[PD09] 学童期のこどもの発達と親の捉え方
キーワード:学童期, 日常生活, 母親
目 的
われわれは,これまで子どもの生活と親の子育て意識について縦断的に研究を進めてきた。前回,児童期に達し内観を報告できる年齢に達した小学3年生時と3年後の6年生時の児童の生活意識や家族との関係を見てみたところ,生活の中では6年生は3年生に比べてマンガやゲームに関わる時間が多くなり,また,家で手伝いをしたり家族との外出を楽しいと感じる割合が少なくなっていた。6年生の子ども達は親や大人との関係を否定してはいないが,親との関わりを必要とする割合は減少していた。今回は,母親の意識に着目して「子育て観」や親の目から見た「子どもの日常生活」が,小学校3年児と小学校6年児ではどのように異なるのかいうことを検証していく。
また,子どもが男児か女児かによりその受け止め方は異なるのか,さらに父親の目から見た子育て観や子どもの日常生活との比較をし検討する。
調査手続き
調査対象者 福岡県O市在住の親(主として母親)
調査期間 3年時2011年5月,2012年5月
計1223名,有効回答数 1002名
6年時2014年6月,2015年6月
計1084名,有効回答数 968名
調査内容 ・子どもの日常生活について 10問
・子育て観について 11問
結果と考察
Ⅰ.子どもの成長による比較
① 子どもの日常生活について
母親が捉えた子どもの日常生活のt検定による学年差を,表1に示す。これによると有意差が見られ3年生が高い項目は「家族での外出を好む」「親の行動に興味を持っている」「戸外で遊ぶ」「友だちを家につれてくる」であり6年生が高い項目は「よく勉強をしている」であった。
② 子育て観について
母親の子育て観についての学年による有意差は,3年生が高い項目が「子育てでくたくたになる」「子どもに感情的に接してしまう」であり,6年生が高い項目は「子どもをうまく育てている」「子どもがいることで生活にゆとりを感じる」となっていた。
③ 父親との比較
子どもの日常生活の捉え方の父母差では3年生,6年生ともにいずれの項目にも有意差がなかった。しかし,子育て観には有意差が見られ父親が高い項目は3年生,6年生ともに「子どもがいることでゆとりを感じる」であり,母親が高い項目は3年生で「子どもに感情的に接する」,6年生で「毎日くたくたになる」となっていた。
Ⅱ.子どもの性による比較
学年別に,母親が捉えた子どもの日常生活および子育て観の男女差をみたところ,3年生の日常生活項目では家庭での会話,手伝い,家族での外出,弟妹の面倒,勉強など10項目中8項目で,また6年生では9項目で女児の平均値が有意に高く学童期における家庭内の性差が明らかになった。
さらに各項目の学年と性の交互作用をF検定で見たところ「手伝い」は3年から6年にかけて男児は平均値が上がり女児は下がっていた。また「戸外で遊ぶ」は男女とも3年から6年にかけて減少するが女児においてその度合いが高かった。
子育て観の性別による差は見られなかった。
以上,学童期3年生から6年生にかけて母親の捉え方が変化する様子が伺えた。母親は3年時は6年時に比べて日常生活で親や家族との関わりが高く,子育てに関しても親の手が掛かると感じている。また,母親は子育て観に男女差はないが,学童期の子どもの日常生活においては男女差を感じており,男児に比べて女児が家族と親密であると感じている。一方,父親との比較では子どもの日常生活に対する捉え方の差は見られなかったが,子育て観に関しては子どもがいることで父親は「ゆとり」を感じ,母親は「くたくたになる」「感情的に接する」など両親の家庭内での役割差を垣間見る結果となった。
参考文献
原崎聖子 篠原しのぶ 彌永和美 渡邉晴美(2015).「学童期における生活意識の追跡調査-3年生時と6年生時の比較-」福岡女学院大学紀要人間関係学部第16号
われわれは,これまで子どもの生活と親の子育て意識について縦断的に研究を進めてきた。前回,児童期に達し内観を報告できる年齢に達した小学3年生時と3年後の6年生時の児童の生活意識や家族との関係を見てみたところ,生活の中では6年生は3年生に比べてマンガやゲームに関わる時間が多くなり,また,家で手伝いをしたり家族との外出を楽しいと感じる割合が少なくなっていた。6年生の子ども達は親や大人との関係を否定してはいないが,親との関わりを必要とする割合は減少していた。今回は,母親の意識に着目して「子育て観」や親の目から見た「子どもの日常生活」が,小学校3年児と小学校6年児ではどのように異なるのかいうことを検証していく。
また,子どもが男児か女児かによりその受け止め方は異なるのか,さらに父親の目から見た子育て観や子どもの日常生活との比較をし検討する。
調査手続き
調査対象者 福岡県O市在住の親(主として母親)
調査期間 3年時2011年5月,2012年5月
計1223名,有効回答数 1002名
6年時2014年6月,2015年6月
計1084名,有効回答数 968名
調査内容 ・子どもの日常生活について 10問
・子育て観について 11問
結果と考察
Ⅰ.子どもの成長による比較
① 子どもの日常生活について
母親が捉えた子どもの日常生活のt検定による学年差を,表1に示す。これによると有意差が見られ3年生が高い項目は「家族での外出を好む」「親の行動に興味を持っている」「戸外で遊ぶ」「友だちを家につれてくる」であり6年生が高い項目は「よく勉強をしている」であった。
② 子育て観について
母親の子育て観についての学年による有意差は,3年生が高い項目が「子育てでくたくたになる」「子どもに感情的に接してしまう」であり,6年生が高い項目は「子どもをうまく育てている」「子どもがいることで生活にゆとりを感じる」となっていた。
③ 父親との比較
子どもの日常生活の捉え方の父母差では3年生,6年生ともにいずれの項目にも有意差がなかった。しかし,子育て観には有意差が見られ父親が高い項目は3年生,6年生ともに「子どもがいることでゆとりを感じる」であり,母親が高い項目は3年生で「子どもに感情的に接する」,6年生で「毎日くたくたになる」となっていた。
Ⅱ.子どもの性による比較
学年別に,母親が捉えた子どもの日常生活および子育て観の男女差をみたところ,3年生の日常生活項目では家庭での会話,手伝い,家族での外出,弟妹の面倒,勉強など10項目中8項目で,また6年生では9項目で女児の平均値が有意に高く学童期における家庭内の性差が明らかになった。
さらに各項目の学年と性の交互作用をF検定で見たところ「手伝い」は3年から6年にかけて男児は平均値が上がり女児は下がっていた。また「戸外で遊ぶ」は男女とも3年から6年にかけて減少するが女児においてその度合いが高かった。
子育て観の性別による差は見られなかった。
以上,学童期3年生から6年生にかけて母親の捉え方が変化する様子が伺えた。母親は3年時は6年時に比べて日常生活で親や家族との関わりが高く,子育てに関しても親の手が掛かると感じている。また,母親は子育て観に男女差はないが,学童期の子どもの日常生活においては男女差を感じており,男児に比べて女児が家族と親密であると感じている。一方,父親との比較では子どもの日常生活に対する捉え方の差は見られなかったが,子育て観に関しては子どもがいることで父親は「ゆとり」を感じ,母親は「くたくたになる」「感情的に接する」など両親の家庭内での役割差を垣間見る結果となった。
参考文献
原崎聖子 篠原しのぶ 彌永和美 渡邉晴美(2015).「学童期における生活意識の追跡調査-3年生時と6年生時の比較-」福岡女学院大学紀要人間関係学部第16号