The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PD(65-89)

ポスター発表 PD(65-89)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PD73] 相談支援分野における生徒対応がうまい教員とは

教員の資質・能力を向上させるサポートの検討

三浦巧也1, 堂山亜希2, 田口禎子3, 熊谷亮4, 枡千晶#5, 杉岡千宏6, 橋本創一7 (1.大正大学, 2.東京学芸大学大学院, 3.東京学芸大学, 4.東京学芸大学, 5.東京学芸大学大学院連合学校, 6.東京学芸大学, 7.東京学芸大学)

Keywords:相談支援, 教員資質・能力, 教員サポート

問題と目的
 教員は,相談支援分野の資質・能力について高いニーズをもっている(新藤,2001)。本研究では,生徒指導や教育相談活動において生徒への対応が不十分な教員の様相と,彼らに期待される取り組みや研鑚を把握し,相談支援分野に関する教員へのよりよいサポートのあり方を検討する。
方   法
調査対象者 東京都の公立中学校622校に勤務する中学1年生の学年主任を調査対象者とした(各校で1名)。
調査期間と回収方法 2014年7月に郵送法で実施した。
調査内容 生徒への対応が不十分な(教員としての資質能力が十分に備わっているとは言えない)教員の生徒指導及び教育相談活動について,自由記述でたずねた。また,指導力不足の教員が資質・能力を高めるために必要な取り組み及び研鑚について,自由記述でたずねた。
分析方法 自由記述のデータ分析には,SPSS Text Analysis For Survey 4.0.1を用いて以下の分析を実施した。はじめに,感性分析を行った。感性分析とは,単語の品詞とポジティブ・ネガティブ等のニュアンスの組みあわせから言葉の表現を抽出する方法である。次に,主に名詞をまとめるために言語学的手法に基づく方法を用いた。この手法では内包(一方の共通の文字列である単語を含むかどうかに基づき,複合語をグループ化することによってカテゴリを作成する)と,共起規則(回答内で強い関連を持つキーワードを見つけカテゴリを作成する)といった2つの分類手法を行った。さらに,出現頻度が5回以上のレコード(個別の値)を抽出した。最後に,webグラフを作成した。webグラフでは,各ノード(点)の大きさがカテゴリのレコード数の大きさを表している。また,2つのカテゴリを結ぶリンク(線)は,共有するレコード数を表している。
結   果
回収率と対象者の教職年数・担当年数 1年生学年主任151名からの回答が得られた(24.3%)。対象者の教職年数は平均24.5年(SD8.5)であった。学年主任の担当年数は平均5.4年(SD5.1)であった。
生徒指導・教育相談において生徒への対応が不十分な教員の様相 有効回答者は139名(92.1%)であった。抽出されたレコード数は181であり,レコード数が多い順に,「生徒(61,33.7%)」,「ネガティブ(悪い)/悪い(38,21.0%)」であった。webグラフより,「ネガティブ(悪い)/悪い-生徒」「ネガティブ(悪い)/悪い-指導」の2つのリンクが太く示された。また,「ネガティブ(悪い)/悪い-話-生徒」といった3つのノードが相互に強くリンクしていた(Figure 1)。
生徒への対応が不十分な教員が資質・能力を高めるために必要な取り組み・研鑚 有効回答者は136名(90.1%)であった。抽出されたレコード数は76であり,レコード数が多い順に,「生徒(29,38.1%)」,「教員(27,35.5%)」であった。webグラフより,「生徒-情報」「生徒-教員」の2つのリンクが太く示された。(Figure 2)。
考   察
 テキストマイニングよって得られた結果を基に,自由記述内容を概観した。学年主任から当該教員は,生徒に対する態度に課題がみられ,具体的には話を聞く姿勢が乏しいことが推測された。また,一方的な意見や振る舞いがみられることも指摘されている。そして,彼らが教員としての資質・能力を向上させるために,他の教員と交流を図り,情報共有を図ることへの期待が示唆された。
 今後,相談支援分野における教員の資質・能力向上には,教員集団を対象とした心理教育を導入し,互いに自己主張し合える環境が整備されることを期待したい。