日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

2016年10月9日(日) 13:30 〜 15:30 展示場 (1階展示場)

[PE39] 必修型サービス・ラーニングにおける活動中の動機づけ変化の要因

佐野司 (筑波学院大学)

キーワード:サービス・ラーニング, 動機づけ

 日本の高等教育において,経験学習型アプローチによる教育方法の導入が増加している。そのひとつにサービス・ラーニング(以下SL)があり,その教育効果や学習成果の検討が進められている(木村・中原,2012)。一方でSLへの動機づけの研究は少ない。これは,国内の大学ではSLが単位化されず,学習が学生の自主性に委ねられたり,学習活動への動機づけの高い学生が選択科目として受講しているためと推察される。そこで本研究では,科目への動機づけの高さが多様である学生が「必修」としてSLを受講するとき,どのような事象や体験により動機づけを高めるのか,その構造を探ることを目的とした。
方   法
調査対象 筑波学院大学の必修型SL「実践科目A・B」を受講した大学生184名(実践科目A:88名;実践科目B:96名)。
調査時期 2015年11月中旬~12月上旬。
質問紙 SLの学習活動の受入団体を自由記述,受入団体から提示された活動や課題,その状況に関する質問12項目(北島(2011)による社会人基礎力の視点を参考),さらに予備調査結果に基づき作成された,社会参加の活動期間中に動機づけが変化した契機に関する質問48項目から構成された。各質問項目は,それぞれあてはまる程度について5段階で評定させた(なお,本稿では動機づけ変化の項目のみ分析を行った)。
結果と考察
 活動中の動機づけ変化に関する質問項目の分析は,フロア効果の現れた項目,項目の共通性の低い項目,因子負荷量が低い.40以下の項目を除外した35項目について主因子法,プロマックス回転を行い,8因子解の結果を採用した。8因子はそれぞれ「社会貢献動機」,「協働活動動機」,「指導者の援助動機」,「親和希求動機」,「経験獲得動機」,「目標達成動機」,「興味関心喚起動機」,「リーダー的役割の達成動機」と命名された(Table参照)。
 「社会貢献動機」因子では,活動団体スタッフからの感謝,スタッフとの協働により動機づけが高まる項目以外に,活動そのものの意義を感じることによる動機づけ変化を示す項目の負荷が高かった。団体での活動中に生じる親和動機だけでなく,学生自身によるSLのリフレクションが行われると,活動そのものへの動機づけが高まることが示唆された。「協働活動動機」「親和希求動機」の両因子は,協同学習場における社会的動機づけと構造が類似しているが,他の因子では個人の活動目標や関心に従った達成動機を示唆するもので構成されたと捉えられる。「指導者の援助動機」因子からは,指導者の言語的支援(励ましや助言)が動機づけに影響を与えることが推察される。因子構造の中で「リーダー的役割の達成動機」は独自性が高かったが,これはリーダー的役割を与えられる学生が限られるためであろう。
 今後は,活動団体が提示した活動や課題,および活動状況で求められる能力の違いと,活動中の動機づけの変化との関連について検討することが望まれる。