[PD80] 学びのユニバーサルデザイン(UDL)と学級経営
UDLを生かした個の学びの変容から,学級集団の変容へ
Keywords:学びのユニバーサルデザイン, 学級風土質問紙, QU
問題と目的
学級編成替えはなく担任のみが交代した児童数29名の6年生の学級。6年進級時,児童相互の人間関係は良好とは言えない状況で,学習場面でも生活場面でも友達を否定的に捉えるような言動が目立っていた。通常であれば親和的な級友関係を生み出したり教師との関係性をより良くしたりすることを中心に学級経営を進めるところだが,新担任は学習面に着目することで学級の状況の改善を図ることにした。その際に拠り所としたのが,アメリカの研究団体CASTが提唱する「学びのユニバーサルデザイン」(UDL=Universal design for learning)である。
方 法
学級の実態調査として「学級風土質問紙(伊籐,2009)」を実施し(Figure 1),4月当初,「学習への志向」はやや高いものの,「規律正しさ」や「学級への満足感」は低いという傾向が見られた。これは新担任の印象と重なるものだった。
このような実態に対して,通常はマイナス面をプラスに変えようと「規律正しくする」,「学級への満足感を高める」ということを目指した学級指導が進められよう。しかし,本研究では学習への志向の高さに着目し,UDLの視点を生かした取り組みによって学級の状況の改善を図った。
○脳の認知ネットワークを意識した取り組み
・デジタル教科書やデジタルコンテンツ等の利用により,授業で視覚的な教材提示を多くした。
○脳の方略ネットワークを意識した取り組み
・タブレット端末で調べたりまとめたりする活動を取り入れることにより,様々な表現を可能にした。児童それぞれの考えをグループや学級全体で共有し,思考を深めたり広げたりした。
○脳の感情ネットワークを意識した取り組み
・タブレット端末によるドリル学習の即時的な評価や,ノートやワークシートなどへの評価の工夫等によって,やる気を持続させるようにした。
・児童相互の協働的な学習を進めることで,学習への取り組みが前向きなものになるようにした。
結 果
7月と3月の2回,河村(1998)のQUを実施し,学級の状況の変化を調べた結果,1学期末と3学期末では大きな変化が見られた(Figure 2)。7月には少なかった満足群の児童が約2倍に増え,不満足群・要支援群の児童が半数近くに減った。また学力的な面でも伸びが見られ,特に発達障害のある児童Aの変化は顕著だった(Figure 3)。
考 察
UDLの視点を生かした学習指導が,学級集団の変容を図る上で一定の効果を上げる可能性があることが明らかになった。学級集団を良好にすることと学習への取り組み方を良好にすることの間には,深いつながりがある。学級集団に課題がある場合,人間関係を良好にするためのアプローチだけでなく,一人一人の学びをより良くするアプローチも視野に入れた取り組みが期待される。
学級編成替えはなく担任のみが交代した児童数29名の6年生の学級。6年進級時,児童相互の人間関係は良好とは言えない状況で,学習場面でも生活場面でも友達を否定的に捉えるような言動が目立っていた。通常であれば親和的な級友関係を生み出したり教師との関係性をより良くしたりすることを中心に学級経営を進めるところだが,新担任は学習面に着目することで学級の状況の改善を図ることにした。その際に拠り所としたのが,アメリカの研究団体CASTが提唱する「学びのユニバーサルデザイン」(UDL=Universal design for learning)である。
方 法
学級の実態調査として「学級風土質問紙(伊籐,2009)」を実施し(Figure 1),4月当初,「学習への志向」はやや高いものの,「規律正しさ」や「学級への満足感」は低いという傾向が見られた。これは新担任の印象と重なるものだった。
このような実態に対して,通常はマイナス面をプラスに変えようと「規律正しくする」,「学級への満足感を高める」ということを目指した学級指導が進められよう。しかし,本研究では学習への志向の高さに着目し,UDLの視点を生かした取り組みによって学級の状況の改善を図った。
○脳の認知ネットワークを意識した取り組み
・デジタル教科書やデジタルコンテンツ等の利用により,授業で視覚的な教材提示を多くした。
○脳の方略ネットワークを意識した取り組み
・タブレット端末で調べたりまとめたりする活動を取り入れることにより,様々な表現を可能にした。児童それぞれの考えをグループや学級全体で共有し,思考を深めたり広げたりした。
○脳の感情ネットワークを意識した取り組み
・タブレット端末によるドリル学習の即時的な評価や,ノートやワークシートなどへの評価の工夫等によって,やる気を持続させるようにした。
・児童相互の協働的な学習を進めることで,学習への取り組みが前向きなものになるようにした。
結 果
7月と3月の2回,河村(1998)のQUを実施し,学級の状況の変化を調べた結果,1学期末と3学期末では大きな変化が見られた(Figure 2)。7月には少なかった満足群の児童が約2倍に増え,不満足群・要支援群の児童が半数近くに減った。また学力的な面でも伸びが見られ,特に発達障害のある児童Aの変化は顕著だった(Figure 3)。
考 察
UDLの視点を生かした学習指導が,学級集団の変容を図る上で一定の効果を上げる可能性があることが明らかになった。学級集団を良好にすることと学習への取り組み方を良好にすることの間には,深いつながりがある。学級集団に課題がある場合,人間関係を良好にするためのアプローチだけでなく,一人一人の学びをより良くするアプローチも視野に入れた取り組みが期待される。