[PD33] 小学校の理科実験における測定の効果
糖度計を用いた均等分布の検証
Keywords:小学校理科, 均等分布, ルール学習
問題と目的
理科の授業では,実験によって科学的法則(ルール)が確認される。その際,実験結果をどのように表現すれば,ルールの一般化が促進されるのだろうか。工藤(2015)は,理科実験の結果を定性的に表現するだけではなく,測定結果に基づいた定量的な表現を用いることの重要性を指摘している。しかし,測定結果をルールとどのように関連づけるかなど,不明な点は少なくない。そこで本稿では,小学校5年の溶解単元において,「水に溶けたものは,水溶液の中のどこにでも溶けている」という均等分布ルールを,測定によって確認する授業プランを作成し,その有効性を検討する。
方 法
対象 仙台市立A小学校5年生3クラス(分析対象者数はTable 1を参照)を対象とした(以下,プラン群)。なお,プランの効果を検証するために,測定を用いずに均等分布を確かめる授業を実施した2クラス(仙台市立B小学校)を対照群とした。
課題の概要 標的課題A(プラン群のみ):砂糖を水に溶かした。このとき,ビーカーの上・中・下段にそれぞれ砂糖は溶けているか?他に食塩,ホウ酸,ミョウバンを出題。標的課題B:標的課題Aの食塩水問題に「1日置いた後」を追加。標的課題C:前日に作ったみそ汁の上段部分(透明)は塩味がするか。
授業の概要 プラン群の授業時間は,各クラスとも45分であり,授業者は第1筆者であった。プラン群の授業内容:①砂糖を水に入れると透明になること,それを「溶ける」ということを教示,②砂糖水はどこでも同じだけ溶けているのかを予想,③班ごとに糖度計を使って,どこでも同じだけの濃さになっているかを測定,④どこでも同じ値(濃さ)になっていることを確認,⑤食塩水では,どこでも同じ濃さかを予想。⑥教師実験で塩分濃度計を使用し,どこでも同じ濃さになっていることを確認。対照群の授業では,食塩水が入ったビーカーの上・中・下段から食塩水を取り出して蒸発乾固をし,食塩が出てくることを確認した。
結果と考察
(1) 標的課題A 授業内で濃度を測定した物質は砂糖と食塩のみであったが,直接取り上げていないミョウバンやホウ酸に関しても,実験で取り上げた物質と同定度の正答率に達した(Table 1)。砂糖と食塩を授業で測定した際は,児童の多くは,驚きとともに測定結果を確認していた。すなわち,測定によってルールに対する確信度が高まり,直接検証していない物質にも転移が可能になったと考えられる。このことから,測定には一定の効果が見られたと考えられる。
(2) 標的課題B・C 標的課題B・Cの正答率は大半が8割以下であり,対照群と比べても優位性は見られなかった(Table 1)。両課題とも「1日置いた後」の水溶液の状態を問うものであった。そのため,プラン群の実験では扱っていない問題事態であったことが,ルールの適用を阻害した要因として考えられる。
(3) まとめ 評価課題A・B・Cの正答率は,実験での測定条件によって影響を受けることが示唆された。標的課題B・Cに正答者が,測定結果とルールとをどのように解釈したのかは今後の検討課題である。
理科の授業では,実験によって科学的法則(ルール)が確認される。その際,実験結果をどのように表現すれば,ルールの一般化が促進されるのだろうか。工藤(2015)は,理科実験の結果を定性的に表現するだけではなく,測定結果に基づいた定量的な表現を用いることの重要性を指摘している。しかし,測定結果をルールとどのように関連づけるかなど,不明な点は少なくない。そこで本稿では,小学校5年の溶解単元において,「水に溶けたものは,水溶液の中のどこにでも溶けている」という均等分布ルールを,測定によって確認する授業プランを作成し,その有効性を検討する。
方 法
対象 仙台市立A小学校5年生3クラス(分析対象者数はTable 1を参照)を対象とした(以下,プラン群)。なお,プランの効果を検証するために,測定を用いずに均等分布を確かめる授業を実施した2クラス(仙台市立B小学校)を対照群とした。
課題の概要 標的課題A(プラン群のみ):砂糖を水に溶かした。このとき,ビーカーの上・中・下段にそれぞれ砂糖は溶けているか?他に食塩,ホウ酸,ミョウバンを出題。標的課題B:標的課題Aの食塩水問題に「1日置いた後」を追加。標的課題C:前日に作ったみそ汁の上段部分(透明)は塩味がするか。
授業の概要 プラン群の授業時間は,各クラスとも45分であり,授業者は第1筆者であった。プラン群の授業内容:①砂糖を水に入れると透明になること,それを「溶ける」ということを教示,②砂糖水はどこでも同じだけ溶けているのかを予想,③班ごとに糖度計を使って,どこでも同じだけの濃さになっているかを測定,④どこでも同じ値(濃さ)になっていることを確認,⑤食塩水では,どこでも同じ濃さかを予想。⑥教師実験で塩分濃度計を使用し,どこでも同じ濃さになっていることを確認。対照群の授業では,食塩水が入ったビーカーの上・中・下段から食塩水を取り出して蒸発乾固をし,食塩が出てくることを確認した。
結果と考察
(1) 標的課題A 授業内で濃度を測定した物質は砂糖と食塩のみであったが,直接取り上げていないミョウバンやホウ酸に関しても,実験で取り上げた物質と同定度の正答率に達した(Table 1)。砂糖と食塩を授業で測定した際は,児童の多くは,驚きとともに測定結果を確認していた。すなわち,測定によってルールに対する確信度が高まり,直接検証していない物質にも転移が可能になったと考えられる。このことから,測定には一定の効果が見られたと考えられる。
(2) 標的課題B・C 標的課題B・Cの正答率は大半が8割以下であり,対照群と比べても優位性は見られなかった(Table 1)。両課題とも「1日置いた後」の水溶液の状態を問うものであった。そのため,プラン群の実験では扱っていない問題事態であったことが,ルールの適用を阻害した要因として考えられる。
(3) まとめ 評価課題A・B・Cの正答率は,実験での測定条件によって影響を受けることが示唆された。標的課題B・Cに正答者が,測定結果とルールとをどのように解釈したのかは今後の検討課題である。