[PD30] 看護学生の精神疾患患者に対する否定的イメージの変化
精神看護学実習前後の比較
キーワード:精神看護学実習, 精神疾患患者の否定的イメージ, 看護学生
問題と目的
精神疾患患者に対する看護学生のイメージに関する研究は,数多くなされている。精神看護学実習前後の比較では,実習後は実習前に比べて否定的なイメージが是正する方向に変化するのが一般的である。しかし,実習後においても,精神疾患患者や精神看護への否定的なイメージを抱き続けるという報告もある(小坂・徳珍,2009)。
そこで,本研究においては,看護学生の精神疾患患者に対する否定的なイメージが精神看護学実習によって,どう変化するのかを明らかにすることを目的とした。
研究方法
A看護短期大学生で精神看護学実習を行う65人に対して自記式質問紙調査を実施した(回収率100%)。対象者に対し調査票を一斉に配布し,その場で回収する集団実施法を行った。実習前の2015年4月と実習後の精神看護学実習最終日に調査を実施した。
調査内容は,年齢,性別,偏見の有無,精神科病院で働きたいか否か,精神疾患患者に対する否定的イメージとした。精神疾患患者に対する否定的イメージは,「怖い」「暗い」「危険な」など23項目とし,「思う」「やや思う」「どちらともいえない」「やや思わない」「思わない」の5段階で回答を求めた。
倫理的配慮
対象者に対して調査実施日に研究の主旨と協力を文章と口頭で説明した。本研究は,愛知きわみ看護短期大学研究倫理委員会の承認を得て,調査を実施した。
結果及び考察
精神疾患患者の否定的イメージを実習前後で,χ2検定を用いて比較した結果,「怖い」「暗い」「危険な」「社会に出ない方がよい」「関われない」「迷惑な」「意思疎通が出来ない」「無表情な」のイメージには有意な相違があった。
実習前は精神疾患患者を否定的に「思う」「やや思う」と答えた者が多く,「やや思わない」「思わない」と答えた者が少ない傾向にあったが,実習後は精神疾患患者を否定的に「思う」「やや思う」と答えた者が少なく,「やや思わない」「思わない」と答えた者が多い傾向であった。
これは実習において,患者の生活指導や環境調整,作業療法など患者と共に体験したことによって,患者の健康的な部分に触れることができ,否定的イメージが減少したのではないかと考えられる。
学生がカンファレンスなどで精神科病院の特徴や受け持ち患者の特徴など具体的な指導を受け,精神疾患患者との関わりの中で遭遇する困難を乗り越え,手ごたえを実感した結果,精神疾患患者を肯定的に捉えることになり,否定的イメージを減少させたのではないかと考えらえる。
今後も,学生には多くの精神疾患患者を知る機会をつくるとともに,実習での困りごとや悩み事を乗り越え,手ごたえを実感できるような指導が求められると考えられる。
謝辞
本研究は,平成27年度愛知きわみ看護短期大学特別研究費の助成を受け実施したものである。
文 献
小坂やす子・徳珍温子(2009).心を病むことに対する看護学生の認識,第40回日本看護学会論文集看護教育,242-244.
精神疾患患者に対する看護学生のイメージに関する研究は,数多くなされている。精神看護学実習前後の比較では,実習後は実習前に比べて否定的なイメージが是正する方向に変化するのが一般的である。しかし,実習後においても,精神疾患患者や精神看護への否定的なイメージを抱き続けるという報告もある(小坂・徳珍,2009)。
そこで,本研究においては,看護学生の精神疾患患者に対する否定的なイメージが精神看護学実習によって,どう変化するのかを明らかにすることを目的とした。
研究方法
A看護短期大学生で精神看護学実習を行う65人に対して自記式質問紙調査を実施した(回収率100%)。対象者に対し調査票を一斉に配布し,その場で回収する集団実施法を行った。実習前の2015年4月と実習後の精神看護学実習最終日に調査を実施した。
調査内容は,年齢,性別,偏見の有無,精神科病院で働きたいか否か,精神疾患患者に対する否定的イメージとした。精神疾患患者に対する否定的イメージは,「怖い」「暗い」「危険な」など23項目とし,「思う」「やや思う」「どちらともいえない」「やや思わない」「思わない」の5段階で回答を求めた。
倫理的配慮
対象者に対して調査実施日に研究の主旨と協力を文章と口頭で説明した。本研究は,愛知きわみ看護短期大学研究倫理委員会の承認を得て,調査を実施した。
結果及び考察
精神疾患患者の否定的イメージを実習前後で,χ2検定を用いて比較した結果,「怖い」「暗い」「危険な」「社会に出ない方がよい」「関われない」「迷惑な」「意思疎通が出来ない」「無表情な」のイメージには有意な相違があった。
実習前は精神疾患患者を否定的に「思う」「やや思う」と答えた者が多く,「やや思わない」「思わない」と答えた者が少ない傾向にあったが,実習後は精神疾患患者を否定的に「思う」「やや思う」と答えた者が少なく,「やや思わない」「思わない」と答えた者が多い傾向であった。
これは実習において,患者の生活指導や環境調整,作業療法など患者と共に体験したことによって,患者の健康的な部分に触れることができ,否定的イメージが減少したのではないかと考えられる。
学生がカンファレンスなどで精神科病院の特徴や受け持ち患者の特徴など具体的な指導を受け,精神疾患患者との関わりの中で遭遇する困難を乗り越え,手ごたえを実感した結果,精神疾患患者を肯定的に捉えることになり,否定的イメージを減少させたのではないかと考えらえる。
今後も,学生には多くの精神疾患患者を知る機会をつくるとともに,実習での困りごとや悩み事を乗り越え,手ごたえを実感できるような指導が求められると考えられる。
謝辞
本研究は,平成27年度愛知きわみ看護短期大学特別研究費の助成を受け実施したものである。
文 献
小坂やす子・徳珍温子(2009).心を病むことに対する看護学生の認識,第40回日本看護学会論文集看護教育,242-244.