その結果,人数の偏りが有意であり(χ2(6)=14.90,p<.05 Cramer's V=.092),各度数の期待値に対して,中学生のクラス1は多く,また高校生のクラス1が少なく,クラス3が多かった。中学生は主観的に,自分が大事にしたい価値は明確であり,その価値に沿った行動から回避していないと思っている一方,高校生はそのような自覚のある生徒の割合が減り,回避的な行動を継続的に取る割合が増えるようである。高校進学における将来を意識した選択や,高校受験の体験が,こういった世代間の違いに影響しているのかもしれず,このような世代間の差の形成要因の検討が今後の課題である。
本研究は,日本学術振興会科学研究費助成事業の助成(課題番号26380875)を受けて行われた。
研究(1)で作成された青年期用価値とコミットメント尺度(Value Of Young AGE scale; VOYAGE)の基礎的資料を得るため,各世代の特徴について,下位尺度の得点パターンから検討する。
方 法
調査対象者 研究(1)と同じ中学生559名,高校生176名,大学生153名の計888名
調査内容 研究(1)で作成されたVOYAGE14項目[“価値の明確化とコミットメント”(価値)9項目,“回避の持続”(回避)5項目]
手続き 中学生・高校生は協力の得られた学校にて帰りの会等の時間帯に,大学生は大学の授業終了後,質問紙への回答を求めた。いずれも回答は任意であった。
結果と考察
VOYAGE下位尺度の得点パターンの類似性でグルーピングするため,潜在プロファイル分析を行った。分析にはHAD15.006(清水,2016)とMplus7.4(Muthén & Muthén,1998-2016)を用いた。
情報量基準(BIC),エントロピー,各潜在クラスへの所属確率を総合的に検討した結果,潜在クラス数は4が最も妥当と判断された(fig.参照)。クラス数4でのエントロピーは.79,各潜在クラスへの所属確率は85.4-91.1%であった。
各クラスの特徴を検討するため,各下位尺度得点を従属変数,潜在クラスを独立変数とする1要因分散分析を行ったところ,いずれも主効果が有意であった(価値:F(3,884)=28.70,偏η2=.09,回避:F(3,884)=2226.88,偏η2=.88,ps<.05)。Holm法による多重比較の結果,価値ではクラス1>クラス2,クラス3,クラス4であった(Hedges’s g=.13-.96,ps<.05),回避ではクラス1<クラス2<クラス3<クラス4(ps<.05,g=3.21-10.71)であった。よって,クラス1(n=343,38.6%)は価値高・回避低,クラス2(n=377,42.5%)は価値平均・回避やや低,クラス3(n=142,16.0%)は価値平均・回避やや高,クラス4(n=26,2.93%)は価値平均・回避高のクラスと解釈できる。
“価値の明確化とコミットメント”はクラス2~4で差異が示されず,クラス1との差の効果量も大きくない一方,“回避の持続”は各クラス間の差が有意で効果量も大きかった。よって今回得られた4クラスは,特に回避の持続の違いで特徴づけられているといえる。中学生~大学生は,発達段階としてアイデンティティの形成が中心課題であるため(Erikson, 1959),自身の価値の明確化とコミットメントは概ね強く自覚される一方,それらは形成途上であるために,挫折的体験による回避的行動の取りやすさの違いが,個人間で顕著なのかもしれない。
続いて,各クラスの世代ごとの違いを検討するため,各クラスに所属する可能性が高い各世代の人数について,カイ二乗検定を行った。その結果,人数の偏りが有意であり(χ2(6)=14.90,p<.05 Cramer's V=.092),各度数の期待値に対して,中学生のクラス1は多く,また高校生のクラス1が少なく,クラス3が多かった。中学生は主観的に,自分が大事にしたい価値は明確であり,その価値に沿った行動から回避していないと思っている一方,高校生はそのような自覚のある生徒の割合が減り,回避的な行動を継続的に取る割合が増えるようである。高校進学における将来を意識した選択や,高校受験の体験が,こういった世代間の違いに影響しているのかもしれず,このような世代間の差の形成要因の検討が今後の課題である。
本研究は,日本学術振興会科学研究費助成事業の助成(課題番号26380875)を受けて行われた。