The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD(65-89)

ポスター発表 PD(65-89)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PD75] 小学校におけるソーシャルスキル教育を中心とした心理教育の縦断実践研究(6)

感情スキル教育の効果の検討

藤枝静暁1, 増南太志2, 相川充3 (1.埼玉学園大学, 2.埼玉学園大学, 3.筑波大学)

Keywords:ソーシャルスキル教育, 感情スキル, 小学校

目   的
 本研究は,児童の自己肯定感および学校適応感の育成を目的として,平成26年度より,公立小学校1校において継続実践している,ソーシャルスキル教育(以下,SSEとする)を中心技法とする心理教育についての経過報告である。本研究の理論的背景は,学校適応アセスメントのための三水準モデル(大対・大竹・松見,2007,以下,大対モデルとする)である。大対モデルによると,感情過程が水準1の行動的機能に影響を与える。そこで,平成26年度2,3学期は感情スキルを高めるために,「ふわふわ言葉とチクチク言葉」の授業と般化のための実践を行った。授業のねらいは毎日使っている言葉が自分や相手の気持ちに影響を与えていることに気がつくこと,ロールプレイを通じて体験学習することであった。3学期は般化を目的として,毎日の帰りの会にて「ふわふわ言葉とチクチク言葉」の発表と教室掲示を行った。本研究の目的はこの実践の効果を検討することである。
方   法
対象校と児童:対象は関東の公立小学校1校である。SSEは全クラスで実施している。感情スキルの調査対象者は,質問の内容を理解し回答することができる3年生以上の子ども261名であった。
調査時期:事前評定は平成26年10月初頭,事後評定は平成27年3月下旬に行った。実施者はクラス担任であった。
使用した尺度:児童用感情スキル尺度(藤枝・増南・相川,2015)を使用した。本尺度は4因子で構成され,全24項目である。4因子は「感情コントロールスキル」,「他者感情理解スキル」,「自己感情理解スキル」,「ネガティブ感情の伝達スキル」である。「よくあてはまる」から「まったくあてはまらない」の4件法であった。
結果と考察
分析対象と方法:2回の調査に回答した児童計239名を分析対象とした。学年毎の児童用感情スキル尺度得点と下位因子得点(標準偏差)をTable 1に示した。これらの値を従属変数として,調査時期×学年の分散分析を行った。
結果:SSEの効果に関わる結果に絞って述べる。児童用感情スキル尺度得点では有意傾向の交互作用が認められ(F (3,235) =2.10, p<.10),3・5年生で事前<事後(共にp<.01),4年生では同様の傾向差が見られた(p<.10)。下位因子毎に見ると,感情コントロールスキル得点では有意な交互作用が見られ(F(3,235) =3.76, p<.01),3年生で事前<事後(p<.01)であり,5年生では同様の傾向差があった(p<.10)。他者感情理解スキル,自己感情理解スキル,ネガティブ感情の伝達スキルの各得点においては,時期の主効果が認められ(順にF(1,235) =8.10;9.22;13.31, 全てp<.01),事前<事後であった(全て <.01)。
考察:担任教師らによると,SSE終了後「今の言い方は心がチクチクするよ」「ごめんね」といった子ども同士のやりとりが増えたという。SSEを通じて感情スキルを学習したことによって,子どもたちが感情スキルを意識して生活するようになり,有意な得点の上昇につながったと考えられる。