[PE23] 小・大連携を通した授業改善による児童の学びの縦断的研究
授業での学び・家庭学習・学習動機の3年間の発達的変化
キーワード:授業改善, 学びの発達の追跡, 小・大連携
研究目的
学力向上への機運とともに学校教育での大学や地域との連携が重視されている。しばらく前「全国学力テスト」の結果が振るわなかった沖縄県でも同様の動きが活発になっている。琉球大学でも「MSP(学びと育ちのプロジェクト)」を立ち上げ,学力向上を中心とする子どもの育ちのための大学と小・中学校の連携が進み,「授業研究」や「家庭学習」「学習意欲の発達」を中心とする校内研修に取り組んでいる。本研究は筆者らが関わった3年間の「MSP」の取り組みの成果を児童の「授業での学び」「家庭学習方略」「学習動機づけ」の4年から6年にかけての追跡結果について報告するものである。
方 法
1.調査対象者:A校とB校の4年生男女123名に4年時,5年時6年時の12月から1月にかけて次の調査を反復,実施した。
2.調査尺度:①授業イメージ尺度(島袋ら,2008.授業での教授活動と学習行動認知に関す20項目)②家庭学習方略(自己調整的学習,作業方略,認知方略,柔軟的方略,計画方略(佐藤・新井,1998.30項目)③学習動機づけ尺度(速水,1996.20項目)。
結果と考察
1).尺度の因子分析:授業イメージ尺度,家庭でのメタ認知学習,家庭での学習行動,および動機づけ尺度の因子分析(主因子法斜交回転)を行いそれぞれ授業イメージでは「授+業因子」の因子,家庭での学習では「メタ認知的学習方略」と「学習行動方略」の因子が,動機づけ尺度では「同一化動機」「内発的動機」「外発的動機」の3因子が抽出された。
2).3年間の児童の授業での学びの変容:学校別に授業への参加度に関係する「授+業因子」の得点について学校,性,年度の3要因の分散分析を行った。その結果,性,年度,学校×年度の主効果が見られた。「授+業」得点は女児に高く,4年に比べて5年,6年は得点が低下していた。その傾向はA小とB小では違いが見られた。A小では4年から5年にかけ得点が低下するが6年では上昇していた。しかし4年時には得点の高かったB小では5,6年時は得点が低下していた。この結果から,A小では本企画による授業改善の効果の見られることが確認できた。A小,B小でも5年時で得点が低下したのは全国学力テストに向けての「プレッシャー」が強いものと予測される。
3).家庭学習方略の変容:授業での3年間の学びの変容は家庭学習や学習動機づけにどう影響しているだろうか。家庭での「学習行動」では性と年度と学校×年度の主効果が認められた。また「メタ認知的学習」でも年度と学校×年度の主効果が認められた。いずれの場合もB小の4年生の得点は高いが5年,6年にかけ低下していた。逆にA小の4年生の得点は高くはない,5年から6年にかけ得点が上昇していた(図2,3)。
4).学習動機の変容:「同一化動機」「内発的動機」「外発的動機」では性,年度,学校×年度の主効果が認められた。同一化動機,内発的動機ではB小の4年は得点が高いが5年,6年にかけて低下していた。反対にA小の4年生の得点は高くはないが5年,6年にかけ得点が上昇していた。外発的動機ではB小は4年から6年にかけ得点が上昇し,反対にA小では4年から5・6年にかけ得点が低下していた(図4,5,6)。
5).全体的考察:「MSP」の効果はA小学校で顕著であると言える。「授+業」得点の上昇に伴い家庭学習方略と動機づけも高まっている。B小の4年時では授業,家庭学習方略,動機づけは高いが,「MSP」の取り組みと「学力向上対策」が逆に外発的動機を高める「アンダーマインニング効果」が生起したと考えられた。
学力向上への機運とともに学校教育での大学や地域との連携が重視されている。しばらく前「全国学力テスト」の結果が振るわなかった沖縄県でも同様の動きが活発になっている。琉球大学でも「MSP(学びと育ちのプロジェクト)」を立ち上げ,学力向上を中心とする子どもの育ちのための大学と小・中学校の連携が進み,「授業研究」や「家庭学習」「学習意欲の発達」を中心とする校内研修に取り組んでいる。本研究は筆者らが関わった3年間の「MSP」の取り組みの成果を児童の「授業での学び」「家庭学習方略」「学習動機づけ」の4年から6年にかけての追跡結果について報告するものである。
方 法
1.調査対象者:A校とB校の4年生男女123名に4年時,5年時6年時の12月から1月にかけて次の調査を反復,実施した。
2.調査尺度:①授業イメージ尺度(島袋ら,2008.授業での教授活動と学習行動認知に関す20項目)②家庭学習方略(自己調整的学習,作業方略,認知方略,柔軟的方略,計画方略(佐藤・新井,1998.30項目)③学習動機づけ尺度(速水,1996.20項目)。
結果と考察
1).尺度の因子分析:授業イメージ尺度,家庭でのメタ認知学習,家庭での学習行動,および動機づけ尺度の因子分析(主因子法斜交回転)を行いそれぞれ授業イメージでは「授+業因子」の因子,家庭での学習では「メタ認知的学習方略」と「学習行動方略」の因子が,動機づけ尺度では「同一化動機」「内発的動機」「外発的動機」の3因子が抽出された。
2).3年間の児童の授業での学びの変容:学校別に授業への参加度に関係する「授+業因子」の得点について学校,性,年度の3要因の分散分析を行った。その結果,性,年度,学校×年度の主効果が見られた。「授+業」得点は女児に高く,4年に比べて5年,6年は得点が低下していた。その傾向はA小とB小では違いが見られた。A小では4年から5年にかけ得点が低下するが6年では上昇していた。しかし4年時には得点の高かったB小では5,6年時は得点が低下していた。この結果から,A小では本企画による授業改善の効果の見られることが確認できた。A小,B小でも5年時で得点が低下したのは全国学力テストに向けての「プレッシャー」が強いものと予測される。
3).家庭学習方略の変容:授業での3年間の学びの変容は家庭学習や学習動機づけにどう影響しているだろうか。家庭での「学習行動」では性と年度と学校×年度の主効果が認められた。また「メタ認知的学習」でも年度と学校×年度の主効果が認められた。いずれの場合もB小の4年生の得点は高いが5年,6年にかけ低下していた。逆にA小の4年生の得点は高くはない,5年から6年にかけ得点が上昇していた(図2,3)。
4).学習動機の変容:「同一化動機」「内発的動機」「外発的動機」では性,年度,学校×年度の主効果が認められた。同一化動機,内発的動機ではB小の4年は得点が高いが5年,6年にかけて低下していた。反対にA小の4年生の得点は高くはないが5年,6年にかけ得点が上昇していた。外発的動機ではB小は4年から6年にかけ得点が上昇し,反対にA小では4年から5・6年にかけ得点が低下していた(図4,5,6)。
5).全体的考察:「MSP」の効果はA小学校で顕著であると言える。「授+業」得点の上昇に伴い家庭学習方略と動機づけも高まっている。B小の4年時では授業,家庭学習方略,動機づけは高いが,「MSP」の取り組みと「学力向上対策」が逆に外発的動機を高める「アンダーマインニング効果」が生起したと考えられた。