[PE49] ペット飼育経験が心理的耐性に与える影響
Keywords:ペット, 心理的耐性
問題と目的
学校不適応に陥る児童・生徒・学生の特徴として,対人関係能力の低さが頻繁に指摘されており,対人関係に必要なスキルを獲得するためには新しい経験に取り組み,試行錯誤する過程が重要である。しかし,その過程を回避したり,途中で挫折したりしてしまうとスキルは獲得されない。つまり,挫折に負けず成長や成熟につながる経験に取り組むための「心理的下地」としての「心理的耐性」が必須である。本研究では,心理的耐性を向上させる要因の一つとして,ペットの飼育経験について取り上げる。
方 法
調査対象者
調査会社のモニター登録大学生800名(男性400名,女性400名,平均年齢20.61歳)。
調査内容
1) 心理的耐性尺度(継続達成耐性「自分で立てた目標に向かって努力できる」他5項目,対人関係耐性「自分と考えが違う相手とでも仲良くできる」他5項目,規律遵守耐性「決められた締め切りは守る」他3項目,自己制御耐性「やるべきことをつい先延ばしにしてしまうR」他3項目)。
2) ペット飼育経験の有無(現在(249名),過去(310名),なし(241名))。
結果と考察
心理的耐性を従属変数に,性別・ペット飼育経験を独立変数とした2×3の分散分析を実施した結果,以下が示された。
対人関係耐性:ペット飼育経験の有意な主効果があり(F(2, 794)=3.697,p<.05,ηp2=.009),下位検定(Holm法)の結果,現在(M=3.54)=過去(M=3.53)>なし(M=3.38)となった。同様に性別の有意な主効果も確認され(F(1, 794)=17.362,p<.001,ηp2=.021),下位検定の結果,女性(M=3.59)>男性(M=3.37)となった。
継続達成耐性:性別の有意な主効果があり(F(1, 794)=4.429,p<.05,ηp2=.006),下位検定の結果,女性(M=3.47)>男性(M=3.35)となった。また,交互作用も確認され(F(2, 794)=3.285,p<.05,ηp2=.008),飼育経験なし群の単純主効果から(F(1, 794)=8.440,p<.01,ηp2=.034),飼育経験なし群で「女性」(M=3.53)が「男性」(M=3.25)よりも有意に継続達成耐性が高かった(p<.01,d=.379)。また男性の単純主効果から(F(2, 794)=3.049,p<.05,ηp2=.015),男性の「飼育経験過去群」(M=3.47)が「飼育経験なし群」(M=3.25)よりも有意に継続達成耐性が高かった(p<.05,d=.295)。
規律遵守耐性:性別の有意な主効果があり(F(1, 794)=11.019,p<.01,ηp2=.014),下位検定の結果,女性(M=3.74)>男性(M=3.54)となった。
さらに,調査協力者の経験による偏りを検討すべく,性別×ペット飼育経験のχ2分析を行った結果,有意な偏りが確認された(χ2=10.14,p<.01)。残差分析から,女性過去(172名)>男性過去(138名),男性なし(140名)>女性なし(101名)の結果が示された。
本研究の結果から,対人関係耐性において飼育経験による差異が見受けられ,全く経験のない人よりも現在或いは過去にペットを飼っていた経験のある人の方がより「他者への耐性」を育んでいた。継続達成耐性においては,ペット飼育経験のない人の中では女性の方が男性よりも,また男性の中では経験がある人の方がない人よりも「物語を続ける耐性」を保持していた。これらのことから,一般的に女性の方が男性よりも耐性が高いが,ペットの飼育経験があることでより一層の耐性育成につながることが示唆された。つまり,心理的耐性の低い男性でも,ペット飼育経験の有無が耐性向上へ寄与し,自分よりも小さく弱い対象への積極的な関わりが,待つ力や我慢する力(例:忍耐力)の育成に役立つと考えられる。
学校不適応に陥る児童・生徒・学生の特徴として,対人関係能力の低さが頻繁に指摘されており,対人関係に必要なスキルを獲得するためには新しい経験に取り組み,試行錯誤する過程が重要である。しかし,その過程を回避したり,途中で挫折したりしてしまうとスキルは獲得されない。つまり,挫折に負けず成長や成熟につながる経験に取り組むための「心理的下地」としての「心理的耐性」が必須である。本研究では,心理的耐性を向上させる要因の一つとして,ペットの飼育経験について取り上げる。
方 法
調査対象者
調査会社のモニター登録大学生800名(男性400名,女性400名,平均年齢20.61歳)。
調査内容
1) 心理的耐性尺度(継続達成耐性「自分で立てた目標に向かって努力できる」他5項目,対人関係耐性「自分と考えが違う相手とでも仲良くできる」他5項目,規律遵守耐性「決められた締め切りは守る」他3項目,自己制御耐性「やるべきことをつい先延ばしにしてしまうR」他3項目)。
2) ペット飼育経験の有無(現在(249名),過去(310名),なし(241名))。
結果と考察
心理的耐性を従属変数に,性別・ペット飼育経験を独立変数とした2×3の分散分析を実施した結果,以下が示された。
対人関係耐性:ペット飼育経験の有意な主効果があり(F(2, 794)=3.697,p<.05,ηp2=.009),下位検定(Holm法)の結果,現在(M=3.54)=過去(M=3.53)>なし(M=3.38)となった。同様に性別の有意な主効果も確認され(F(1, 794)=17.362,p<.001,ηp2=.021),下位検定の結果,女性(M=3.59)>男性(M=3.37)となった。
継続達成耐性:性別の有意な主効果があり(F(1, 794)=4.429,p<.05,ηp2=.006),下位検定の結果,女性(M=3.47)>男性(M=3.35)となった。また,交互作用も確認され(F(2, 794)=3.285,p<.05,ηp2=.008),飼育経験なし群の単純主効果から(F(1, 794)=8.440,p<.01,ηp2=.034),飼育経験なし群で「女性」(M=3.53)が「男性」(M=3.25)よりも有意に継続達成耐性が高かった(p<.01,d=.379)。また男性の単純主効果から(F(2, 794)=3.049,p<.05,ηp2=.015),男性の「飼育経験過去群」(M=3.47)が「飼育経験なし群」(M=3.25)よりも有意に継続達成耐性が高かった(p<.05,d=.295)。
規律遵守耐性:性別の有意な主効果があり(F(1, 794)=11.019,p<.01,ηp2=.014),下位検定の結果,女性(M=3.74)>男性(M=3.54)となった。
さらに,調査協力者の経験による偏りを検討すべく,性別×ペット飼育経験のχ2分析を行った結果,有意な偏りが確認された(χ2=10.14,p<.01)。残差分析から,女性過去(172名)>男性過去(138名),男性なし(140名)>女性なし(101名)の結果が示された。
本研究の結果から,対人関係耐性において飼育経験による差異が見受けられ,全く経験のない人よりも現在或いは過去にペットを飼っていた経験のある人の方がより「他者への耐性」を育んでいた。継続達成耐性においては,ペット飼育経験のない人の中では女性の方が男性よりも,また男性の中では経験がある人の方がない人よりも「物語を続ける耐性」を保持していた。これらのことから,一般的に女性の方が男性よりも耐性が高いが,ペットの飼育経験があることでより一層の耐性育成につながることが示唆された。つまり,心理的耐性の低い男性でも,ペット飼育経験の有無が耐性向上へ寄与し,自分よりも小さく弱い対象への積極的な関わりが,待つ力や我慢する力(例:忍耐力)の育成に役立つと考えられる。