[PD66] 車いす使用者に関する中学生の認識
障害理解教育の内容を検討するために
Keywords:障害理解, 車いす使用者, 中学生の認識
はじめに
小学校や中学校では障害やバリアフリーについて子どもに伝える際に,車いす使用者に関する内容が取り上げられることが多い(西館・徳田・水野,2005)。それでは,こうした教育の成果はどの程度表れているのであろうか。そもそも,子どもたちは車いす使用者についてどのような認識をもっているのであろうか。
今後の肢体不自由理解教育の内容や方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とし,小学生や中学生を対象に調査を行った。本稿では,中学生を対象にした調査結果について報告する。
方 法
2016年2月に,中学校1校の第2学年の生徒160名を対象に,無記名式・自記式の質問紙調査を実施した。回答済の質問紙は137部を回収した(回収率86%)。回答者の性別は女性72名,男子65名であった。
調査項目は,回答者の属性を問う2項目,車いす使用者に関する認識を問う11項目であった。
結果と考察
車いす使用者に関する11項目の文章のそれぞれについて「まったく思わない」(1点)から「とても思う」(5点)までの5段階評定で回答を求めた。各項目の平均値と標準偏差を,平均値の高い順に表1に示した。
①について,実際には間違った援助に車いす使用者が危険や困惑を感じることは多い(西館・水野・徳田,2006)。それにもかかわらず中学生は,誤った方法でも援助してもらえれば車いす使用者は喜ぶと考える傾向にあった。このような認識は,車いす使用者に援助の申し出を喜んでもらえなかったり,申し出を断られたりした際に,その経験をネガティブにとらえることにつながるため(西館,2004),援助関係を結ぶ際の妨げとなる。
②はバリアフリー対応のドアがスライド式であることから,⑥は『歩道の一般的構造に関する基準』で段の高さの標準は2㎝と定められていることから,適切な説明文であった。②の平均値は線分の中心の値(3点)を上回り,生徒は「そう思う」と答える傾向にあった。一方,⑥は平均値2.7であり,車いす使用者は2㎝の段差も超えられないと考える者が少なくなかった。
ドアの開閉については,②の他に④,⑨の項目が設けられていた。中学生は,ドアを押して開ける(④)よりも,手前に引いて開ける(⑨)方が車いす使用者にとって困難であると考えていた。実際にはどちらも車いす使用者にとってむずかしい作業であるため,車いす使用者に代わってドアの開閉を行うなどの援助が必要となる。
溝へのタイヤの挟まり(⑪)や自転車とのすれ違い(⑩)については,車いす使用者にとってバリアであると考える者が多かった。これらは実際に車いす使用者のバリアとなっている事柄である。
中学生は,車いす使用者が困っている場面において,自分がどのように対応すべきかについて具体的に考え,援助方法に関する学びを深める時期にあると考えられる。しかし,車いす使用者が一人でできることや,一人では対応が困難なことについて適切な知識が十分に身についていないことが確認された。今後はこの結果をふまえて,教育内容や方法を検討していく必要がある。
小学校や中学校では障害やバリアフリーについて子どもに伝える際に,車いす使用者に関する内容が取り上げられることが多い(西館・徳田・水野,2005)。それでは,こうした教育の成果はどの程度表れているのであろうか。そもそも,子どもたちは車いす使用者についてどのような認識をもっているのであろうか。
今後の肢体不自由理解教育の内容や方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とし,小学生や中学生を対象に調査を行った。本稿では,中学生を対象にした調査結果について報告する。
方 法
2016年2月に,中学校1校の第2学年の生徒160名を対象に,無記名式・自記式の質問紙調査を実施した。回答済の質問紙は137部を回収した(回収率86%)。回答者の性別は女性72名,男子65名であった。
調査項目は,回答者の属性を問う2項目,車いす使用者に関する認識を問う11項目であった。
結果と考察
車いす使用者に関する11項目の文章のそれぞれについて「まったく思わない」(1点)から「とても思う」(5点)までの5段階評定で回答を求めた。各項目の平均値と標準偏差を,平均値の高い順に表1に示した。
①について,実際には間違った援助に車いす使用者が危険や困惑を感じることは多い(西館・水野・徳田,2006)。それにもかかわらず中学生は,誤った方法でも援助してもらえれば車いす使用者は喜ぶと考える傾向にあった。このような認識は,車いす使用者に援助の申し出を喜んでもらえなかったり,申し出を断られたりした際に,その経験をネガティブにとらえることにつながるため(西館,2004),援助関係を結ぶ際の妨げとなる。
②はバリアフリー対応のドアがスライド式であることから,⑥は『歩道の一般的構造に関する基準』で段の高さの標準は2㎝と定められていることから,適切な説明文であった。②の平均値は線分の中心の値(3点)を上回り,生徒は「そう思う」と答える傾向にあった。一方,⑥は平均値2.7であり,車いす使用者は2㎝の段差も超えられないと考える者が少なくなかった。
ドアの開閉については,②の他に④,⑨の項目が設けられていた。中学生は,ドアを押して開ける(④)よりも,手前に引いて開ける(⑨)方が車いす使用者にとって困難であると考えていた。実際にはどちらも車いす使用者にとってむずかしい作業であるため,車いす使用者に代わってドアの開閉を行うなどの援助が必要となる。
溝へのタイヤの挟まり(⑪)や自転車とのすれ違い(⑩)については,車いす使用者にとってバリアであると考える者が多かった。これらは実際に車いす使用者のバリアとなっている事柄である。
中学生は,車いす使用者が困っている場面において,自分がどのように対応すべきかについて具体的に考え,援助方法に関する学びを深める時期にあると考えられる。しかし,車いす使用者が一人でできることや,一人では対応が困難なことについて適切な知識が十分に身についていないことが確認された。今後はこの結果をふまえて,教育内容や方法を検討していく必要がある。