The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD35] 能動的学習場面における学習者の主観的経験

粟津俊二 (実践女子大学)

Keywords:アクティブラーニング, 効果測定

目   的
 能動的学習を期待する授業では,教授者は学習環境をデザインし,学習者集団や学習者個人の振る舞いや経験をデザインしようと試みる場合がある。しかし教授者の意図どおりに,学習者が経験をしてくれるとは限らない。本研究では,授業内容によって学習者の主観的な経験が変化するかどうか,また同じ授業内容でも集団によって経験が異なるかどうかを検討する。
方   法
 著者担当の2年生演習(演習2A,2B)及び心理学実験実習1,2の2015年度授業最終回において,履修者に質問紙への回答を任意で求めた。社会人基礎力の各項目に相当する経験をする機会が,各授業内でどの程度あったかを評定させた。社会人基礎力は3能力12要素が仮定されている。経済産業省(2007)を参考に,各要素に3つの経験項目を規定し,その経験をする機会がどの程度あったかを,5段階で評価させた。回答者数は演習2Aが10/23名,2Bが20/23名,心理学実験実習1が17/18名,2が10/10名だった。
結   果
 各経験項目における授業の主効果について多変量分散分析を行い,5%水準で授業間に有意差が見られた項目には対比検定を行った。以下では,同授業内容で差が見られた結果のみ述べる。
 演習2Aは前期,2Bは後期開講である。学習者集団(クラス)は固定したまま担当教員が交代することで,同じ授業内容を別の集団に行った。2A-2B間で,働きかけ要素のうち「他の人に協力してもらえるように,依頼したり,協力してもらう目的を伝えたりした(働きかけ1)」と「効果的に協力してもらえるように,様々なやり方を工夫した(働きかけ2)」,状況把握要素のうち「周囲の人間関係や忙しさを把握し,状況に配慮して行動した(状況把握1)」に有意差があり,いずれも2Aの方が高かった。また,ストレス制御要素のうち「取り組みでストレスを感じる時,その原因について考えた (ストレス1)」にも同様の有意差が見られた (図1参照)。
考   察
 演習2では,論説文やグラフデータの読み取り,発表の評価基準などについて,3から4人の班で協同作業や討議を行った。同じ教材を用いた同じ課題であるが,学習者間の相互作用の様相が変化し,主観的経験の違いとして測定されたと考えられる。学習者間の相互作用の様相が異なる理由については,個々の学習者の特性や授業時期など様々な要因があり,不明である。
 本研究は,学習者集団,あるいは個人の特性によって,学習者の主観的経験が変わることを示した。これは,学習の内容や効果にも影響しうる可能性がある。