[PD03] 父親の養育性と役割取得を促す支援プログラムの試み
Keywords:父親, 養育性と役割取得, 支援プログラム
目 的
今日,父親の子育てへの参与が重要な課題となっている。父親の育児への参与は,母親の不安軽減だけでなく,子どもの発達にも重要な影響を与える。
筆者は,これまで共同研究者と共に,父親の家事・育児参加を促す要因について検討してきた。筆者らの調査研究では,父親の養育性及び親役割意識,育児参加の背景には,父親の被養育体験と愛着,養育体験,夫婦関係が影響していた。すなわち,父親自身の親との良好な関係が父親の養育性(子ども好き,育児への自信)に関連し,それを媒介変数となって親役割に影響を与えること(南・伊藤・及川・寺見,2016a),父親自身の親との良好な関係は父親の安定的愛着,育児への自信,夫婦関係に影響し,それらが媒介変数となって育児行動に影響を与えることが見出された(寺見・伊藤・及川・南,2016b)。また,このことはインタビューによる質的な検討においても同様であった。そこで,本研究は,この調査結果を踏まえ,父親の養育性と親役割意識,育児に対する意識や行動を高める支援プログラムの構成とその効果並びにプログラムの妥当性を検討することを目的とした。
方 法
対象:H県A市にあるNPO法人の子育てひろばを利用している父子11組。本研究の実施に際しては,プログラム内容と参加者への写真撮影及びアンケート,インタビュー実施に関して大学の倫理審査を受け,NPO法人と参加者から研究協力承諾書をもらった。
方法:1.プログラムとワークシートの作成:プログラムは,全5回シリーズで,内容は,各回「遊びの達人講座」「子育てワークショップ」「子育ての知恵講座」の3部構成にし,内容は表1のように編成した(表1)。また,ワークシートは,調査研究で用いたアンケートの結果から抽出された因子群をもとに,①育児ストレス,②子どもの存在,③妊娠出産,④自分自身について,の4枚を作成し,調査の結果で関連が見られた項目を参考に,⑤エゴグラム,⑥親子関係と幼少期,⑦家族画,⑧育児サポート,⑨エコマップ,⑩未来図,の10枚を作成した。いずれも自己診断する形式にした。ワークシート等の作業やおしゃべりタイムの時間は,保育士と学生が子どもの育児にあたった。 2.事前アンケートの実施:子どもの年齢,健康状態,特性,参加の動機,講座への希望,今困っていること,父親の状況等の記入を求めた。3.事後のアンケートの実施:各回終了後,振り返りシートを用意し,自己診断と振り返りを記入してもらった。また,5回終了後,参加後の変化について記入を求めた。
結 果
父親の年齢は平均31.36歳,子どもは平均2歳2か月(女児7名:男児6名)であった。参加動機は,子育ての関わり方を知りたい,妻に時間を作りたい・サポートしたい,子どもの才能の目を見つけたい,遊びを教えてほしい・レパートリーを増やしたい等であった。困っていることとしては,子どもが離れない,遊ばせる場所がない,言うことを聞かない,妻の負担が大きいので手伝うとペースを狂わせてしまう等があげられていた。
ワークシートでは,全体的には充実感が高く,拘束感や当惑感は低かった。しかし,育児に参加している父親ほど育児の充実感とともに拘束感・当惑感を感じていた。毎回の講座終了後のアンケートでは,子どもとの楽しみの共有や興味の共有,動きの共有,子どもに対する誘導とモデルの提示,子どもの理解とかかわり,子どもの世話,子育ての知識技術の獲得について,自己変化を尋ねた。その結果,楽しみの共有や誘導,モデルについては高く評価していたが,子どもとの興味の共有や興味に応じた動き,子どもの動きの共有,コミュニケーションの変化についての評価が低い傾向にあった。
事後アンケートでは,参考になったこととして,地域のつながりや家族以外の人との接触の大切さ,子どもの成長の理解,遊び方,接し方,母親と同じことをしなくてもよいこと,親自身の人間を磨くことが子育てにつながる等が挙げられた。今後の参加については,90%の父親が参加したいと回答した反面,父親としての意識や講座を通しての自己変化は特になかったと答えていた。
考 察
支援プログラムは,父親としての養育性の獲得には成果が見られたものの,役割意識の取得には,プログラム内容のさらなる検討を要す。
本研究は平成24年度科学研究費基盤研究C課題番号25350953(研究代表者寺見陽子)の一部である。
今日,父親の子育てへの参与が重要な課題となっている。父親の育児への参与は,母親の不安軽減だけでなく,子どもの発達にも重要な影響を与える。
筆者は,これまで共同研究者と共に,父親の家事・育児参加を促す要因について検討してきた。筆者らの調査研究では,父親の養育性及び親役割意識,育児参加の背景には,父親の被養育体験と愛着,養育体験,夫婦関係が影響していた。すなわち,父親自身の親との良好な関係が父親の養育性(子ども好き,育児への自信)に関連し,それを媒介変数となって親役割に影響を与えること(南・伊藤・及川・寺見,2016a),父親自身の親との良好な関係は父親の安定的愛着,育児への自信,夫婦関係に影響し,それらが媒介変数となって育児行動に影響を与えることが見出された(寺見・伊藤・及川・南,2016b)。また,このことはインタビューによる質的な検討においても同様であった。そこで,本研究は,この調査結果を踏まえ,父親の養育性と親役割意識,育児に対する意識や行動を高める支援プログラムの構成とその効果並びにプログラムの妥当性を検討することを目的とした。
方 法
対象:H県A市にあるNPO法人の子育てひろばを利用している父子11組。本研究の実施に際しては,プログラム内容と参加者への写真撮影及びアンケート,インタビュー実施に関して大学の倫理審査を受け,NPO法人と参加者から研究協力承諾書をもらった。
方法:1.プログラムとワークシートの作成:プログラムは,全5回シリーズで,内容は,各回「遊びの達人講座」「子育てワークショップ」「子育ての知恵講座」の3部構成にし,内容は表1のように編成した(表1)。また,ワークシートは,調査研究で用いたアンケートの結果から抽出された因子群をもとに,①育児ストレス,②子どもの存在,③妊娠出産,④自分自身について,の4枚を作成し,調査の結果で関連が見られた項目を参考に,⑤エゴグラム,⑥親子関係と幼少期,⑦家族画,⑧育児サポート,⑨エコマップ,⑩未来図,の10枚を作成した。いずれも自己診断する形式にした。ワークシート等の作業やおしゃべりタイムの時間は,保育士と学生が子どもの育児にあたった。 2.事前アンケートの実施:子どもの年齢,健康状態,特性,参加の動機,講座への希望,今困っていること,父親の状況等の記入を求めた。3.事後のアンケートの実施:各回終了後,振り返りシートを用意し,自己診断と振り返りを記入してもらった。また,5回終了後,参加後の変化について記入を求めた。
結 果
父親の年齢は平均31.36歳,子どもは平均2歳2か月(女児7名:男児6名)であった。参加動機は,子育ての関わり方を知りたい,妻に時間を作りたい・サポートしたい,子どもの才能の目を見つけたい,遊びを教えてほしい・レパートリーを増やしたい等であった。困っていることとしては,子どもが離れない,遊ばせる場所がない,言うことを聞かない,妻の負担が大きいので手伝うとペースを狂わせてしまう等があげられていた。
ワークシートでは,全体的には充実感が高く,拘束感や当惑感は低かった。しかし,育児に参加している父親ほど育児の充実感とともに拘束感・当惑感を感じていた。毎回の講座終了後のアンケートでは,子どもとの楽しみの共有や興味の共有,動きの共有,子どもに対する誘導とモデルの提示,子どもの理解とかかわり,子どもの世話,子育ての知識技術の獲得について,自己変化を尋ねた。その結果,楽しみの共有や誘導,モデルについては高く評価していたが,子どもとの興味の共有や興味に応じた動き,子どもの動きの共有,コミュニケーションの変化についての評価が低い傾向にあった。
事後アンケートでは,参考になったこととして,地域のつながりや家族以外の人との接触の大切さ,子どもの成長の理解,遊び方,接し方,母親と同じことをしなくてもよいこと,親自身の人間を磨くことが子育てにつながる等が挙げられた。今後の参加については,90%の父親が参加したいと回答した反面,父親としての意識や講座を通しての自己変化は特になかったと答えていた。
考 察
支援プログラムは,父親としての養育性の獲得には成果が見られたものの,役割意識の取得には,プログラム内容のさらなる検討を要す。
本研究は平成24年度科学研究費基盤研究C課題番号25350953(研究代表者寺見陽子)の一部である。