[PE44] 思考過程の共有による科学的思考力・判断力・表現力の育成
タイムラプスの有効性を探る
キーワード:思考過程の共有, タイムラプス, ICT
研究の目的
中学校理科において生徒の科学的な思考力・判断力・表現力の育成をすることが求められている。授業では,科学的な思考・判断が必要となる課題を設定し,考えは発表という形にして表現させながら,それらの力の育成を試みることが一般的と思われる。一方,そのスタイルでの授業実践においては,次の2つが課題として考えられる。
課題①結論にたどり着けた生徒:結論のみを発表したがる。そして,なぜそう考えたのか科学的な思考・判断をした理由を尋ねても結論のおうむ返しになることが多い。また,思考過程を忘れてしまっている場合も多い。
課題②結論にたどり着けなかった生徒:たどり着けた生徒も結論に至るまでには実は様々な試行錯誤があったはずであるが,その部分を見ることはできない。経験上,できた生徒は頭がいいからだと決めつけてしまっていることが多い。
課題①②ともに思考過程を「見える化」することが解決のポイントになると考えた。「見える化」することができれば課題①の生徒については,自分がどのように試行錯誤して結論辿り着いたのか客観的に見ることができるので,なぜと聞かれても結論のおうむ返しから抜け出すことができるのではないか。また,課題②の生徒については結論に辿り着いた生徒の試行錯誤の様子を目の当たりにできるので,諦めないで考えることの大切さを感じ取ることができのではないかと考えた。
研究の方法
①思考過程を「見える化」するためにICT(iPad)を利用
本研究では各クラス4人1組の班を8つ編成して教育実践を行った。各班の思考過程の様子はFig.1のようにiPadのカメラモードを用いて机の上のやり取りの様子を録画した。それを,再生することで思考過程を「見える化」することにした。ただし普通に録画すると再生に同じ時間だけかかってしまい,授業一コマの中に思考過程を振り返らせる時間を確保することが難しい。そこで,タイムラプス(一定間隔で連続撮影した静止画を組み合わせることで動画にしたもの)と呼ばれる録画方法を選んだ。これを用いれば,15分の活動の様子が30秒程度になる。タイムラプス最大の強みは,思考過程を大幅に時間短縮して振り返ることができることにある。
②思考過程を振り返えらせる方法
タイムラプスは静止画の組み合わせのため音声は記録されない。また,ベストのタイミングが間引かれてしまい写っていない可能性もある。この弱みを強みに変えるために,4人班を活用することにした。4人の記憶を頼りに,何度も再生させ,思考のブレイクスルーポイントを探し出させ,その時の言葉を思い出す方法をとった。「〇〇さんが□□といったので△△と考えた」など話し合いを深める言葉がなんだったのか振り返らせた。
結果と考察
単元終了時に,単元の学習内容のみ記述したものに科学的思考ができたと考えられる場面を思い出させ,記述させるアンケートを実施した。
その中では一部の生徒からFig.2のような記述も見られ,課題①のような生徒たちにとって,自分たちの思考過程を辿ることの有効性が示唆された。また,別のアンケートでは,班の思考過程をタイムラプスで見ることは学習を進める上で有効であったか尋ねた。肯定的に捉えている生徒の割合は72%であった。加えて,思考過程の共有は学習を進める上で有効であったかとの問いに肯定的に答えた生徒の割合は93%であった。このように班別の学習活動としては,大多数の生徒が思考過程を「見える化」することに価値を見いだしたことが分かった。今後は,班別の学習活動に加えて,個人の学習活動においても思考過程の共有化について,その有効性を検証することが重要であろう。
*本発表はJSPSKAKENHI 15H00046及び26350219の補助を受けて行ったものの一部である。
中学校理科において生徒の科学的な思考力・判断力・表現力の育成をすることが求められている。授業では,科学的な思考・判断が必要となる課題を設定し,考えは発表という形にして表現させながら,それらの力の育成を試みることが一般的と思われる。一方,そのスタイルでの授業実践においては,次の2つが課題として考えられる。
課題①結論にたどり着けた生徒:結論のみを発表したがる。そして,なぜそう考えたのか科学的な思考・判断をした理由を尋ねても結論のおうむ返しになることが多い。また,思考過程を忘れてしまっている場合も多い。
課題②結論にたどり着けなかった生徒:たどり着けた生徒も結論に至るまでには実は様々な試行錯誤があったはずであるが,その部分を見ることはできない。経験上,できた生徒は頭がいいからだと決めつけてしまっていることが多い。
課題①②ともに思考過程を「見える化」することが解決のポイントになると考えた。「見える化」することができれば課題①の生徒については,自分がどのように試行錯誤して結論辿り着いたのか客観的に見ることができるので,なぜと聞かれても結論のおうむ返しから抜け出すことができるのではないか。また,課題②の生徒については結論に辿り着いた生徒の試行錯誤の様子を目の当たりにできるので,諦めないで考えることの大切さを感じ取ることができのではないかと考えた。
研究の方法
①思考過程を「見える化」するためにICT(iPad)を利用
本研究では各クラス4人1組の班を8つ編成して教育実践を行った。各班の思考過程の様子はFig.1のようにiPadのカメラモードを用いて机の上のやり取りの様子を録画した。それを,再生することで思考過程を「見える化」することにした。ただし普通に録画すると再生に同じ時間だけかかってしまい,授業一コマの中に思考過程を振り返らせる時間を確保することが難しい。そこで,タイムラプス(一定間隔で連続撮影した静止画を組み合わせることで動画にしたもの)と呼ばれる録画方法を選んだ。これを用いれば,15分の活動の様子が30秒程度になる。タイムラプス最大の強みは,思考過程を大幅に時間短縮して振り返ることができることにある。
②思考過程を振り返えらせる方法
タイムラプスは静止画の組み合わせのため音声は記録されない。また,ベストのタイミングが間引かれてしまい写っていない可能性もある。この弱みを強みに変えるために,4人班を活用することにした。4人の記憶を頼りに,何度も再生させ,思考のブレイクスルーポイントを探し出させ,その時の言葉を思い出す方法をとった。「〇〇さんが□□といったので△△と考えた」など話し合いを深める言葉がなんだったのか振り返らせた。
結果と考察
単元終了時に,単元の学習内容のみ記述したものに科学的思考ができたと考えられる場面を思い出させ,記述させるアンケートを実施した。
その中では一部の生徒からFig.2のような記述も見られ,課題①のような生徒たちにとって,自分たちの思考過程を辿ることの有効性が示唆された。また,別のアンケートでは,班の思考過程をタイムラプスで見ることは学習を進める上で有効であったか尋ねた。肯定的に捉えている生徒の割合は72%であった。加えて,思考過程の共有は学習を進める上で有効であったかとの問いに肯定的に答えた生徒の割合は93%であった。このように班別の学習活動としては,大多数の生徒が思考過程を「見える化」することに価値を見いだしたことが分かった。今後は,班別の学習活動に加えて,個人の学習活動においても思考過程の共有化について,その有効性を検証することが重要であろう。
*本発表はJSPSKAKENHI 15H00046及び26350219の補助を受けて行ったものの一部である。