The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD21] 認知カウンセリングの経験が大学生の個別学習支援の力量に及ぼす影響(1)

活動を通じた参加学生全体の変化

田中紗枝子1, 福屋いずみ2, 岡直樹3, 細川真4 (1.徳島文理大学, 2.広島大学大学院, 3.広島大学大学院, 4.吉野川市立鴨島小学校)

Keywords:学習支援, 認知カウンセリング, 教員養成

問   題
 広島大学では,学習に苦手意識がある児童・生徒を対象に,教職を志望する学生が認知カウンセリングの手法を用いて個別に支援活動を行っている。認知カウンセリングとは,認知的な問題のある学習者に対して,その原因を探り,解決の支援を与える方法である(市川,1993)。認知カウンセリングの目標には,自立した学習者の育成,支援者の個別支援の力量形成の2つがある。これらの目標を達成するため,支援者は問題を抱えている子どもの認知スタイルや特性を評価し,それにもとづいた支援を行っている。しかし支援者がどのように子どもを理解し,支援しているのかはほとんど検討されていない。
 そこで本研究では,支援を行う学生が子どもをどのように理解し,支援しようとしているか,また本活動を通して子ども理解がどのように変化するかについて検討した。
方   法
 調査時期と参加者 調査時期は,2014年10月(開始前)と翌年2月(終了後)の2時点であり,この期間に活動に参加していた学部1年から4年の学生を対象とした。開始前38名,終了後45名が回答した。
 質問紙 質問紙は,「子ども理解」,「支援時の留意点」,「観察時の留意点」,「次回の準備での留意点」の4つの内容から構成された。回答は自由記述であった。
結果と考察
 KHcoder(樋口,2014)を用いて,質問項目ごとの活動開始前,終了後の回答の比較を行った。Table 1は,それぞれの調査時期,質問項目で特徴的な単語を並べたものである。
 子ども理解についての回答は,活動前は算数や子どもの苦手について書かれたものが主であった。一方,本活動終了後には学習全般について言及されており,「自分」,「楽しい」等の言葉も見られた。これらの言葉は「自分で考える」,「(学習が)楽しいと思える」等の回答で見られたことから,支援者は子どもに対し学習支援活動を通して,学習全般に般化できるような学習方略や動機づけを身につけてほしいと考えていることが明らかとなった。これは,認知カウンセリングの目標にあてはまる。また支援時や次回支援への留意点については,終了後の方がより具体的にどのような点に注目しているかが書かれていた。
 以上より,本活動を通して支援者は,子どもの学習者としての自立を意識し,それに基づいた子ども理解や支援ができるようになっていることが明らかになった。
引用文献
樋口耕一 (2014). 社会調査のための計量テキスト分析 ナカニシヤ出版
市川伸一 (1993). 学習を支える認知カウンセリング ブレーン出版